仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

美術館裏側の日常、見せます~映画『パリ #ルーブル美術館 の秘密』の感想とミュージアムのドキュメンタリー映画の紹介~

<職員たちが主役の「お仕事」ジャンルの映画>

1.はじめに

体育の日を過ぎて、急に気温が下がり 秋めいてきたな、と感じています。皆様いかがお過ごしでしょうか。秋といえば、よく「〇〇の秋」といわれます。私は現在、買って増やしてしまった本を積ん読の状態にしてしまっているのと、資格の勉強で本をたくさん読む必要が出てきました。なので、この秋は、読書の秋として過ごすことになるでしょう。

 

本を読む以外では、ずっと見たいなと思っていた美術館に関するドキュメンタリー映画のDVD を一本見ました。それが今回取り上げる映画『パリ・ルーブル美術館の秘密』です。私が持っているのは、こちらのバージョンです。

 

DVD パッケージの解説によると「所蔵美術品35万点、階段の段数1万500段、総部屋数2800室、職員1200人」の規模を誇る、パリのルーブル美術館。その展示室だけでなく、学芸員の執務室や、所蔵品の管理保存や修復を行うため、地下の迷路を進んだ先にあるメンテナンスのための施設、スタッフたちに食事を提供する厨房、火事の時のための消火器の使い方や、救急救命士の人工呼吸の訓練など。「世界最大の美術館に命を吹き込む職員たちの素朴でユーモラスな日常の物語」を描き出した作品です。

 

ちなみに、2008年の別バージョンでDVDが出ている模様↓

 

さっそく、作品の批評をしていきたいと思います。

 

 

2.美術館裏側の日常、見せます~映画『パリ・ルーブル美術館の秘密』の感想~

 2-1.作品の概要~主人公は職員たち~

映像はザラザラとした感じで、古さを見る人に感じさせますが、この映画が公開されたのは1990年。今から30年近く前のこと。映画の冒頭から私は「デジタルリマスター版が出たら、改めて見てみたいなあ」と心の中で呟いていました。

 

映画の冒頭は、暗がりの中で、館内に重機材を使って電気工事のよう作業を行う職員の人たちが映されています。そのうち映画のタイトルが出てきた後、ルーブル美術館の様々な場所でスタッフたちが仕事をする様子を、背後から撮影した画面に切り替わっていきます。

 

ナレーターはいません。登場する学芸員や収蔵品を運ぶ人、指示を元に作品を展示する壁に高さの印をつけながらかけるスタッフ、。絵筆とパレットを手に作品を修復する職人たちが、次々と登場してきては作業しつつ、あれやこれやと仲間達と言葉を交わす様子が、淡々と映し出されていました。作品のパンフレットによると、美術館のスタッフたちはセリフ台本セリフのようなものがなく、脚本は用意されていないということでした。

 

監督がインタビューに答えたところでは、(この映画にはコメントが全くないのは)

専門的見解に背を向ける映画だから。僕は、学者が芸術について話すのを聞かせるためとか観客を啓蒙するためにこの映画を作ったんじゃない。僕の作品では、まず、まるでフィクションみたいに話をしてもらうよう話を持っていくのです。僕は専門家じゃないし美術史の大家でもない。それだからこそまったく無邪気に撮影できたし、楽しげでちょっと皮肉っぽい調子を付け加えられたのです。

 (映画パンフレット『パリ・ルーヴル美術館の秘密』より)

ということでした。

 

そういうわけで、繰り返しになりますが、この映画の主人公美術館で働くスタッフたちです。映し出される映像は淡々としているものの、ミュージアムで仕事をしたことのない人にとっては、普段は知ることのできない裏側を見ることができて、それだけで楽しめる作りになっているでしょう。

 

学芸員資格を持っている私は、ミュージアムに関する授業の一環で、複数の博物館や美術館見学をしたことがあります。特別展覧会のために借りてきた作品の搬入口、作品を保存するために温度や湿度が人工的に保たれた収蔵庫にも入った経験をしたこともありました。

 

しかし、映画の中に出てくるような、100年以上前に描かれ、一辺が十数メートルもあるような絵画が、木の支柱に巻きつけられた状態で包装紙に包まれ、修復・展示のためのホールに運び込まれるような様子は、見たことがありませんでした。この巨大な絵は、木の支柱を使って、10人以上が力を合わせてひっくり返し、表裏それぞれのカビのつき具合や、画材の保存状態が確認され、額縁に入れらます。壁に立てかける際は、人力式のクレーンで持ち上げながら、絵の底辺の部分に入れた複数の台車で下から支え、展示に適した位置に固定しているようです。大きくて重く、飾ることには体力とともに、息の合ったチームワークでの作業がミュージアムには必要なことがある、ということを具体的な形で見ることができて面白かったです。

 

ここまでで、ミュージアムでの勤務は、知識とともに、意外と体力が必要だと判明しました。体力をつけるには、体を鍛えるトレーニングの施設がスタッフ向けに設置されていると便利です。実際に、作中でスタッフがトレーニングルームに入っていき、器具を使って、腕や足の筋肉を鍛えるような場面があります。

 

仕事をすると、カロリーを消費するということで、ルーブル美術館では職員向けの食堂があるようです。短い時間ですが、シェフたちが厨房でコンロにかけた鍋の中を混ぜながら、食事の準備をしている姿が映し出される場面もありました。また、働く時間があれば、休む時間もある。複数のボールを手に、休憩時間になって、外で遊びに興じる男性職員たちの楽しそうな様子には、作品を観る方も一息つくことができるのではないでしょうか。

 

 2-2.ルーヴルの建物の仕掛けと歴史の話

再び、仕事の方面に話を戻しましょう。ルーブル美術館のあちこちには、隠し扉・隠し階段が存在します。展示室の壁の一部が隠し扉になっていて、そこから地下通路に伸びる階段を降りると、十数キロメートルにも及ぶ迷路が出現します。通い慣れた職員は、入り組んだ通路を迷わずに抜けて、奥の作業室で待つ別の職員に美術品を届けます。

 

ある展示室では、壁にあるボタンを押すと床の部分が下がっていって、床下の収蔵庫に入ることができる仕掛けがあります。

 

こうした仕掛けのある背景には、もともと、このミュージアムがフランス王の城や宮殿とし建設されたことが関係していると思われます。少し、ルーブルの歴史をお話しさせてください。

 

16世紀から17世紀にかけて、フランスは宗教改革や王位の継承問題が絡み、結構、血なまぐさいことが起こっていたようです。そういったことが背景にあって、何かあれば、貴族は身を隠したり、すぐ逃げたりできるような仕掛けが必要で、それらがルーブルに作られたのではないでしょうか。

 

17世紀後半に、ルイ14世が権力の中心をベルサイユの方に移したため、ルーブルは放置されて荒廃しました。一説には18世紀末、フランス革命の頃までの100年間、ホームレス家芸術家たちがルーブルに住み着いていたそうです。1793年頃、フランスの「国民公会ルーブルを民衆の美術館とし、一般公開を決定」しました。続くナポレオン戦争の時期には、多くの美術品がヨーロッパの各地からここにたどり着き、1800年ルーブルは美術館として装いも新たに開館しすることになります。

 

以上、この映画作品のパンフレットの年表を中心に、高校の世界史 B の知識も交えながら、ルーブルの歴史を少しお話しさせていただきました。

 

 

3.むすび

美術館の職員には、ヨーロッパ系の他に、アフリカの黒人系、一部はアジア系のような顔立ちの人たちも見られました。職場に新しい制服が届けられた時の様子では、ルーブル美術館のスタッフは、いろんな地域にルーツを持つ人々がいて、それがミュージアムとしての強みになっているのではないかな、と私は考えています。

 

ところで、ルーヴル美術館といえば、私には日本に1~2年に一度は特別展が全国のどこかで開かれているイメージがあります。やって来るたびに、テーマが変わっていることもあるようで、「所蔵美術品35万点」もあれば切り口を変えて、いろんな見せ方はある美術館でしょう。

 

ちょうど今年の秋から、大阪市立美術館でやっている特別展はこちら:

ルーヴル美術館展 肖像芸術 一 人は人をどう表現してきたか │ 大阪市立美術館

たまたま、私が利いていた時、夕方のラジオ番組で、大阪市立美術館の職員さんが出演して、実際に展示している作品を解説しながら、副題の「人は人をどう表現してきたか」を具体的に言っておられていました。「人間ってオモシロイ」と捉え、一貫したテーマで研究をしてきた者としては、お金と時間がとれれば、行ってみたい!

今夏にFGOで実装され、話題になった『消えぬ炎の快男児』ことナポレオン1世の砲増がも来日しているようです。気になる方は、ぜひ、見に行ってみてください。

(開催地での宣伝の仕方についは、賛否両論だったようです*1が、私は嫌いじゃない感じです…)

 

ヨーロッパ絵画の「怖い絵」解説で著名な、中野京子さんによるガイドブックも出ているようです。この映画を見たり、ルーヴル美術館展を見たりすり時、お共に持ちたい一冊です。

 

 

今回の映画批評は、ここで一旦、おしまいです。

 

 

4. 補足:美術館を舞台にしたドキュメンタリー映画の紹介

このブログの執筆管理人は、美術館を紹介するノンフィクション番組や、映像ドキュメンタリーが好きで、けっこう、見てきました。映画も例外ではなく、昨年はメトロポリタン美術館の服飾部門の祭典「メットガラ」を追った作品をレビューしています:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

メットガラが、メトロポリタン美術館、それから、どのようにファッション業界と繋がっているのかは、上記の各記事に説明を譲ります。そうそう、この祭典は今年の上半期、日本で公開された映画『オーシャンズ8』が舞台になっていたことでも、話題になりましたね。映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』の招待客で、華やかだったリアーナが、『オーシャンズ8』ではハッカー役で出演しているとか。11月下旬に円盤が発売です。

 

オーシャンズ8 ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ポストカード付) [Blu-ray

 

さて、映画で見た昨年のメトロポリタン美術館、 今回のルーヴル美術館ときて、「世界三大美術館」のひとつであり、その最古のところは、エルミタージュ美術館です。このロシアの美術館については、昨年に日本で順次公開されていた次のドキュメンタリー映画があります。

 

 

昨年、メモを取りながら、私も劇場で見ました。視聴だけだと、世界三大美術館のドキュメンタリー映画を制覇したことになります。しかし、『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』については、メモを整理しきれていなくて、記事にするのが先になりそうな感じ。ロマノフ王朝に始まり、ソ連共産党政府の時代を経て、現在までの歴史を中心に、エルミタージュ美術館の収蔵品や取り組み、そこに勤務する職員たちの奮闘を伝えた映画で、壮大なスケールの内容でした。と簡単に紹介だけ、させて頂きます。

 

どの映画もエンターテインメント作品として楽しめる展開になっています。よろしければ、「芸術の秋」にご視聴ください。

 

おしまい。

 

 

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