仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

論文に関する意外で素朴な疑問~「博士論文とジャーナル論文の9つの違い」(Editage Insights)~

<素朴な疑問を解きほぐす>

  • 1.はじめに
  • 2.「博士論文とジャーナル論文の9つの違い」(Editage Insights)の内容から見る両者の具体的な違い
  • 3.最後に~その他のことで注意すべきこと~

1.はじめに

今まで、本ブログでは、博士論文とジャーナル論文(主に投稿論文に関してのこと)を、次のような記事で取り上げてきました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

他にも触れた記事はたくさんありました。上記2件の記事では、ざっくりと、「研究分野や研究室によって、暗黙の基準があり、例えば国内の全国レベルのジャーナルに2本、国際レベルのジャーナルに1本、掲載されて、やっと博士論文を書く基準を満たす」とか、「それらの掲載論文を組み直して、加筆・修正して、新たに出すのが博士(学位)論文となる」ということを書いた記憶があります。

 

実は、博士論文の査読が通って、博士号取得者になった後も、ポスドクや非常勤講師、大学教員や研究員になっても、研究成果をジャーナル論文の形で発表し続けること。それが、現在はプロの職業研究者として、課された義務であると私は考えております。

(一応、今の日本はまだ、専任の教員と研究職員とが職業的に分離されていないことを前提とした認識に立ってお話しております。)

 

ここで、素朴な疑問なのですが、「博士論文とジャーナル論文って、一体、どこがK違うんだろう?」と首をかしげる方も、いらっしゃるかと思います。ちょうど、論文翻訳会社のエディテージのwebメディアに、この疑問の答えが出ていました:www.editage.jp

 

というわけで、今回はエディエージ・インサイトのオンライン記事をもとに、博論とジャーナル論文の具体的な違いについて、紹介させて頂きます。

 

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【2017.9.10_1330追記】江戸後期に最先端の「青」を生み出したドイツの錬金術師~「若冲の青」を再現 豚レバーで世界初の人工顔料(日経新聞 from 日経サイエンス、2017.10)~

<本記事の内容>

  • 1.はじめに
  • 2.「若冲の青」を再現 豚レバーで世界初の人工顔料(日経新聞 from 日経サイエンス、2017年10月号)の内容
    •  2-1.その色は錬金術師の工房で生まれた
    •  2-2.プルシアンブルーを再現する 
    •  2-3.プルシアンブルーと江戸後期の日本
  • 3.最後に 
  • 4.余談:現代の「錬金術師」である化学系の職業研究者の処遇(2017.9.10_1330追記)

1.はじめに

「18世紀の江戸、裕福な商家の問屋出身だった」、「朝鮮通信使の宿泊する相国寺の僧侶と親しく、その影響か、朝鮮王朝時代の絵師のユーモラスな虎と、同時代に似た画風で可愛らしゅう見える虎を描いている」、「アラフォーの頃、同年代の末弟に家督を譲って、自分は早々に隠居して、昆虫や動物など生物の絵ばかり描いていた」、「実は、京都の町年寄として、錦市場の再開をめぐって、積極的に介入しており、それなりに仕事関係の案件でも動き回っていたがことが、昭和初期に判明した」…。

 

以上が、近代に近づいた江戸期の京都で、絵師をしていた伊藤若冲に関する知識です。だいたい、学部時代以前から続いていた「伊藤若冲ブーム」により、展覧会が日本各地で開催され、出かけた特別展で私が聞きかじったり、伊藤若冲 - Wikipediaのページで閲覧したり、その程度の知識しか、私はビジネスを仕切りつつ、リアルなようでいて、時にユーモラスな画風の絵師だった、この男については知りません。

 

近現代の日本の絵師では、幽霊画などで有名な河鍋暁斎と並んで、気にしていたのが、この伊藤若冲でした。はてなポータルを今週末、眺めていたところ、その気にしていた片方の絵師の使用顔料を再現してみようではないか、というオンラインニュースが話題となっておりました:
www.nikkei.c

 

実はその数日前、Twitterで「日経サイエンスの小特集には、伊藤若冲の昆虫絵画の作品についても、専門家の対談記事があるらしいよ」とツイートした方がおりました。前者の顔料は美術史×化学、後者は美術史×昆虫学!面白いではないか、ぜひ読もうと、杖をついて痛む脚を引きずり、書店へ行って、日経サイエンスの10月号を買ってきました:

 

 

件の「「若冲の青」を再現する」特集は下の扉ページ、左下の魚のルリハタのプルシアンブルーという色について、人工的に再現しようという試みでした: 

f:id:nakami_midsuki:20170909205348j:plain

(画像:『日経サイエンス』2017年10月号、p.55) 

何やら難しい構造モデルの画像つきで、 内容がスムーズに頭に入ってこない内容でした。そこで、本記事では、「「若冲の青」を再現する」日経サイエンスの記事について、紹介した先の日経新聞のオンラインニュースを通じて、「若冲の青」は一体、何を材料にどうやって再現されたのか、迫ってみたいと思います。

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【告知】note.muに「【書評】大学教員の冷汗と狂喜の日々に憧れて~漫画『あくびカレッジ』~」投稿

今まで、弊ブログの宣伝やツイキャスの朗読のお知らせをしていた「note.mu」について、「仲見満月の「分室」」として整備しようかな、と考えております。このブログの右サイドメニューの上から2番目、「資料庫(書庫)と分室」のところに、新たにリンクを作りました。

 

整備の第1弾として、次の大学教員のコミックエッセイのレビューを投稿しております:

 

あくびカレッジ (クロフネコミックス)[Kindle版]

 

レビュー記事は、次の2件です:

note.mu

note.mu

 

マガジンとして、2記事をまとめた場所も作りました↓

note.mu

 

お手すきの時にでも、お読みいただけたら幸いです。

 

まだまだ、note.muを使いこなせていなくて、少々、不便しております。例えば、私の今までのブログ記事は4000字を軽く超えるので、「ノート」の記事の中に、その記事の見出しをもとにした「目次」や「コンテンツ一覧表」を作り、目次の項目をクリックすると、その見出しのあるURLまでジャンプできる機能があると、読者の方にとっては便利で親切だと認識しております。

 

もし、上記の「目次」問題について、お詳しい方がいらっしゃれば、ご教示頂けますと大変ありがたいです。

 

皆さま、投稿した書評記事とともに、「分室」のほうも、どうぞ、宜しくお願い致します。

 

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