仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系のなかみ博士が研究業界の問題などを幅広く考えるブログ

映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』を見る~イタリア発!塩っぱく苦い研究者の犯罪コメディ:その2~

<1つの映画として見たレビューです>

5.前回までの話

本記事に入れた映画は、不景気で予算が打ち切られ、失業後は不安定な職の学者たちがギャング団を結成。各々の専門を生かしたドラッグ取引を発端に、警察に協力して犯罪の摘発に協力したり、敵対組織の陰謀に立ち向かったりする、イタリア発のアカデミック犯罪コメディ・シリーズの第2作です。前回のその1では、作品のシリーズやストーリーといっった概要、研究者目線での感想や見どころを紹介しました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

今回は、シビリア監督が拘った演出や、作品内に描かれた(これはこれで風刺たっぷりな)現代社会について、少し、考えてみたいと思います。

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(画像:入場特典のステッカー、英語訳の映画タイトル入り) 

 

 

6.一般の観客として見た本作の感想や気になるところ

古代ローマの遺跡エリアで展開されるカーチェイスを含めて、演出面では、ハリウッドっぽい派手さがあって、アカデミックな世界に馴染みのない観客も、楽しめるようになっています。序盤の捜査準備で、ルーチョのいた工学部から武器や自動車の装備を調達後、メンバーが構内を歩きながら、画面に次々と加わり、それっぽい音楽が流れてきて来るのは、アメコミのヒーロー映画のようで、どことなく、私はかっこよくも、コミカルな印象を受けました。パンフレットによると、監督は米国のマーベル映画を意識しているらしく、ここらへんは、映画『アベンジャーズ』シリーズのファンの方に意見を聞きていみたいです。

 

実写だけでなく、途中、アニメ―ション・パートもございます。ドラッグ中毒で、服役中にリハビリ施設にいたアルベルトは、禁断症状に耐えきれず、押収したドラッグを飲み込んでしまいます。彼がトリップした先の世界の描写は、実写部分のテンポのまま、ペイントタッチのアニメに画面に変わっていきます。大学教授時代の不遇からズィンニに誘われて仲間となり、アルベルトがドラッグに手を出し、更に冒頭の交通事故で、すれ違った車が載せていた機材に気がつく経緯が、ビビットで、サイケデリックな画面で展開します。このシーンは終盤にだいぶ近く、監督のこだわりに脱帽しました。いやはや、お腹いっぱいの大満足ですね。 

 

 

7.「研究員ギャング団」の関係者で気になること

そのほか、「10人の怒れる教授たち」の関係者について、気になることを数点、書きます。主に、イタリアの婚姻制度や、犯罪報道のあり方のことについて、少し、お話をさせてください。

 

リーダーのズィンニには、パートナーのジュリアとう女性がいます。パンフレットによると、民生委員をしており、ズィンニの子を妊娠中の恋人ということです。前作を見ていないこともあって、ズィンニとの法的な関係は、いまいち不明ですが、一応、刑務所の面会に、ジュリアは来ていました。2人は、

  • 法的な結婚関係にある、または、あったのか?
  • 婚姻と同等のパートナーシップ制度のような法的関係なのか?
  • 妊娠中の子をズィンニは認知している、内縁的な関係なのか?

などなど、そのあたり、イタリアの法的制度が私は気になっています。「イタリア男は女性にはナンパしないと失礼」というのが私のイメージで、そういった雰囲気は、コレッティと一緒にいるズィンニに対し、仲間が「デキてるの?」とツッコミが序盤で複数入ったところに、感じました。

 

仲間のまとめ役であり、組織に研究者を勧誘するズィンニは、口が回ります。しかし、ジュリアには、これまでの経緯や、期待させるために言った傍から嘘になっていくことが加わって、別れる・別れないの瀬戸際の関係のようでした。そのうち、ジュリアに近づく男性医師の存在が出てきて、ズィンニは焦ります。しかも医師は「国境なき医師団」に所属し、名誉博士号を受けることになり、ジュリアは授与式に同行することのこと。仕事の有無や社会的地位において、ズィンニは男性医師と対比され、日頃の行いもあったのでしょうが、ちょっと、リーダーをかわいそうに感じました。

 

今作の引っぱり役・コレッティ警部については、ギャング団の再結成を促し、非公式の取引を持ちかける計画性と、それをブログで明らかにすると女性記者に言われたのに気にしなさすぎな部分は、アンバランスでした。忠告した警部の上司や、部局も脇が甘いといえばそうですが、服役者との取引をフリージャーナリストに調査され、個人ブログにすっぱ抜かれてしまう展開は、ソーシャルメディアの発達した現在らしく、そこにもリアリティを感じました。新聞社やテレビ局といった、日本でいうところのマスコミではなく、個人運営の発信媒体で、ギャング団と警察の取引が暴かれた形は、昨今の報道のあり方の一部が、そのまま反映されているでしょう。そういった報道媒体は、アメリカのハフィントンポスト、日本ではYahoo!個人やブロゴス等が近く、私にとっても生々しい演出で、背筋が冷えました。

 

 

8.全体のまとめ

2回にわたって、映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』のレビューをお届けしました。日本国内にいる現役の院生や大学教員、研究所職員が見ると、「イタリアも、やっぱり、日本と変わらない問題があったのか」と、気づくかもしれません。そもそも、こういった問題は世界のどこにでもある話だと思われます。それだけに、研究者たちが専門性を犯罪に転用するところは、フィクション作品だからといって、容易に片付けられない問題があって、見に行った方には、そのあたり、考えて頂きたいです。

 

今作はシリーズ第2作ですが、いきなり見に行っても、大丈夫なように序盤ではズィンニたちがしてきたことや、前作の7人が逮捕されるまで、しでかした罪状など、説明かわりの導入部がありますので、ご安心ください。ただ、ギャング団だけで10人もいるので、2回くらい、見たほうがよいかもしれません。こちらが今回取り上げた第2作の公式サイトです:

www.synca.jp

入場者特典として、本記事のアイキャッチにしたステッカーがもらえます。現役研究者の方は、何かしら、有効活用できそうなデザインかと。

 

ちなみに、シリーズ第1作の『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』は、イタリア映画祭という名の特集上映で、日本各地の映画館で今月から順次、されているようです。東京や愛知、大阪や徳島では、「Viva!イタリアvol.4」の枠内で、他のイタリア映画と日替わり上映とのこと。スケジュールをチェックして、見逃さないようにしたいところです:

eigakan.org

 

日本では現在、前作と今作が公開中で、日本語の映像ソフトは出ていないようです。「忙しくて見に行けない!ディスクはないの?」という方には、本国版がアマゾンで流通していますので、イタリア語を鍛えて、ご覧になるのも一興かもしれません。下のリンクは、第1作&第2作(今回、紹介したもの)の2作同梱版です。

 

Cof Smetto quando voglio New Edition + Smetto quando voglio Masterclass

 

第2作には、サブタイトルに ”Masterclass”(マスタークラス)が付いています。続く最終章の第3作には、日本語では「名誉学位」に当たる語句が副題に付くそうです。本国イタリアでは、第3作は2017年の末に公開され、日本での公開はだいぶ先になりそうです。とりあえず、今作の日本語版ソフト化を待ちたいと思いました。

 

おしまい。

 

 

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