仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

続・研究者の子育てと保育園の児童入所問題~センリ「認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。」より~

<今回の目次>

1.はじめに~長い前置き~

読者の皆さま、お読みくださいまして、ありがとうございます。仲見満月です。皆さまには、幼少期の頃にいつも持ち歩き、ボロボロに綻びても、バキバキに壊れても、愛着があって、手放せない。成人して社会人になった後も、ぬいぐるみや魔法少女もののキャラクターグッズ、恐竜や怪獣のソフビやフィギュア、戦隊ものや仮面ライ●ーのベルトや武器の玩具、巨大化して胸元のカラータイマーの制限時間内に敵を倒していくヒーローの人形など、自宅にお持ちの方って、実はけっこう、いらっしゃるんじゃないでしょうか。

 

私の場合、恐竜のフィギュアや爬虫類のそっくりおもちゃ、それからぬいぐるみを持ち歩き、幼稚園や保育園に上がっても、登園するバッグにしのばせ、園内で先生やほかの園児にみつかっては、よく怒られていました。そうは言っても、おもちゃやぬいぐるみは、園児と幼稚園教諭、保育士の先生方とを結ぶコミュニケーション道具としても、役立っておりました。園に置いてあったリアルテイストの恐竜のイラストを模写しては、先生に見せたり、恐竜や爬虫類役をなぜか、ごっこ遊びで私がすることなったり、今となってはよい思い出です。

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毎度、長い前置きになっていますが、そういうわけで、今回は院生の子育てに関する話、特に認可保育園の話題です。

 

2.センリ「認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。」紹介

以前、研究者の子育てについて、三鷹市における認可保育園の入所選考の合格に必要な両親の勤務に関する点数が足りず、入所選考に落ち、大学院生の母親が無認可保育園に子を預けるのにかかった費用を、三鷹市に請求する訴訟を起こした報道を、下の記事で取り上げました。

 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

争点は、母親が非常勤講師として働いていたにも拘わらず、市の入所選考において、母親が博士院生でもあったころから、市で母親は「学生」として点数をつける判断をされてしまい、結果、父親はフルタイムの勤務で40点、母親は「学生」として見なされ32点、合計76点とされてしまい、選考に受からなかったのです。市の職員の説明によると、80点はないけないと入所が難しいところ、この両親は76点で子を三鷹市の認可保育園に入れられず、母親が弁護士を立てずに訴訟をし始めた。

 

引用した次の毎日新聞の記事は、だいたい、このような内容だったと思います。

認可保育園:落ちた母が提訴…「確保は三鷹市の責務」 - 毎日新聞

 

実は、私が読者登録させていただいた、はてなブログセンリのみち 年収1000 万を目指すシングルマザーの記録」の中で、三鷹市のこの訴訟に関して、認可保育園に申請をし、「2月半ばには認可保育園に受かったかどうかの通知が来る」という元大学院生の母親の立場から、取り上げていらっしゃる記事がありました↓

www.singlesimple01.com

  

 

センリさんはご自身が子育てをなさっておられ、かつ実際に認可保育園の通知を受け取るのを待っておられています。上のリンク記事で、センリさんは元院生だった頃の研究生活を振り返られ、

話がそれたけど、要は大学院生は単なる学生なんだから時間あるでしょ、学生なら休んで子供の世話をしたらいいじゃない、という考えはあっているようで間違っているということ。朝から晩まで研究して、発表原稿作って、論文書いて。真面目な院生ならば、フルタイム勤務よりも遥かに忙しい。時間があったら研究書を読みたい。そうまでしても、3年で学位は取れないからね。

認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。 - センリのみちより)

と、三鷹市が訴訟を起こした母親を「学生」と見なした上、「学生なんだから、休んで子供の世話をしたらいいんじゃない」と考えられたと推測されています。

その上で、センリさんは認可保育園の申請システムを細かく把握され(制度を利用されているから当たり前かもしれませんが)、システムを踏まえ、院生が認可保育圏を申請した場合の選考結果を次のように分析されています。

そのためか、文系の博士課程は30代も多い。もちろん家庭を持って、出産して育児している人もいる。学位取ってから出産しようとすると、高齢出産になってしまうしね。そうすると保育園に入れなくてはならない。でも院生という括りはなく、大学生と同じ「学生」とみなされて、フルタイム勤務よりも低い点数がつけられる。三鷹市では8点低いのかな。これは申請を諦めてもいい点数じゃないかと思う。フルタイム共働きですら落ちる激戦区だもんね。(学生がフルタイムと同じ点数の地域もある)

認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。 - センリのみちより)

 

センリさんのご指摘のとおり、文系の博士院生は30代で男女ともに家庭を持ち、出産・育児をしている方も多いです。以前の私の記事「研究者の子育てと保育園の児童入所をめぐる問題~三鷹市の訴訟から~ -」の「2-2.事前に地域自治体の入園選考システムを調べてから出産入園選考に挑む」で、紹介した私の知人女性も、分野としては文系寄りのテーマを理系の大学院修士課程で選び、修士論文を書かれました。研究生時代に「保活」で保育所選考に受かり、第一子を入所させつつ、研究生として博士課程編入試験に備えられました。

この方は、社会人のご主人と相談し、徹底的に居住市町村の保育所選考システムを調べ上げたそうです。運よく、お子さんを入園申し込みに有利な時期に出産。ご主人が書類を集めておき、調べ上げた通りの手続きを踏んで、第7~8希望くらいまで入所希望を出したそうです。通知が届くと、何とか知人女性の通学圏内のところに「当選」したとお聞きしました。

 

その後、女性は第一子を保育所に預けながら、研究生から博士課程に進学され、育児をしつつ、博士院生として6年在籍されて博士論文を出され、博士学位を取得。現在、2人目のお子さんの「保活」をされながら、ポスドクとして研究を継続されているようです。

 (研究者の子育てと保育園の児童入所をめぐる問題~三鷹市の訴訟から~仲見満月の研究室より)

そして、上記に書いたとおり、 博士課程に進学され、時間はかかりましたが、何とか6年間で博士学位を取得されました。ちなみに、ポスドクの申請は、年齢的には学術振興会の特別研究員のPD枠ですが、出産育児から研究に復帰した人対象の枠になるのかは、分かりませんが、学振の申請は検討されていたように思います。

 

少し、センリさんの記事を前に戻りますが、文系と理系の博士課程での博士号取得に関する現在の日本の状況について、的確な指摘をなさっておられたので、ここで引用させて頂きます。

博士課程の3年で学位を授与するように、という流れに最近変わってはきているようだけど、文系でも確実に3年で博士取れますよ!というところまでは、まだ来ていないと思う。30年度からは、学振といって院生が争奪戦を繰りひろげる給付型奨学金(確か院生は月20万)も応募資格が変更されて、標準修業年限を超えて在学する者は不採用と明記してあるけどね。これにあぶれた院生の悲惨さよ・・・

学振の募集要項→https://www.jsps.go.jp/j-pd/data/boshu/dc_yoko.pdf

認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。 - センリのみちより)

 

そう、文系、そして理系だけど文系寄りの分野の博士院生が博士課程のうちに博士号を取得しようと思うと、3年間きっかりで取得できるんです!というところまで、学術界の現状が追い付いていないのが現実です。私の知人女性も、6年間、博士課程にいて博士号を取得していましたし。そして、(平成)30年度からの学振も応募資格が変更され、標準修業年限を超過した在学者は不採用っていう情報を提示され、「某文句あるか省」の関連機関は、現状を分かっておられないようです・・・。

 

さて、センリさんは三鷹市の訴訟について、母親は非常勤講師もしているのに、「学生」扱いになってしまったらしいことに対して、「たとえば週5コマの非常勤講師よりも、週に40時間以上働くパートが優先。いくら講義の準備に時間がかかろうと、試験の採点で徹夜しようと、点数には反映されない。」と指摘。その結果、学生扱いで点数をつけられてしまい、受かりそうな点数に達しなかったのでは?と考察されています。

 

この「非常勤講師としての勤務」が点数に反映されないというのは、以前の記事で指摘したように、勤務時間測定が可視化に基づきにくいこと(タイムカードで管理しにくい労働形態)が原因としてあると思います。非常勤講師だったら、非常勤先の大学の施設を使わず、自宅や喫茶店で授業準備として教材作りを行うことがあり、こういった準備の時間、それから採点にかかった時間は、カウントしにくいものです。

 

それから、もう一つ、「非常勤講師としての勤務」が点数に反映されない原因は、

ただ、非常勤講師に対する認識は、上記のアカデミックな世界を出ると、三鷹市の訴訟のように、自治体の保育園の入園選考など、世間では「ただの学生のアルバイト」と認識され、労働や職の経歴として、軽くでしか扱われないことがあります。

行政の方と仕事をする機会があった先輩のお話では、「私が行き始め大学の非常勤講師のお話をしたら、ただの学生のアルバイトですね、って軽く言われたことがあったよ」と仰っておられました。自治体の職員の方のには、修士卒の方も時々いますから、そういったアカデミックな世界に理解のある人なら、高等教育機関の非常勤講師の職の持つ意味が分かるかもしれません。でも、悲しいかな、自治体で決められた基準やマニュアルに照らせば、おそらく、非常勤講師は非正規労働であり、特に児童の入園選考では、院生のほうの身分が重く扱われがちになるのでしょう。

研究者の子育てと保育園の児童入所をめぐる問題~三鷹市の訴訟から~仲見満月の研究室より)

という、非常勤講師=ただの アルバイトという「世間」の意識に基づいた、自治体の行政システムにおける基準設定を推察できます。

 

 

3.必要とする人が全員利用できるようにするには?~まとめに替えて~

院生の点数が低かったのは、私はセンリさんのご指摘と合わせて、非常勤講師に対して「自治体の保育園の入園選考など、世間では「ただの学生のアルバイト」と認識され、労働や職の経歴として、軽くでしか扱われないこと」が根底にあったのだと思いました。

 

 こうした院生の置かれた現状に関して、センリさんは「社会に貢献していないから?社会人よりも時間に融通が利くから?学費を払う余裕があると思われている?・・・」と書きつつ、次のように否定なさった上で、元院生で現在は働いて子育てする立場から、私が不明瞭に抱えていた思いを、簡潔な言葉でまとめて下さっていました。

 ・・・それは違うだろうと言いたい。院生なんて殆ど奨学金という名の借金を背負っているしね。じゃあ大学院なんて進まないで、就職したら良かったじゃないと非難する声が聞こえてくる。そしたら満点貰えるわよ、と。それも違うよね。人それぞれ夢や目標があって、自由に人生設計していける。その目標が社会の大半の人達とは違うという理由で、弾かれるなんてさ。

認可保育園に入れずに三鷹市を訴えた大学院生に思うこと。 - センリのみちより)

下線部が私の抱えていたモヤモヤをクリアな文章にして、頂いた部分です。個人個人ごとの目標や夢を、それぞれが自分の自由な意志でデザインし、人生を生きていけるように、社会が多様な人の生き方を認め、サポートできるようにシステムを構築していくこと。これこそが、院生や院卒者が「自己責任ですよ」という言葉のもと、夢や目標の追究を諦めざるを得ない社会状況にあることと、対極にある理想だと気がつきました。

 

最後にセンリさんが挙げておられる解決策は、「大学に保育園併設を義務づけて、学生・非常勤を優先して利用させましょう。(すでに保育園ある大学も多いよ)」というシンプルなもの。ちなみに、学内の保育所や託児所の利用状況については、次の記事で私もテーマにしたことがありました。ご参照ください↓ 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

なお、学内の保育・託児施設の設置、保育士の待遇などをめぐっては、最近の動向として、保育所を経営する企業が受託するケースが増えているそうです。子育てをなさっている大学の先生方のツイートでは、幾重もの請負いで企業の出す給与が少なく、苦労する保育士の労働条件を改善しようと、奮闘されている大学教員の方々もおられるようです。

 

長くなりましたが、今回はここまです。紹介を許可下さったセンリさん、ありがとうございました。

(*引用のし過ぎが心配なので、センリさんにご確認頂いて、問題があれば、書き直し等を行う予定です)

*センリさんにご確認頂いたところ、問題ないということでした。このままの記事公開に致します。

 

 

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