仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

月にまつわる神話や信仰から宇宙科学まで話を世界中から集めた「大全」~ダイアナ・ブルートン『月世界大全』+藤井旭の本~

今週のお題「読書の秋」>

1.はじめに

こんにちは、脚のリハビリの筋肉痛で、手だけ動かして執筆している仲見です。今週は、ノーベル賞の各部門の発表がされる週ということで、既に医学・生理学賞、物理学賞が発表されました。特に、直近の発表となった物理学賞については、アインシュタインが100根前に予言した重力波を観測した功績で、米国の大学の3人の先生方が、ご高齢ながら受賞なさいました。そのあたりの詳しいことは、「分室」の次の記事の「1-1.10月3日のノーベル物理学賞発表から」で触れていますので、ご参照下さい:

note.mu

 

そして、本日は10月4日で「中秋の名月」の日ということで、中国フリークな私は「月餅、大きなスーパーに売ってないかな?」と考えてしまいます。すみません、食いしん坊を通り越して、過食気味なので、まずは買っているリンゴを満月に見立てて、食べていこうと思います。

 

さて、今週のはてなブログのお題は、

 

今週のお題「読書の秋」

 

 です。「中秋の名月」の日に読書ということで、本日は、月にまつわる神話や信仰から宇宙科学まで話を世界中から集めた「大全」と呼ぶにふさわしい本の紹介です: 

 

月世界大全―太古の神話から現代の宇宙科学まで 

月世界大全 新装版 

上のほうが私が学生時代に読んで、人文科学系の授業でレポートを書き、参考文献に挙げた古いほうの版になります。けっこう、読み込んだ覚えのある本で、最初は図書館で借りた後、絶版になっていた期間があり、仕方なく古書サイトで飼いました。

 

下のほうが、2014年に出された新装版だそうで、こちらは手に取ったことがありません。5000円台とお値段が並の学術書になってしまいました。

 

上記のような事情によりまして、今回のレビューは、上の古い版の『月世界大全』をもとに、さらっとさせて頂きたいと思います。

 

 

2.簡単なダイアナ・ブルートン『月世界大全』のレビュー

 2-1.目次

目次は、古い版、新装版とも同じ内容になっております。

 

第1部 月の神秘(月に向かって
太古からの月物語
女神の月 ほか)
第2部 月を越えて(月の巨石
月の星座
月光が支配する生命 ほか)
第3部 月の科学(実際の月
月の起源
月の生命
月への旅)  

(Amazon | 月世界大全―太古の神話から現代の宇宙科学まで | ダイアナ ブルートン, Diana Brueton, 鏡 リュウジ 通販、目次)

 

 2-2.本の内容と私の思い出

これだけ、著者はよく神話や信仰から宇宙開発に関わるまでの月の話を集めて、読者に空きさせることのない筆致で書いたものだ、素晴らしい!と民俗学か何かで「女神の月」あたりを読んで、授業のビデオで見た、今日のイギリス南西部で行われている「女神運動」での満月に日の瞑想を紹介した文献*1などを探して、本書と合わせて読み、レポートに纏めました。

 

俄然、著者の経歴に興味がわいたものの、それらしき箇所はありませんでした。訳者の鏡リュウジさんが書いた「訳者あとがき」を読んでも、訳者自体が著者のダイアナ・ブルートン氏のことを存じ上げていないことが書いてあったものの、これだけの月にまつわるエピソードを集めてきて、本を一冊書き上げてしまった、博識な人に違いない、というようなことが、「訳者あとがき」に書かれていたことを、私は記憶の片隅に置いておりました。

 

肝心の内容については、私の関心の強い「第1部 月の神秘(月に向かって 太古からの月物語 女神の月 ほか)」あたりは、古代ギリシア時代から、東洋の月のイメージや神話、太平洋や大西洋の島々に伝わるエピソードを列挙しています。単なるエピソードの羅列では、読者が飽きてしまうものですが、そこは筆者の腕のみせどころ。きちんと、特定の地域の神話から民話へ話を移していく際、中心となるシンボルを月と結びつけた時、ある地域ではどう見るか、東洋ではどう見るか、といった形で話が自然に展開するように書かれていました。

 

後半の月と宇宙科学の話については、古い版のほうが1996年ということで、昔の月へ行くための科学はどんなものだったか、どうイメージされて月へ行こうとしていたのか、といった歴史の話として読むといいかもしれません。

 

もし、人文科学系の課題レポートで参考文献に、本書を使おうとされる方がいらっしゃるなら、一応、本書の各神話や民話などの注釈や参考文献があれば、チェックされることをおすすめします。特に、新装版について、一部、日本語訳されて追加された参考文献も登場しているかもしれませんので。

 

 

3.最後に

「読書の秋」ということで、もうひとつ、思い出したことがあったので、書いておきたいと思います。私が人文科学的なものに関心を持つきっかけに、おそらく、小学校時代に図書室の「チロの星空カレンダ―」シリーズの大型本を手に取ったことがあったと思います

 

天体写真家の藤井旭さんが、飼われていたチロをマスコットキャラクターに据えた、星座や天体の解説をマンスリーで1冊ずつ刊行したシリーズです。今は、ほとんどが絶版にあっているようですが、藤井旭さんは一般向けの天体観測の入門のシリーズを10年ほど前から出していらっしゃるようでした。今年のノーベル物理学賞との関連テーマで、チロが表紙に出ている本はこちら:

 

宇宙のしくみがやさしくわかる本 (藤井旭天体観測入門)

posted with ヨメレバ

 

それから、もう一冊。藤井旭さんがチロと出会い、天体写真家として活動し、やがて仲間たちと設立した白河天体観測所にチロを天文台長にして過ごした日々、チロを看取ったことまでをつづった手記があります:

 

星になったチロ―犬の天文台長 (ポプラポケット文庫)

以上、ちょっと学術的な『月世界大全』から、天文学の入門書シリーズを出されている藤井旭さんの本まで、多めに取り上げさせて頂きました。夜空を眺めながら、本に紹介されていたことを思い浮かべるのも、 読書の秋の醍醐味かもしれません。

 

おしまい。

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