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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

博士課程の経済的支援という私大の取り組みから見た大学院選び~「来れ博士課程 広がる経済支援 」(日本経済新聞より)を起点に~

理系 キャリア 博士 奨学金 学費 大学院 文系 進学 院生 進路 運営

0.はじめに~日経新聞の記事から~

Twitterで流れてきた日経新聞の記事です (無料会員登録すると全文読めます)↓

www.nikkei.com

 

紹介されているのは、東京理科大学同志社大学の私立大学の大学院の理系部局の博士課程。

東京理科大学は2016年度から博士課程の授業料や入学金を免除した。同志社大学なども同様の取り組みを進めめる。経済面の負担から進学を諦める優秀な人材を囲い込む狙いだ。研究力で社会に貢献して大学の知名度を高め、学部生を含めた入学志望者が増えるとの期待がある。

(来れ博士課程 広がる経済支援 東京理科大や同志社大が無償化 研究力を底上げ :日本経済新聞より引用)

とのこと。

 

今回は、この2つの私立大学の理系博士課程の取り組みを紹介し、他の私立大学の状況にもコメントしつつ、博士課程の大学院選びを考えてみたいと思います。

 

<今回の内容>

1.東京理科大学の取り組み

東京理科大の神楽坂キャンパス(東京・新宿)のほうでは、電子ビームの研究を進めるD1の稲垣さんを取り上げ、同大学が昨年度に導入した「無償化制度」の1期生。親への経済的な負担を考え、彼は修士課程までで大学院を修了し、就職を考えていた模様。しかし、「無償化制度」によって、それまでに東京理科大学の博士過程でかかっていた、

 ・初年度の入学金30万円

 ・毎年かかる施設整備費の18万円(私の換算で×3年=54万円)

 ・授業料の約80万円(私の換算で×3年=240万円)

合計324万円の経済的負担を稲垣さんは強いられることがなくなったことになります。

(ちなみに、授業料は給付の奨学金扱い。)

 

大学側は「財源は他の学生の授業料には頼らず、外部からの寄付金や政府の補助金などから充てる」と言っているそうです。おそらく、東京理科大学は寄付金や補助金などとい共に、堅実に投資で増やしているのかもしれません。学校法人ですから。

 

この無償化によって、「16年度の進学者は93人と、無償化前の15年度より22%増え」、2017年度、同大学は更なる博士課程への入学者を増やし、「森口泰孝副学長は「優れた研究者を確保して育てるためだ」と話す」と言われています。

 f:id:nakami_midsuki:20170119160311j:image

  

 

2.同志社大学の取り組み

こちらの大学では「好循環の兆しがみえる」とのこと。

(20)12年度から33歳以下の入学金や授業料を免除し、11年度に38人だった博士号の取得者が15年度には54人と4割増えた。「研究に専念できる環境をつくり、博士号取得者を増やす」(広報課)狙い通りだ。寄付金や政府の補助金、授業料など大学全体の限られた収入から、無償化の予算を捻出している。

(来れ博士課程 広がる経済支援 東京理科大や同志社大が無償化 研究力を底上げ :日本経済新聞より)

同志社大学のほうは、大学全体の収入から無償化の予算を出しているとのことで、西日本の大学最高峰と言われていることもあり、こちらも堅実な方法で予算を増やせるように努力していると思われます。

 

こちらの大学でインタビューを受けているのは、機械工学専攻の博士課程1年の中川正夫さん(26)。「金銭面の心配が無く、研究環境も刺激的で感謝したい」と話しているそうです。

 

 

3.東京理科大学同志社大学の理系博士課程の学資無償化まとめ

今回、取材された2つの私立大学の博士院生は、いずれも、機械工学など理系分野の大学院で、施設の維持費や実験の資材などに経済的な負担の大きい専攻のようです。ちなみに医学部や薬学部なども学費が多い傾向にあると言われています(薬学部卒の親戚の人たちより、聞いたお話)。

施設や実験資材に対して、文系よりもこうした理系の実験系はお金がかかるので、その分、学費も多いと考えられます。そうした費用を無償化するということは、財政面でその法人が堅実に運営できる金銭的な余裕と体力がなければ、無理だと私は考えています。

 

 

4.文系博士課程の学費はどのくらいかかっているの?

日経新聞では理系博士課程の実験系の分野が取材されていました。それに対して、文系博士(後期)課程について、話を移してみましょう。文系を代表する分野として、今回は大学院の文学研究科博士課程の私立大学の費用を調べ、まとめられた私のTwitterフォロワーのなださんの次の記事を、勝手に紹介させて頂きます(申し訳ございません、

なださん…)。

 

knada.hatenablog.com

 

なださんの上のリンク記事の「博士後期課程3年間の授業料・入学金等の合計比較」によると、まず早慶

 ・早稲田大学……入学金約20万円を含む授業料等が合計200万強円

 ・慶應義塾大学入学金0円を含む授業料等は合計約210万円

です。次に関関同立で、先の同志社から、

 ・同志社大学……入学金約21万円を含む授業料等は合計約240万円

 ・関西大学………入学金約18万円を含む授業料等は合計約240万円

 ・関西学院大学入学金約24万円を含む授業料等は合計約230万円

 ・立命館大学……入学金約28万円を含む授業料等は合計約180万円

となっています。なださんが指摘するとおり、合計金額で行くと、この5つの私立大学では、圧倒的に立命館大学の文学部博士(後期)課程が安い(正確には183万円の学費)という指摘をされています。ちなみに、国立大学は、

 ・国立大学……入学金約27万円を含む授業料等は合計約190万円

と出されていますので、立命館大学の学費合計は、これまた、なださんがご指摘のように、国立大学よりも安いわけです。

 

ところで、先日、私がしました下のツイートについて補足をします。 

 (一部、誤字・脱字を修正いたしました)

 

このアカウント開設上、割とRTされているツイートで恐縮です。が、実はこの私立大学とは立命館大学のことです。この大学の文系大学院の研究科の某先生に、修論執筆中の学会の懇親会で「うちの博士課程、教職員の給与を50万円もカットしてまで、学生の授業料を下げて、支援を手厚くしているんだよ。どう?研究者目指すなら、うちに来ない?」というお酒の入ったノリで、お誘いを受けた時のお話がもとになっています(*なお、文学研究科の先生ではありません)。

 
この立命館大学の文系大学院では、上にリンクしました、なださんの次の記事↓

 立命館大学大学院博士後期課程の学費は国立大学よりも安い。さらに…… - 離婚直後の40歳、大学院進学と博士を目指す。

の冒頭に挙がっている2冊の本↓

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

 

 

「戦跡」の戦後史――せめぎあう遺構とモニュメント (岩波現代全書)
 

は、なださんの書評を拝読した限り、 東アジアの民衆の生活文化史を専攻していた私としても、非常に興味をそそられる研究成果だと思われます。これらの本の著者は、どちらも立命館大学で教鞭をとられています。

 

若手研究者としては、下のジョルュ・バタイユ入門講座のナビゲーター・横田祐美子氏が、立命館大学大学院文学研究科の文学研究科(哲学専修)博士後期課程(現在はストラスブール大学哲学科に留学中の模様)*1が、おられます。文化人類学的にも、私が学部のころから興味を持っている思想家であり、非常に惹かれる講座です。

www.gaccoh.jp

 

「教員の給与を年間50万円カットして、それを博士課程の学生の支援に充てている」ことの真偽はともかく、なださんの学費調査と所属研究者の研究成果や活動を見ている限り、立命館大学の文系大学院の博士課程後期では、ユニークで分野的には意義のありそうな研究がなされ、若手も育っていると見てもよいのではないでしょうか?

 

先に日経新聞の記事で見た理系の実験系に比較して、失礼で申し上げますが、実学的でないと言われることもある文系分野において、立命館大学が博士課程の学生に学資的な負担を軽くしている。そういう事実は、立命館大学がこうした分野にも価値を認め、お金を回して支援できるほどの経営体力があると見ていいのではないでしょうか。

 

 

5.全体のまとめ

 今週初め、下のような記事がネット上にアップされました。国立大学は国からの資金が減少傾向で、自ら教員が寄付金を募ったり、民間と共同研究で資金を獲得したり、自活していく上で危機的な状態にあると、私は認識しています。

forbesjapan.com

 

その一方で、私立大学のトップのほうは、博士院生の経済的負担を下げられるほど、経営的な余裕があると思われるところもあり、これからは研究の質が高くなっていく私立大学も増えていくかもしれません。

まぁ、一部の私立大学では文科省官僚の天下り先として、昨日あたりから大変なところもあるようですが…。

文科省、幹部ら7人処分へ=監視委20日調査公表-次官は辞意・天下りあっせん問題:時事ドットコム

 

もし、これから博士課程の志望者の方がおられたら、行われている研究の次点として、指導教員の人間性、および大学に不正や汚職がないか、といった面に加えて、これからは研究費の面で、どこの大学がよいか、という判断がよりいっそう重要になってくるでしょう。経済的に厳しくなってきている国立よりも、経済的に博士院生の支援に厚い私立のほうを選ぶ人も、今まで以上に増えていくかもしれません。

 

そういうわけで、大学の博士院生の経済的負担軽減を支援する立場から、そこの経営的体力を見極めるということが、一つの大学院選びのポイントになっていきそうです。

 

 

( ↓これの大学院図鑑で、大学院生の学資負担軽減と研究費用の獲得のランキングが

 あれば、見てみたいです。)

 

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