【2017.9.17_2031追加】遺伝学の用語改定と「東京喰種 トーキョーグール」~「遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます 学会が用語改訂」(朝日新聞デジタル)~
<定着した用語さえ「置き換えていく」こと>
- 1.はじめに
- 2.「遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます 学会が用語改訂」(朝日新聞デジタル)の内容~「東京喰種 トーキョーグール」を例に~
- 3.まとめ
- 4.関連する「分室」note.muの記事(2017.9.17_2031追加)
1.はじめに
昨夜、Twitterで流れてきたニュースについて、取り上げます。色々と衝撃的でした:
ニュース記事の重要な部分をまとめた、冒頭を読んでみましょう。生物学、遺伝学の研究に関わる理系の大学院生や学部生といった学生、研究者だけでなく、理科の学校教員の方々、それだけでない一般の人たちにも、無縁ではない話題です。
遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます 学会が用語改訂
編集委員・瀬川茂子2017年9月6日19時11分遺伝の法則の「優性」「劣性」は使いません――。誤解や偏見につながりかねなかったり、分かりにくかったりする用語を、日本遺伝学会が改訂した。用語集としてまとめ、今月中旬、一般向けに発売する。
中高の理科の生物分野でおなじみの遺伝の法則。その説明に、重要語として出てくる用語で、形質の出やすい「優性」とそれが出にくい「劣性」。その2つについて、前者を「顕性」、後者を「潜性」に言い換えることについて、「日本遺伝学会が改訂した。用語集としてまとめ、今月中旬、一般向けに発売する」というのが、本記事の話題です。
それでは、詳細を第2項から見ていきましょう。
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【ニュース】「博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け」( 大学ジャーナルオンライン)
<博士人材の行方>
- 1.はじめに
- 2.【報道】「博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け」( 大学ジャーナルオンライン)の内容
- 2-1.2012~2015年度の博士課程修了者の被雇用先
- 2-2.その後の被雇用者の転職状況とその背景
- 2-3.年齢が高くなっていく博士人材と流動研究員の事情
- 3.最後に
1.はじめに
以前、こちら【ニュース】「ポストドクターから大学教員への道険しく、文部科学省調べ」(大学ジャーナルオンライン)~主に就職問題~ - 仲見満月の研究室で紹介しました、ポスドクから大学教員へ進める確率を調査した文科省の機関が、次に出したのは、博士人材に関する進路の追跡調査でした:
今回は、この大学ジャーナルオンラインのニュースをもとに、博士人材の問題について、考えてみたいと思います。
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【18.3.11_2240リンク切れ確認済み】栄養科学の研究成果を地元住民に向けた食品開発に生かす~「「薬膳パン」大好評 中村学園大の研究から誕生」 (西日本新聞)~
<福岡の薬膳パンの話題>
1.はじめに
皆さんの毎日の主食は、何ですか?ごく最近の私はパンの時が多いです。パンといえば、幼稚園や保育園から、中学校の給食でおなじみの主食だった方はけっこういらっしゃると思います。成人してからも、販売されている惣菜パンを昼食に、食パンを一枚ずつ焼いてトーストで朝食に添えたり、馴染んでいる方は多いと思います。
今日は、そのパンについて、大学での研究成果を食品として生かし、開発した「薬膳パン」の話題です:
「薬膳パン」大好評 中村学園大の研究から誕生 - 西日本新聞(`18.3.11_2240リンク切れ確認済み)
2.「「薬膳パン」大好評 中村学園大の研究から誕生」(西日本新聞)の内容と薬膳パンが生まれた背景
それでは、さっそくオンラインニュースを見ていきましょう。
「薬膳パン」大好評 中村学園大の研究から誕生
2017年09月03日 06時00分
中村学園大(福岡市)の研究から生まれたレシピを基に、中村調理製菓専門学校(同市)が作った「薬膳パン」が2日、市内で開催中のイベント会場で限定販売された=写真。
薬膳パンは、同大が約20年前に考案、福岡県住民に食べてもらい老化関連症状の変化を調査した際のレシピがルーツ。今回、福岡国際センターで3日まで開かれる「YAKUZEN EXPO」に出展しようと、同校が改良、クコの実やクルミのパンなどを商品化した。
パン320袋は約30分で完売し「びっくり。他のイベントで売ることも考えたい」と担当者。販売面での“薬膳効果”も感じていた。
=2017/09/03付 西日本新聞朝刊=
(「薬膳パン」大好評 中村学園大の研究から誕生 - 西日本新聞、18.3.11_2240リンク切れ確認済み)
冒頭に出てくる中村学園大を調べてみると、次の公式サイトにたどり着きました:
大学で設置されている学部は、栄養科学部と教育学部の2学部です。公式サイトの「大学案内>沿革」へとページを進むと、大学の沿革が分かります。それによると、1953年に設立認可された学校法人中村学園によって、翌年に開講された福岡高等栄養学校が中村学園大学とその短期大学部の前身になったようです。その後、教育学部の基礎となる学科が設立されていっていることから、「薬膳パン」の研究レシピの背景には、前身の福岡高等栄養学校からの流れが受け継がれているのかもしれません。
さらに、薬膳パンを作った中村調理製菓専門学校の公式サイト:
こちらのトップページをスクロールして、「中村学園関連リンク」のリンクを押して移動すると、学校法人の中村学園グループのページが現れます。ざっと読んだところ、分かったことは、栄養学に強い中村学園大学(学校法人中村学園)と中村調理製菓専門学校(学校法人中村専修学園)が姉妹法人であり、これらの二つの法人間の提携によって、薬膳パンが生まれたらしい、ということでした。
この薬膳パン、レシピは「同大が約20年前に考案、福岡県住民に食べてもらい老化関連症状の変化を調査した際のレシピがルーツ」だったそうです。レシピを生んだのが地元・福岡では現在、栄養科学に強い大学だったことといい、そのパンを提携している調理専門学校で作って地元で販売して人気が出ていたことといい、薬膳パンはローカルな方向に意識があったからこそ、商品として人気が出たと思いました。
「今回、福岡国際センターで3日まで開かれる「YAKUZEN EXPO」に出展しようと、同校が改良、クコの実やクルミのパンなどを商品化した」とありますが、エキスポという名前のついたイベントでも、まずは地元開催のところから攻めていく!ことは、地道に実績を積み重ねていく姿勢を見せています。そういった堅実なところが、私には好印象でした。
そういうわけで、薬膳パンが仲見のいる地方でも食べられるようになるには、時間がかかりそうです。気長に商品がこちらまでやってくることを待ちたいと思います。
3.まとめ
今回の西日本新聞のニュースを読んで、私は、薬膳パンに関わる人たち、頑張れ!と素直に応援したくなりました。第2項で書いたように、研究開発から調理、販売、そして購入と評価までが、地元の福岡で完結していました。地元密着型の商品として、愛されてきた商品というところに、地元の私立大学や提携校が関わっているところは、地方大学の研究を地元に還元したり、生かしたりするヒントになるかもしれません。
薬膳パンの見逃してはならない部分は、「パン320袋は約30分で完売し「びっくり。他のイベントで売ることも考えたい」と担当者。販売面での“薬膳効果”も感じていた」とニュースの 最後の一文です。パンだから医薬品ではないけれど、身体の調子がよくなることを助ける、という効果が、もし薬膳パンが他地方に進出した場合、食べた人に認められて、それを中村学園大学が追跡調査していく。その調査をもとに、さらに新商品が開発されていけば、薬膳パンの商品的なブランド価値もアップしていくのではないでしょうか。
ちなみに、同大学では次のような研究をもとにしたと思われる、レシピを出版しています:
何はともあれ、薬膳パン。私も福岡に行く機会があれば、食べてみたいです。
おしまい。