仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【ニュース】「元大学院生の「アカハラ」訴え 大阪地裁が一部認め賠償命令」(関西テレビほか)

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<本記事の内容>

1.「元大学院生の「アカハラ」訴え 大阪地裁が一部認め賠償命令」(関西テレビほか)を取り上げる

 

昨夜、Twitterで流れてきたアカハラに関する訴訟ニュースを取り上げます:

www.ktv.jp

 

関西テレビのサイトで公開された内容は、以下のとおりです。上のリンク先では、動画があります。合わせてご覧ください。

元大学院生の「アカハラ」訴え 大阪地裁が一部認め賠償命令
04/25 19:12

 

裁判所「大学と院生の双方が納得して進められるべき」


指導教員から「アカデミック・ハラスメント」を受けたなどとして関西大学大学院の元学生が大学側を訴えた裁判で、大阪地方裁判所は訴えの一部を認めました。

 

訴えによると関西大学大学院に通っていた泉翔さん(31)は指導教員から「信頼関係の喪失」を理由に一方的に研究を中止され指導も打ち切られました。

 

泉さんは教員の行為がアカデミック・ハラスメントにあたり、大学側の相談窓口にも問題を放置されたとしておよそ600万円の損害賠償を求めていました。

 

判決で大阪地裁は「研究方法や教員の変更は大学院生に重大な影響を及ぼすため、双方が納得したうえで進められるべき」と認定。

 

さらに「大学のハラスメント相談室はおよそ2か月間、対応を怠った」として、大学側におよそ92万円の支払いを命じました。

 

【原告 泉翔さんの会見】
「僕は悪くなかったんだと思えたので、裁判したこと自体がよかったです」

 

大学側は「内容を精査し今後の対応を検討したい」としています。

(関西のニュース | 関西テレビ放送 カンテレ)

 

訴えた人は、関西大学大学院の元大学院生の泉翔さんで、「指導教員から「信頼関係の喪失」を理由に一方的に研究を中止され指導も打ち切られ」、泉さんは、

  1. 「教員の行為がアカデミック・ハラスメントにあた」ること
  2. 「大学側の相談窓口にも問題を放置された」こと

の2点について、訴訟で「およそ600万円の損害賠償を求め」ていました。院生の担当教員による指導放棄を含めて、弊ブログで複数回にわたり、アカハラに関わる調査委員会の結果について、扱ってきました。今回、大阪地方裁判所で「「研究方法や教員の変更は大学院生に重大な影響を及ぼすため、双方が納得したうえで進められるべき」と認定」されたことは、司法においてもアカハラの事実が認められたということで、大きな出来事だったと、私は捉えています。

 

大阪地裁は、泉さんの訴えに対し、「さらに「大学のハラスメント相談室はおよそ2か月間、対応を怠った」として、大学側におよそ92万円の支払いを命じ」ていることから、これからはアカデミックハラスメントの訴訟について、大学の相談室に対する責任が焦点になっていくかもしれません。ちなみに、産経WESTによると、「教授と大学に約86万円の支払い」、相談室に「6万円の支払い」を命じたということでした。

 

 

2.ハラスメントの背後にあったらしき「信頼関係の喪失」に関して

判決はさておき、泉さんの指導教員は何を理由に「信頼関係の喪失」を伝え、研究の中止と指導の打ち切りをしたのでしょうか。少し調べたところ、産経WESTには内藤裕之裁判長の判決理由が掲載され、そのあたりが少し窺そうです。ちょっと、読んでみましょう。

2018.4.25 19:53

関西大大学院でアカハラ 約90万円賠償命令

(前略)

 内藤裁判長は判決理由で、教授が男性に労働組合活動をやめるよう求めたことや、男性が大学院で行っていたフィールドワークをやめさせたことをアカハラと認定。「嫌がらせではなく指導の範囲」などとしていた教授側の訴えを退け、組合の脱退を余儀なくされるなどして男性が精神的苦痛を受けたと認めた。

(関西大大学院でアカハラ 約90万円賠償命令 - 産経WEST)

 

大学院生が労働組合の活動といえば、私が思い当たるのは、非常勤講師をしている院生が待遇改善を求めている場合があります。また、政治学や公共政策学、経済学や社会学の分野では、労働組合について研究対象としている方々もいます。そういった背景から、フィールドワークで参与観察の手法をとっており、何らかのきっかけで、指導教員が「それは労働組合の活動になるから、調査の範囲を超える恐れがあるから、気をつけないさい」と言ったり、危機感お抱えた指導教員の判断でやめさせたことが考えられます。このあたりは、分野によってはデリケートなことがあって、指導教員と泉さんとの間でどういった細かいやり取りがあったのかは、第三者には分からないことが多いでしょう。

 

少し、泉さんのことを調べてみました。関西テレビの上のニュースを配信先のYahoo!ニュースの記事に、NPO法人で活動されているらしきコメントを見かけました。それが関西に拠点をおく、元ひきもりの方や社会的に「無縁」になりがちな方々の居場所づくりや支援を行う組織のようです*1。泉さんの関西大学の大学院における詳しいご所属と、大学院の修士課程か、博士課程かは不明です。他で調べたところ、泉翔さんという方が、こちらの組織所属で市民講座で講義をされている情報を得ました。この組織でのご活動から、関西大学の泉さんが先述の参与観察とフィールドワークを行うことのある学術分野に近い部局にいらっしゃったのではないか、と勝手に考えました。ご本人であるかは不明な上、このことが私の憶測の域をでませんこと、申し添えさせて頂きます。

 

 

3.最後に

リンクした関西テレビの動画では、痩せて頬がこけた様子の泉さんが「僕は悪くなかったんだと思えたので、裁判したこと自体がよかったです」と言っておられたのが印象的でした。今までハラスメントをそうとは知らず、またはハラスメントだと分かってはいても、自分の言動が悪くて、指導教員に強く当たられていたり、厳しい扱いを受けていたのではないか、と自分を責めていた人たちの姿を、私は泉さんの言葉に重ねてしまいました。

 

関西大学の側は、「内容を精査し今後の対応を検討したい」とコメントしており、これから次の段階に進む可能性はあります。今後の動向を追いながら、大学や大学院でハラスメントにあっている人たちにとって、ひとつのターニングポイントになったと考え、情報発信を続けていきたい思いました。

 

おしまい。

 

 

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*1:ご本人かは分かりませんが、代表理事のところにお名前がありました:ウィークタイ 法人概要

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