仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

「CiNii、論文データの提供を再開」(ITmediaより)~続々・「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相~

1.速報:「CiNii、論文データの提供を再開」

 【2017.4.7_1941更新】「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相~「「CiNiiで論文が見られない」電子図書館終了に困惑の声」(ITmediaビジネスより)~ - 仲見満月の研究室

↑この記事の更に続報が10日、出ました。下のITmediaニュースの記事です。

(以下、ニュース記事)

www.itmedia.co.jp

 

 国立情報学研究所(NII)は4月10日、論文検索サービス「CiNii(サイニー) Articles」で、停止していた論文PDFデータのダウンロード提供を一部再開した。3月までCiNiiで公開していた全約378万件の論文のうち、約110万件の提供を再開。「J-STAGE」への移行が完了した論文も含めると、約199万件が閲覧可能になった。残りの論文についても、学会などと協議し、可能なものは再公開する予定だ。

 

 NIIは「利用者の利便性を考慮し、論文データ提供の再開を決めた」という。

(CiNii、論文データの提供を再開 「利用者の利便性を考慮」 - ITmedia NEWS)

とのことです。 そもそも、この4月5日に「CiniiでPDFファイルが閲覧できなよ?!」ということが、「Cinii消失騒動」になっていました。この騒ぎの経緯は、前回の先月のJ-STAGEへのサイバー攻撃と国の学術情報検索サービスの問題~続・「「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相」~ - 仲見満月の研究室の「1.前回の記事のあらすじ」に詳細が載っていますので、そちらでご確認ください。

 

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J-STAGEというのは、文科省の関連機関である科学技術振興機構JST)が運用する「電子ジャーナル出版プラットフォーム」です。一方、Ciniiのほうは、JSTとは別の国立情報学研究所が運営・管理しています。CiniiのほうがJ-STAGEよりも、より検索に特化した学術情報検索サービスだったようで、J-STAGEのほうが学術ジャーナルのページから論文PDFを閲覧できるとか、よりカバー範囲が広いといったらいいイメージです。

(書誌情報は、J-STAGEのほうは学術ジャーナルの発行者が入れている模様)

 

そもそも、CiniiからJ-STAGEへの論文PDFを含む機能移行は、2014年に「国立情報学研究所電子図書館事業」の終了が告知され、そこから2年のうちに、Ciniiでの論文PDFの公開が終わることも、言われていたそうです。そうだったのですが、事前に告知され、情報を受け取っていた人たちがいたにも拘わらず、CiniiからJ-STAGEへの移行作業には時間がかかり、今回、CiniiでPDFが見らえないというところから、「Cinii消失騒動」は発生しました。

(詳細は、先月のJ-STAGEへのサイバー攻撃と国の学術情報検索サービスの問題の「3.2014年に国立情報学研究所の電子図書館事業の終了告知とその周辺の問題」)

 

この「Cinii消失騒動」から約一週間、本日10日、冒頭に引用したとおり、Ciniiで「停止していた論文PDFデータのダウンロード提供を一部再開した」。今年3月まで公開していた全論文約378万件のうち、その約3割をの提供をCiniiで再び検索者が見られるようにした、ということです。再び、閲覧できるようになったこの199万件の内訳は、

J-STAGEに移行できていない論文(約22万件)と、学会誌の発行終了などで移行予定がない論文(約88万件)の合計約110万件。

(CiNii、論文データの提供を再開 「利用者の利便性を考慮」 - ITmedia NEWS)

であり、既にJ-STAGEへ移行している約89万件は、Ciniiの論文情報ページからJ-STAGEへのリンクを押すと、PDFが閲覧可能だそうです。

 

今後、Ciniiを管理している国立情報学研究所(NII)としては、各方面と提携し、

 J-STAGE以外に移行予定だったり、学会で移行方針が決まっていなかったり、NII-ELSで有料提供されていた論文は公開を停止したままだが、NIIは今後、各学会や科学技術振興機構と協議し、無料公開が可能なものについては、ダウンロード機能を提供する方針だ。

CiNii、論文データの提供を再開 「利用者の利便性を考慮」 - ITmedia NEWS

 ということをしようとしているそうです。

 

 

2.一連の「Cinii消失騒動」についての感想

結局、NII-ELSで公開されていた論文PDFのうちの一部しか、これからは、見られなくなるんかーい!とツッコミを入れたいのが、現在の正直な気持ちです。おまけに、前回の記事で、先月の8日にJ-STAGEが外部からサイバー攻撃を受け、一週間近くサービスの利用停止をしていたことをお伝えしました。CiniiからJ-STAGEへの機能移行に時間がかかりすぎていて、本当に日本は国として「研究成果の電子文献の管理を含めて、学術情報サービスに力が入れられていないんだなぁ」と改めて、実感しました。つまり、こっちに割けるお金が回ってきていなんです。

 

Ciniiでの一部の論文PDFの公開を再開したものの、もう、国に頼っていられないから、Twitterはじめ、ネット上のあちこちで声が上がっているように、各学会や民間企業、自治体で論文PDFを集めて検索できるプラットフォーム作っていき、それを組織化していくしかないでしょうね。

 

個人単位でできそうなことは、次のようなことかもしれません。

一部の研究者ユーザーのの方々が自分の論文の情報と公開先のURLに「 #CiNiiは闇に呑まれたから私の論文を読め 」のタグを付ける動きが始まっています。これも、学術情報の広い意味での保存に寄与するかもしれません。

(しないかもしれません)

(先月のJ-STAGEへのサイバー攻撃と国の学術情報検索サービスの問題~続・「「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相」~ - 仲見満月の研究室)

 

もっと効果的な方法がありましたら、どなたか教えてください。 

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