仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【 #ツイキャス 講談録】『村田エフェンディ滞土録』とその周辺の話:好きな理由と更に近代史の視点から語る編

<今回の目次>

6.前回までの振り返り

 久々に、自分の研究分野のテーマ記事を書きたいと思い、録画ラジオ『村田エフェンディ滞土録』とその周辺の話 - TwitCastingの書き起こしをしました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

前回は、『村田エフェンディ滞土録』の作品概要と、実在かつ印象的なキャラクター、作品の時代背景など、大雑把なところについて、語りました。ちなみに紹介しのは、こんな本です。文庫版↓

 

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫) 

続編にあたる本記事では、本書を好きな理由や、近代史の視点から掘り下げて語ったり、更に続編についても前回より詳しく語っております。それでは、どうぞ!

 

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 (以下、2017.6.19の録画ラジオの書き起こし)===================

 

 

7.私が『村田エフェンディ滞在土録』を気に入った理由

私が通してこのシリーズの、いっと最初の『村田エフェンディ滞在土録』が、自分の人生のトップ3に入るぐらい、何ゆえ好きかと言うとですね。

 

まず、高校生の時に選んで出会った。出会いが早いっていうのが、一つあります。続いて、『村田エフェンディ滞在土録』が好きな理由は、(朗読で)読んでるのは文庫のバージョンなんですけど、(最初に)単行本で出た時のなんて言ったら良いかな。ちょっとね、表紙の装丁がエンボス加工(というかザラザラした紙質の加工)になってて、綺麗でして、手触りが良くて、そこに鉛筆で描いたような、多分トルコのイスタンブールの街並みが描いてあって、それが非常に綺麗だったんですね。ロバを引こうじいさんが通りを行くような感じの絵が描かれていまして、それが表紙になってたんですよ。それに惹かれて、ずっと読んでてです:

 

村田エフェンディ滞土録 

あとは、ちょっとネタバレなるから簡単には言えないんですけど、最後、第一次世界大戦が起こって、みんなが引き裂かれていた後には、結末に村田さんは泣いたんですけど、村田さんと一緒に私も泣いちゃいました。



8.作中の著者が描いた「近代トルコ」と戦争

やっぱり、近代史の中で、トルコは西洋と接しているアジアであり、小アジア半島っていう場所にあるんです。その小アジア半島を見ていて、(トルコは)一次世界大戦とがっぷり組み合うと。日本は日英同盟があるから、第一次世界大戦に参戦してきて、地中海の方まで艦隊出してきて、また戦うと言うよりかは、ちょっと日本はちょっかい出すぐらいなんですけど。

 

そういった、「歴史の中で留学してた人は、同時どうだったのかな?」とか、梨木香歩先生は、ちゃんとそのあたりをね、ちゃんと取材されたんでしょうね。その国のやり取りだとか、どう戦ったとか、兵隊として、どういう風にどんな人がいたんだとか。終盤の方で、どうやら(トルコ共和国の)初代大統領になるんじゃないかな、または、その側近になるんじゃないかなっていう人たちが、けっこう出てきます。

 

下宿にいたムハンマドも、志願して出て行くことになるんですね。けっこう、(下宿に暮らす仲間たちが)敵味方に分かれたり、戦争が始まる直前に遺跡を戦争で荒らされないためにオットーも志願して。別の遺跡のことを知って、介入に入ったりして、そこで(下宿の学者)仲間のディミィトリスが暴動に巻き込まれたりとかっていう出来事が、ちょこちょこと描写として入ってきて(います)。その様子に、ものすごく心を締め付けられるんです。何回でも、やっぱり泣きそうになったり、「歴史学ぶ事って何だろう」、「遺跡の保存って何だろう」って言う風に、考えさせられることがいくつもあって(考えさせられました)。

 

でも、そこには、やっぱり人の営みがあるわけで、戦争っていうのは、人がいる限りなくならないんだろうかと。今もちょっと中東情勢のほう、色々と荒れてます。シリアの方とか、ISISもあんまり、数年前よりかは報道がされなくなってきているように感じますけどね。それでも、やっぱり戦ってますし、あの辺り。で、そう思うと、アジアだけじゃないですからね。世界的に、そういうので絶えないし、争いというものは、戦争まで行かないレベルのちょっと衝突といいますかね。情勢を見てると減らないし、っていうのは、ちょっと噛み締めながら、意識しながら。私はちょっとずつ、読んでました。



9.遺跡の出土遺物の保存問題とそのあたりの話

あと、遺跡に対する掘った時、(出てきた)遺物は一体どこの国のもの?どこの調査団の物?っていう、これまた、ちょっと考古学をやってるとか、歴史学を勉強してる人、研究する人からしたら、頭の痛い問題が出てきてるんですよね。もう、あの調査団がどこに入ってきて、イギリスとか、ドイツとか。

 

慌てて、その地元のトルコの富豪の人とかがお金出したりして、(そこに引き)取ります。そこで出てきたものをちょっと保存する目的で、の博物館を作ろうと言う事です。外国人で日本から派遣されてきた、村田さんも資料館の研究員として、お引っ越しの作業とかするんだけど、「トルコ人の公務員の人はチャキチャキ、動いてくれない。ちょっと困ったなあ。僕が頑張るしかないかな」みたいな話が出てきました。



10.トルコの歴史の階層から見る本作の醍醐味

何が妙なのかって言うと、トルコって小アジア半島にありますよね。小アジアって、地中海と黒海に突き出す様な形で、ギリシャと繋がってるじゃないですか。ギリシャバルカン半島ね。だから、「歴史の交差点」ということで、ヨーロッパの勢力が出てきたり、(例えば)ビザンチン帝国あったじゃないですか。古代ローマ帝国は、ブツンて東西に分かれてれてから、その東ローマ帝国ビザンチン帝国とかね。そこに、また東の方から、突厥とか、トルコの勢力がやってきます。(トルコ勢力が)イスラム化してから、セルジューク朝が来て、オスマン朝が来てって言う風に、何回も何回も(違う勢力が小アジア半島へ)行ってきてって、1450年代だったかな?その時に。(ビザンチン帝国の首都の)コンスタンティノープルが陥落して、小アジア半島は、大体がオスマン帝国の配下に入るんです。

 

だから、歴史が何十層にもなってて、あの幽霊だか、亡霊だから、ちょっと形がボワッと浮き上がってくる衛兵みたいな人が下宿にも出てくるし、歴史が何か階層みたいに積み上がって、出てくるって言うのも、魅力の一つで、それもまたエキゾチックで非常に面白いんですよね。異国の神様とかもいっぱい出てくるんですけど、その一方でね、のどかな場面があったりして。

 

御用使いみたいなおじいさんが、下宿にやってくるんですけど、そのロバが下宿の石灰石の成分の壁が非常に好きで。そこを舐め続けてきて、壁がだんだん薄くなってきているところに、あの高校生の時、当時読んでた私も笑ってしまいました。それを見かけたドイツ人のオットーが「あんまり壁舐めすぎてると、腹壊すぞ」、「体に良くないぞ」って、ロバに対して言ってる場面が、まったりしてね。色々と、そういう形でお笑いの面でも歴史返すお金ちょっと小アジア半島の重なってるという意味でも、歴史勉強した人は多分面白いでしょう。

 

あと、何が面白いかな。うん、『村田エフェンディタイトルく』から学べる事って、世界史を勉強した人からしたら、色々なちょっと思い入れがある作品の一つじゃないかなって。思いました。



11.本作シリーズと梨木果歩の伝奇もの作品

作者の梨木香歩さんは、色々な作品を書いてる方です。ファンタジー作品を書いていることが多かったんですよ。だから、『村田エフェンディ滞土録』にも、山田氏にモデルがいる様に、歴史に取材はしてるんですけど、その中でもビザンチン時代の衛兵が出てきたりとか、これからも色々と神様っていうか、精霊って言ったら良いのか、うまく言えないですけど、存在がいっぱい出てきます。そのへんが、単なる歴史ものではなくって、現実を元にし、歴史の出来事・事実を下敷きにした伝奇ものの作品だなっていうとことに思えて、面白いなと思いました。その味がね、結構そのファンタジー、伝奇ものとしての味が強く、色が濃いのが、続編にあたる同時代の日本側のから見た同じ著者の『家守綺譚』のシリーズがあります。

 

新潮文庫から出てるんですけど、『家守綺譚』のほう、もう一回、見ときましょうか。

 

『家守綺譚』シリーズも、ある意味続編と言うか、本書の裏っ側とみても良い作品と思います。

 

家守綺譚 (新潮文庫)

 こっちの家守綺譚の方はですね、

 

庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。

(https://www.amazon.co.jp/dp/4101253374/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_9X8Uzb1HA09Z6

って書いてあります。

 

amazon の『家守綺譚』の文庫版の説明を読みました。鬼とか、竹の精霊さんが出てくるとか、人魚とか 河童 とかが出てきて。こういうのは、だから、和製ファンタジーって言ったら変ですけど、近代の中でも、ちょっと不思議な家が出てくると。出てきて、その中で「(当時の世界の)情勢はどうなってたのかな」っていう風に、ちょっと気になる人は、『村田エフェンディ滞土録』と合わせて読んでみると面白いんじゃないかな、と思います。

 

これ、続編も出てまして、文庫化されてますね。『冬虫夏草』っていうお話も出てます。

 

冬虫夏草 (新潮文庫

冬虫夏草の方がちょっとシリーズとしては詳しく話が出てて、

 

亡き友の家を守る物書き、綿貫征四郎。姿を消した忠犬ゴローを探すため、鈴鹿の山中へ旅に出た彼は、道道で印象深い邂逅を経験する。河童の少年。秋の花実。異郷から来た老女。天狗。お産で命を落とした若妻。荘厳な滝。赤竜の化身。宿を営むイワナの夫婦。人間と精たちとがともに暮らす清澄な山で、果たして再びゴローに会えるのか。『家守綺譚』の主人公による、ささやかで豊饒な冒険譚。

(https://www.amazon.co.jp/dp/4101253439/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_4a9UzbSY1D8DK)

 

ということです。家の中にずっと留まっていた、家の守をしてた綿貫さんには、あのゴローていう忠犬がいたんですよ。その時に身近にいたあのゴロ―、(『家守奇譚』の時に)家に付いてきちゃったんです。けど、その後、ゴローがいなくなっちゃったから、それを探しに山の中で、(綿貫さんが)旅に出た後の大冒険だとのことで、『冬虫夏草』っていう続編が出てます。

 

という形で、ちょっと『村田エフェンディ滞在土録』の朗読から、ちょっと発展した形で、ずっと喋ってみました。ラジオの枠として、一つちょっと喋ってみましたね。好きなように。



12.仲見のトルコに対するイメージ~終わりに~

『村田エフェンディ滞土録』とその周辺のお話を、ちょっとさせて頂きました。皆さんご清聴有難うございました。

 

ちょっとね、あと2分弱ぐらい残ってるんですけど。

 

私は、普段、専門は中国のことをやってまして、生活文化とか、近代でどういうことが起こったのかっていうことにも、すごく興味が(あります)。アジアの近代ですね。

 

やっぱり、私は日本で生まれ育った日本人なんですけど、やっぱり(歴史の長いという意味で)中国の方が大国だなって思ってて。中国に対して西の大国は、歴史ある国の中で「どこなんだろう?」って思った時に、やっぱり、トルコが西の大国だったんじゃないかなって思って(います)。中国とトルコの料理は、フランスと並んで、「世界三大料理」って言われてるぐらいですから。

 

だから、近代を舞台にしたという小説作品として、この『村田エフェンディ滞土録』を、トルコが舞台の話ということで、朗読をちょっとさせて頂きました。

 

これより、ちょっと前の方の同じ時代か、ちょっと新しい時代の、文学革命を中国で起こそうとして、いまや東アジアの国で呼ばれてるあの魯迅ですね。

 

日本だと、中学生の国語の教科書に「故郷」って言う作品翻訳されていた竹内好さんの日本語訳版ですね。(中学生の国語の教科書に作品が)入ってて、長く親しまれて読まれている作品はあるんですけど、それの「故郷」と、いくつかの魯迅の作品も、(ツイキャスの朗読の)ライブ履歴に録画として入れてますので、またお読みいただけたら良いなという風に思っております:

naka3-3dsuki.hatenablog.com 

 

というわけで、西のアジアの大国だなと思って、トルコの近代に留学した日本の研究者の村田君こと、村田エフェンディの滞土録の小説に関するこぼれ話。と言うか、私の好きな理由について、お話を長々とですが、30分ほどさせて戴きました。ここまでお聞き下さり、ありがとうございました。

 

おしまい。

 

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