仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

世界史を教えていた私が選ぶイスラームと中東地域の近現代史を知るための3冊

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上のリンク記事の補足として、イスラーム諸地域の近現代史を知るのに、高校生向けの授業で使った本を三冊、紹介します。

 

①山井教雄『まんが パレスチナ問題』 

まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

 

パレスチナ問題について、聖書とユダヤ教キリスト教イスラーム教の始まりから、三つの宗教を信仰する人たちの争いの歴史を現代の中東の紛争、そして2001年の9月11日のアメリカ同時多発テロまで、文章と親しみやすいイラストで解説した漫画本です。漫画というより、地図や大きなイラストの入った絵本(中国の”連環漫画”)のような印象です。

上のリンク記事の「第2章アラブ大反乱の父フサイン=イブン=アリー」の箇所で、中東の民族運動とイギリスの三枚舌外交については、本書のp.108~123に分かりやすく描いてあります。更に、2004年以降について補足された続編も刊行された模様↓ 

 

 

 

梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

 

上のリンク記事の前半で、たくさん出てきたオスマン帝国が、第一次世界大戦の迫る中、凋落していった様子を、民間人たちの視点から知ることができる小説です。

 

1899年、トルコの首都はスタンブール。この国の皇帝の招きで留学中の日本人村田君は、ギリシャ人やドイツ人の学者仲間と議論に明け暮れ、下宿のムスリム使用人の拾ったオウムの叫びに閉口したり、異国の神々同士の騒動で「とばっちり」を受けたり、楽しい日々でした。

そんな日常に忍び寄る革命の影、そして村田君への突然の帰国命令。緊迫するバルカン情勢と勃発した第一次世界大戦を背景に、彼らの運命は引き裂かれてゆきます。高校世界史の教科書にはない、日本とトルコの関係、両国を繋ぐ山田氏の存在など、知ることができます。同時代の日本側の見方は、同じ著者の『家守奇譚』シリーズが刊行されています。

 

家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚 (新潮文庫)

 

 

冬虫夏草

冬虫夏草

 

 

 

③カレン・グレイ・ルエル,デボラ・ダーランド・デセイ『パリのモスク ユダヤ人を助けたイスラム教徒』

パリのモスク―ユダヤ人を助けたイスラム教徒

パリのモスク―ユダヤ人を助けたイスラム教徒

 

 1930年代のパリには、労働者として北アフリカの植民地から来た多くのムスリム(イスラム教徒)が住んでいました。物語の舞台は、第一次大戦後、彼らのフランス軍への参加の感謝を示して建立され、ムスリムには祈りと生活の場となっていた大モスク。

1940年代、ナチ党ドイツに占領されたパリでも迫害が開始され、ユダヤ人は見つけられ次第、強制収容所へ送られ、殺されてしまう。ユダヤ人だけでなく、ドイツ人を除く全ての人々の自由が制限される中で、ユダヤ人を助けようと危険を冒すような人は、ほとんどいませんでした。切迫した状況のもと、本書はこれまで語られることのなかったムスリムのユダヤ人救出活動に光を当てた一冊です。ムスリムの反乱を恐れ、大モスクに手を出せなかったドイツ軍に対し、イスラム教の宗教指導者は、逃れて来たユダヤ人を匿い、どうやって逃していたのか…。

あまり、日本では存在の知られていない、イスラーム文化圏で過ごしてきたユダヤ人たちが、植民地となっていた北アフリカから、宗主国フランスに出て、働いていたこと。ナチスドイツの支配が及んだ時、フランスへ逃げてきた欧州のキリスト教文化圏のユダヤ人たちのこと。そうした細かな情報を丁寧に説明しつつ、きちんと歴史的事実を伝えるノンフィクション絵本として、完成度の高い大人向けの作品です。

第二次世界大戦から、約70年を経た現在の世界的な紛争問題、民族問題を考える上でも、ヒントとなる本でしょう。

 

 

最後に

この3冊は、勤務先の教室の棚(くもん教室の文庫みたいなもの)に置かれいたものもあれば、私が高校時代に読んでいた経験から生徒の語彙レベルを考えても、すすめやすい作品を頼んで置いてもらったり、そういった基準で選びました。高校生向けではありますが、忙しい社会人や大学生にも耐えうる内容だと認識しております。

 

イスラーム地域と言えば、東南アジアのほうにも目を向けなければいけないのですが、東洋学を学んでいた者として、いずれ、きちんと自分で勉強しなおして、選書をしたいと考えております。今回は、ご寛恕いただけたら、助かります。

 

そういうことで、今回の記事はここまで。

 

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