仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【2017.5.25_2303更新:ニュース】「大学授業料、出世払いで 自民教育本部が首相に提言」(日本経済新聞)+返済型奨学金や学費免除・学費自活の実例等まとめ

1.「大学授業料、出世払いで 自民教育本部が首相に提言」(日本経済新聞)について

本日、組織的犯罪処罰法の改正案衆院本会議で可決されたという大きなニュースに混じって、Twitterで大学の授業料にまつわる、こんなニュースが回ってきました:

www.nikkei.com

 

大学授業料、出世払いで 自民教育本部が首相に提言
2017/5/22 20:15

 

 自民党教育再生実行本部(本部長・桜田義孝衆院議員)は22日、教育費の負担を軽くする提言を安倍晋三首相に提出した。大学在学中は授業料を免除し、就職後の所得に応じて出世払いする方式を提案した。大学や専門学校などの高等教育の費用負担を2020年度から本格的に軽くする目標を示し、財源に国債を充てることも選択肢の一つに明記した。

 

 桜田氏によると、首相は教育財源について「政府・与党で考えていきたい」と応じたという。

 

 提言は「税、保険、国債などを幅広く検討し、まとまった規模の新たな財源をつくる発想転換が必要」と強調した。大学授業料の出世払いはオーストラリアが導入している。後払いする点で貸与型の奨学金に似ている。

 

 幼児教育の無償化を急ぐべきだと訴え、働く人と企業の社会保険料に上乗せする「こども保険」を「重要な財源の候補」と位置づけた。

 

 一方、公明党の教育費無償化財源検討プロジェクトチーム(座長・浮島智子衆院議員)は同日首相に出した提言で、こども保険について「中小企業の負担増に配慮すべきだ」と注文を付けた。

大学授業料、出世払いで 自民教育本部が首相に提言 :日本経済新聞

 

NHKのニュースでも取り上げられていました:

https://archive.is/Rahvq

 

大学や大学院を含む高等教育の無償化に関する政府の審議では、次の記事:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

で取り上げた財政制度等審議会で、財務省が慎重になるよう、見解を出していたことはお伝えしました。特に、学費の無償化は与党が憲法改正とセットで行おうとしていると、何度も報道されており、ネット上でも違和感を感じ、各方面で異議を唱える人たちがいました。

 

私はむやみな無償化には慎重になったほうがよいという立場で、このニュースを追っていました。今回、日経新聞が伝えたように、22日の自民党教育再生実行本部は、「教育費の負担を軽くする提言」を安倍首相に提出し、その内容が「大学在学中は授業料を免除し、就職後の所得に応じて出世払いする方式」だったということでした。

 

f:id:nakami_midsuki:20170523193503j:plain

 

詳しい情報を探すと、「大学や専門学校などの高等教育の費用負担を2020年度から本格的に軽くする目標を示し、財源に国債を充てることも選択肢の一つに明記」しており、どうやら参考にしたのは「大学授業料の出世払いはオーストラリアが導入している。後払いする点で貸与型の奨学金に似ている」という点だそう。

 

いったい、この出世払い方式は、いつぐらいから話し合われていたんだろうかと、調べていたところ、次の記事を発見しました:

www.nikkan-gendai.com

 

以下、少々長いですが、経緯を知るのと記録のため、転載させて頂きました。

 

教育無償化はウソ 自民が大学授業料“出世払い”提言のア然

2017年5月16日

 

 安倍首相が「憲法改正で高等教育を無償化する」と唐突に言い出したが、一方で、自民党教育再生実行本部が高等教育に関して別の政策を近く提言するというから訳が分からない。

 

 教育再生実行本部がまとめている案は、大学の授業料を国が一時的に肩代わりして、支払いを卒業後に先送りできる新制度をつくるというもの。日本学生支援機構の貸与型奨学金とどこが違うのかと思うが、機構の既存制度が月額3万~12万円程度であるのに対し、自民党案は「在学中は授業料を国が立て替え、学生は払わない」という。返済も機構では、貸与終了から7カ月後に始まるが、自民党案では、卒業後、収入が一定額に達するまで猶予する。“出世払い”というやつだ。

 

 いずれにしても返済義務があり、安倍首相の言う「無償」ではない。自民党内では無償化の財源をどうするのかなど、否定的な意見が根強いからだ。元来、自民党は教育無償化に消極的で、民主党政権時代の高校無償化を「バラマキ」だと批判、政権奪還後に所得制限を設けたほどだから、「高等教育無償化」なんて本気でやるわけないのだ。

 

■「前提が間違っている」

 加えて、自民党案は現実から乖離した“時代遅れ”の政策だ。簡単に「出世払い」というが、年齢を重ねても給料がほとんど上がらないのが今の現実。日本学生支援機構奨学金を返済できない事例の激増が社会問題化しているのに、若年世代の借金をさらに増やすつもりなのか。サラリーマンは給与天引きで返済という有無を言わせぬ制度でもある。

 

 経済評論家の斎藤満氏がこう言う。

 

「出世して給料が上がるという前提が間違っています。今や大卒の4割が非正規雇用のうえ、正社員になれたとしても昇給する保証はない。実際、正社員の所定内給与は上がっていません。返済時期を猶予したところで、いつ返せるようになるかもわかりませんよ。結局、ローンなのですから、結婚できず、子どもも持てない人が増え、少子高齢化が加速するばかりです。教育国債の話もそうですが、政府や自民党の『教育』に対する考え方は、あまりに場当たりでご都合主義です。憲法改正のためとか、教育費のためだからと財政赤字を正当化するとか、『教育』を政治の材料に利用している。本気で学生のことを考えてなどいないのでしょう」

 

 ホント、ろくでもない政党だ。

 

(教育無償化はウソ 自民が大学授業料“出世払い”提言のア然|政治|ニュース|日刊ゲンダイDIGITAL)

 

「教育無償化がウソ」かどうかは置いておいて、日刊ゲンダイの筆者や齋藤満氏が指摘するように、出世払いは結局、この方式の制度を利用した人にとっては、返済義務のある借金にしかなり得ません。卒業後、給与が一定額に達するまで支払いを猶予したとしても、ニュース「奨学金返還月額3分の1に 期間延長で負担軽減 」(共同通信 47NEWSなど) - 仲見満月の研究室で書いたように、一部が免除されることがない限り、トータルの返済額の負担は変わらないでしょう。昇給が前提となっていますが、よほど好景気が来ない限り、給与はアップしない世の中になってきています。

 

財源の確保として、国債に手をつけることが視野に入っているあたり、はっきり言って、日本の国には本当にお金がないんだということを、改めて実感させられました。結局、借金を増やすしか、学費負担を減らす方法はないんでしょうかね…。

 

 

2.返済型奨学金を受けた学生の実態や学費免除・学費自活の実例等まとめ

今回のニュースと関連して、返済型奨学金について調べました。すると、在学の段階で、アルバイトで生活費や授業に必要な教科書や道具を揃えようと働くのに時間をとられてしまう学生は、たくさんいることが分かりました:

 

生きるために働きすぎて、勉強ができず、大学の試験に落ちてしまい、留年したせいで日本学生支援機構に返済型奨学金を止められてしまい、生活自体が成り立たなくなって、大学を中退せざるを得なかった大学生もいます。

 

以上のような記事を読んで、私が大学・大学院へ進学しようかと進路に迷った人がいたら、立ち止まって考えて頂きたいことがあります。それは、自分のその時の経済状況や適性を熟慮して、進路を選択することです。説明は、専門職大学の創設に関する私見~キャリアの多様性にける「学位」授与の重要性~ - なかみ・みづきの灰だらけ資料庫(書庫)の「五、まとめ職業訓練に特化した専門職大学の卒業者に学位を与える重要性

」に譲りますが、一~四までに日本の学校教育法の内容に照らし、高等専門学校や短期大学、大学・大学院等の条件を満たした時に与えられる資格としての「学位」や、それに準ずる「称号」の扱いについて、詳細に書いて整理していますので、合わせてお読みいただけたらと思っています。

 

既に、返済型奨学金が打ち切られそうで悩んでいる方がおられましたら、【2017.5.23_2025:リンク切れ確認】修士課程で留年した院生の経験談~成田ずみ『大学院生のブログ』より~ - 仲見満月の研究室の「4.補足:留年時の日本学生支援機構の返済型奨学金の打ち切りの話」にサイトぺ―ジや情報をまとめました。ご参考までに、ご覧ください。

 

しっかり情報を集めて熟慮した上で、両親に勘当され、自分の夢を実現するため、突き進む。そんな逞しい院生芸人・たかまつなな氏は、「お笑い界の池上彰」となるべく、2つの大学院修士課程で研究を続けるべく、クラウドファンディングで納付金を募りました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

また、医学部限定ですが、フォロワーの方に授業料の免除や補助などの制度を色々と教えていただきました。【2017.5.13_0210追記】高等教育に対する利益の見方についての一考察~財政制度等審議会と『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』から~ - 仲見満月の研究室の「2.嘘つきアーニャの真っ赤な真実の社会主義国家に見える高等教育とそれに対する利益の見方の違い2017511_2336追記」の追記部分でまとめて掲載しました。

 

このほか、競争は激しいものの、民間企業や財団等の給付型奨学金の募集があるようです。また、調べて別記事で紹介できたらと思っております。   

 

本記事はここまで、終わりです。お疲れさまでした。

 

 

3.続きの記事を書きました(2017.5.25_2303更新)

民間企業や団体、大学ごとの給付型奨学金や経済的支援制度について、具体的にまとめた週刊朝日のニュース記事を取り上げました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

↓いいね!だったら、ポチッとお願いします。

にほんブログ村 大学生日記ブログ 博士課程大学院生へ
にほんブログ村