仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

日本語のジャーナルと外国語の学術誌における「二重投稿」に絡む問題~2018年9月の最終週に気になった話題~

本日から10月に入っていますが、先週の9月末に気になった話題がひとつ、ありました。

それがタイトルどおり「日本語のジャーナルと外国語の学術誌における「二重投稿」に絡む問題」です。何かニュースがあったのかは私は知りませんが、Twitterで会話をされている方々を見かけ、気になり、取り上げることにしました。

 

詳しいやり取りや、そこに至るまでの経緯などは、「外国語 二重投稿 - Twitter Search」を見て頂くとして、ざっと、そのポイントをまとめてから話に入りたいと思います。

 

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そもそも、何故に「日本語のジャーナルに(日本語で)発表した論文を、外国語の学術誌に(投稿できる言語に)翻訳して「二重投稿」する必要があるのか?」といいますと、2011年あたりツイートでは、

という意見が見えます。また、日本の理工系ジャーナルで英語の長い要約が必須のところ、あるいは日本語以外の英語か中国語のサマリーを添えるのが必要な人文科学系の学術誌に、私が投稿した経験からいうと、

  • 今どき、英語または当該分野と関係の深い外国語で研究成果を発表しないと、海外の他の研究者に自分の研究の存在を知ってもらうことすら、不可能である

ことが珍しくありません。現在の日本の多くの学術誌では、例えば、同じ内容の原稿を別々の雑誌に投稿することを「二重投稿」とみなし、それは日本語の原稿を外国語に翻訳して投稿しても「二重投稿」とするところが少なからずあるようです。その逆もまた然りとのことで、「二重投稿」を問題視する背景には、分野によっては「業績の水増し」として判断されることがあり、投稿者(とその人が所属する機関)に対する研究の信頼性が揺らぐことがあると考えられます。

(ほかにも、問題はたくさんあるでしょう)

 

とはいえ、日本の研究者(と特に若手)にとって、コンスタントに外国語で学術論文を発表し続けるというのも、負担が重すぎるのではないでしょうか。そういうわけで、少しずつでも、日本語、外国語のそれぞれの学術誌で規定を確認し、各雑誌の「二重投稿」の規制を緩和したり、変更したりすることで、海外に研究成果を発信しやすくすることが度々、話題になっているようでした。

 

研究者によっては、「むしろ、外国語の論文を日本語に翻訳する習慣をつけて欲しいし、そのための団体を作ってもいいくらい」という意見の方もいらっしゃる模様です。院生の頃、研究に行き詰まった時期に、私は抱えていた研究テーマと関係ありそうな分野の論文を片っ端から読んでいたことがありました。その時期に、何本か読んだ論文には、中国で出ている社会学文化人類学の中国語の学術誌掲載のものを日本語に翻訳し、日本語のジャーナルに掲載したものがあったと記憶しております。それらの翻訳論文は、中国語の原著論文を、翻訳者が日本語に訳して紹介した形であり、こうした場合は原著者による「二重投稿」には当たらないと思われます。

(翻訳者にとっては、翻訳や研究紹介の業績になり得ることもあるらしい)

 

 

最後に、言語の異なる学術誌をまたぐ「二重投稿」に絡む問題として、私の身近で起こった面倒な出来事をお話します。ある留学生の博士課程の先輩に起きたことです。

 

その留学生は、出身国の大学院で修士課程までを修了し、博士課程から日本の大学院に入学を果たし、博士号を取得するのを目的に在籍されていました。その方は修士課程の時、出身国の学術誌に査読論文を持っておられ、その国の言語でその査読論文を書かれています。日本に来てからは、修士課程時から引き続き同じテーマで研究をされ、日本の日本語の学術誌に投稿した論文も、修士課程時のものを発展させたものでした。

 

ある日、日本語の学術誌に投稿後の1回目にもらったコメントを読むと、査読者が「投稿者の原稿は、出身国の○○という学術誌に掲載された論文を日本語に翻訳したものであり、二重投稿に該当する」と疑われたことが分かりました。その留学生の指導教員によると、その先輩が修士課程時の外国語論文を、査読者は的確に翻訳して内容把握ができず、詳細が把握できなかったことから、「二重投稿」の疑いをかけられたのではなかろうか、という考えをおっしゃいました。

 

留学生の先輩は、その日本語論文について、新たな調査をもとにした内容が伝わるように書き直し、再投稿を続けましたが、そのうちに博士課程の基本在籍年限3年が過ぎてしまうことになります。在籍を更に2~3年ほど延長し、指導教員の先生が新たなテーマを与え、その研究で査読論文をいくつか得たことで、博士論文をまとめ、学位を得られたと聞きました。

 

三者の私は、留学生の先輩が日本語のそのジャーナルにリトライを続けるうち、狭い分野だったようですから、同じ査読者に当たるうち、「二重投稿」の疑いが晴れないまま、ケチがついてしまったのではなかろうか?という憶測をしています。もし、留学生の先輩の修士課程時代に出身国の学術誌に載った論文が日本語に翻訳され、日本のジャーナルに掲載され、それを該当分野の研究者たちが日本語で読めていたら、もっと状況は違っていたかもしれません。何より、本人は非常に悔しい思いをされていたかと。

 

この留学生に起こった出来事は、修士課程まで海外で修了し、日本で博士課程に入学して学位を取得しようとする人たちには、同じようなことが起こる可能性があります。ケースによっては、外国の大学院で外国語で書いた修士論文を日本語にそのまま翻訳し、日本のジャーナルに日本語で投稿すると、「二重投稿」として疑われることも、なきにしもあらず、と聞いたことがあります。

 

言語の異なる学術誌をまたぐ「二重投稿」に絡む問題は、私が院生時代に聞いた話だけでも、厄介なものでした。論文投稿をされる皆様におかれましては、くれぐれもお気をつけてください。

 

英語の論文作成に役立ちそうな書籍をピックアップして、おしまい!

 

 

 

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