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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

返還前後の香港を見つめた日本人~星野博美『転がる香港に苔は生えない』~

星野博美『転がる香港に苔は生えない』情報センター出版局.2000

 

トカゲと鴉のコインロッカー-転がる香港に苔は生えない

 

星野博美『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫)文藝春秋社.2006

 

トカゲと鴉のコインロッカー-文庫版-転がる香港に苔は生えない

 

 上が単行本なんですが、現在、絶版になっている模様。

なので、下の文庫版だけリンク張ってあります。この本も、

単行本のほうの装丁が好きな私です。

 

 数年前、どこかの古書店チェーンで見つけ、感じるものが

あり、購入。大学で現代中国史の授業をとったとき読み始め、

今に至る。

 

 前のこの記事↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

と合わせて読むと、現代中国がより分かりやすいと思います。

 

(内容のレビュー:以下、ネタバレ注意)

 

 著者は、カメラマン・ノンフィクション作家。幼い頃、中国に

憧れて育った少女は1980年代後半、20歳で香港中文大学に留学。

その後、仕事で大陸の中国と関わりながら、いつかの香港再訪を

夢見る。

 

 本書は、返還前の香港へ再び渡った著者が香港中文大学に

通いつつ、生活するうちに出会った下町の人々、かつての同級生

たち、大陸から密航してきた中国人家族、そして大陸と台湾の

間で揺れる男など、背景に計り知れないものを抱えた「群れ」、

香港と向き合った記録である。

 

 単行本も文庫版も、とにかく厚い!どっちも600ページ前後。

それだけ、著者が人と出会い、彼らと重ねた時間を丁寧に書き

綴っている。

 

 

 例えば、哲学科の院生でコラムニストの文道の場合。生まれは

香港、育ちは台湾。国共内戦の国民党闘士だった祖父によって、

「古き中国」の詰まった屋台で育てられる。荒れた思春期を送った

文道は香港に返され、勉強の末、香港中文大学へ進んだ。

 

「僕が今考えていること、ものの見方、それらはすべて香港で

発生した。だから僕は香港人だと思う。」

 そう答える文道は、ニューヨークに5年間しか住んでいない

「ニューヨーカー」に共感する。

 

 こんな彼らと過ごす日々の中、所詮、日本から来て香港を去り

ゆく存在の著者。だからこそ、著者は交錯する香港に立会い、

自分の感情にひきつけ、生々しく複数の"生き様"を書くことが

できたのだろう。

 

 

 香港が返還されて、今年で13年目。イギリス領から中国領と

なった香港の今と返還当時を本書で振り返るのもよいでしょう。

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