仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

北京航空航天大学の大学院であった #MeToo の内容と #WoYeshi ~「中国、大学教授がセクハラで停職処分 元教え子が告発」(AFP通信)~

<#MeTooから#WoYeshiへ>

1.はじめに

週末、様々なことをしながら、各ポータルサイトのニュースをチェックしていたら、中国の大学で起きたセクシュアル・ハラスメントの告発に関するニュースを目にしました:

www.afpbb.com

 

ハラスメントが起きたのは、中国の宇宙開発で活躍する人材を輩出しており、国家重点大学にも選出された、科学技術で優れているとされる北京航空航天大学(北京航空航天大学 - Wikipedia)。その大学院の博士課程に在籍していた当時の女子院生が、12年前に「教授に性行為を強要されそうになったことを、中国版ツイッターTwitter)の「「ウェイボー(微博、Weibo)」に投稿し」、大学側は告発を受けて調査し、「同教授を停職処分に」したことを発表しました。

 

本記事では、中国で起こった大学でのハラスメント告発の事例として、今回の報道内容をお伝えするとともに、米国で起こった「#MeToo」というハッシュタグを使った運動を受けて、告発した女性が「ウェイボー(微博、Weibo)」において「#WoYeshi」のタグをつける動きを始めたこと等を詳しく、紹介したいと思っています。

 

f:id:nakami_midsuki:20180115194051j:plain

(イメージ画像:今回のニュースおよび本記事の内容とは関係ありません)

 

 

2.北京航空航天大の大学院であったセクハラの告発について

まずは、冒頭で述べた航空航天大学の博士課程で起こった、セクハラおよびその告発の概要をオンラインニュースで、見てみましょう。

 

中国、大学教授がセクハラで停職処分 元教え子が告発

2018年1月13日 16:50 発信地:北京/中国

 

【1月13日 AFP】中国の著名な大学の教授が、元教え子からセクハラを告発された一件がネット上で広がり、停職処分となった。

 

 北京航空航天大学(Beihang University)は11日、陳小武(Chen Xiaowu)教授に対するセクハラ被害の告発内容を調査し、同教授を停職処分にしたことを発表した。

 

 陳教授のセクハラ疑惑が明るみに出たのは今月。陳教授の下で博士課程に在籍していた女性が、12年前に同教授に性行為を強要されそうになったことを、中国版ツイッターTwitter)の「ウェイボー(微博、Weibo)」に投稿したことがきっかけだった。

中国、大学教授がセクハラで停職処分 元教え子が告発 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

今回、告発の経緯とセクシュアル・ハラスメントの内容をまとめますと、

  •  北京航空航天大学(Beihang University)は11日、陳小武(Chen Xiaowu)教授に対するセクハラ被害の告発内容を調査し、同教授を停職処分にしたことを発表
  • 「陳教授のセクハラ疑惑が明るみに出たのは今月」だった
  • セクハラ疑惑は、「陳教授の下で博士課程に在籍していた女性」によって、「中国版ツイッターTwitter)の「ウェイボー(微博、Weibo)」に投稿」されたことがきっかけ
  • 告発した女性は、博士院生の当時、今から「12年前に同教授に性行為を強要されそうになった」ことを呟いた

ということになります。

 

「ウェイボー(微博、Weibo)」は、米国のTwitterが使えない中国において普及している短文投稿できるSNSなサービス。数年前には、誘拐や連れ去りの事件では、情報が投稿され、被害者が救出されたことで、一時期、日本のネットニュースでも話題になっていました。2016年5月に私が就活の採用試験で上海に行き、現地の日本人の集住地区のスーパーマーケットの日本語の掲示板を見ると、「微博」でセールや安売りの情報発信が行われていることが示されていました。米国企業発のTwitterサービスが使えない大陸中国において、”微博”はAFP通信が伝えるように「中国版Twitter」として普及しているサービスのようです。最近、中国でも活動し、”老師”(先生)の尊称を付けて呼ばれ、多くのファンを持つ、セクシー女優・蒼井そらさんも、”微博”で情報発信を行っている日本人の一人と言ってよいでしょう。

 

その”微博”で、今回、セクハラを告発した女性は、「現在、米国に住んで」おり、次のような経緯があって、SNSで行動することを決めたそうです。

 セクハラへの抗議運動が大きく広がるきっかけとなった、被害を訴える投稿が相次いでいる事態を初めて目にしたときは「心の中で、me tooという声がした」と心情をつづり、中国国営英字紙・環球時報(Global Times)に対して、陳教授が他の学生1人を妊娠させていたことを知り、行動を起こすことを決意したと語っている。

中国、大学教授がセクハラで停職処分 元教え子が告発 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News、下線部は仲見によるもの)

引用部を読むと、大学にセクハラで処分をされた陳教授は下線部のように、「他の学生1人を妊娠させていた」ことから、他の学生にも性的な関係を迫ったり、強要していたりしていたことが示唆されています。

 

現在の日本における大学や大学院では、実際に所属していた私のイメージでは、弊ブログでお伝えしてきたように、所属機関自体が資金難であれば容赦なくリストラされ、学内の様々な業務に駆り出されてこき使われている様子があり、教授の社会的権威は20年ほど前と比べるとかなり低下しているように思います。

一方の中国では、ここ十年近くは、学生が授業アンケートで大学教員を評価し、評価の低い先生はクビになる可能性が出てくるといった、厳しい状況になってきています。それでも、日本の現在の教授より、中国の大学や大学院の教授は権威的な存在である、と中国人留学生から聞くことがありました。日本以上に、中国では人間関係によって、弟子の将来が左右されることがあるようで、教授の社会的な地位はだいぶ異なると思われます。

 

そういった中国の教授が学生に対して持つ力の大きさは、性的な関係を迫られて妊娠したとしても、女子学生は断ったり、大学側に訴えたり、できるようなものではないほどのものだったと考えられます。また、”微博”で陳教授の過去のセクハラを告発した女性が行動できた背景には、その人が中国国内に留まったままではなく、米国という「外国」に行っていたことも大きく影響していたのではないでしょうか*1

 

 

3.英語の #MeToo から #WoYeshi へ

もちろん、今回、陳教授のセクハラを女性が告発した背景には、米国のSNSを中心にして始まった、「#Metoo」のタグを付けて過去に受けたハラスメント行為を告発する、抗議運動の大きな波があったからでした。女性は告発するに至ったきっかけのひとつについて、次のように答えました。

 

現在、米国に住んでいるこの女性は、他にも被害者とみられる数人の証言を集め、セクハラを告発するハッシュタグ「#MeToo(私も)」運動に触発されたとして、中国語訳のハッシュタグ「#WoYeShi」を付けて投稿。

 セクハラへの抗議運動が大きく広がるきっかけとなった、被害を訴える投稿が相次いでいる事態を初めて目にしたときは「心の中で、me tooという声がした」

中国、大学教授がセクハラで停職処分 元教え子が告発 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

と、語っています。

 

この抗議運動で、告発をする時に付けるハッシュタグ「#MeToo(私も)」は、英語による表現で、私は日本語によるTwitterFacebookで目にすることがありました。女性はこのハッシュタグに「触発されたとして、中国語訳のハッシュタグ「#WoYeShi」を付けて投稿」したとのこと。「#WoYeShi」は中国語の発音記号をアルファベットにしたものと思われます。中国語の四声が付されていないため、正確な漢字表記は分かりませんが、おそらく、私が漢字変換するなら、”我也是”(私も~です)と表現するでしょう。

 

国内では、人民に対する言論の自由や、情報を得ることに厳しいと言われる中国ですが、一方では、先述したように、”微博”を通じて事件に関する情報が集まり、事態が好転することがありました。海外からのアクセスで”微博”にハッシュタグ「#WoYeShi」のを付けて投稿された短文は、一人の米国の中国人女性が始めた小さな行動かもしれませし、中国国内では、なかなか、大きなセクハラ抗議運動にはならないでしょう。最初は、海外に出た中国の人々からの投稿が続き、ひょっとすれば、将来的に中国国内で”微博”に、このハッシュタグが付され、過去に受けたハラスメント被害を告発する動きが静かに動いていくかもしれません。

  

 

4.最後に

以上、 北京航空航天大学の大学院で、陳教授が今から12年前に起こしたセクハラについての告発とセクハラ行為と大学側の処分、そして、今は米国にいる告発者の女性が、ハッシュタグ「#MeToo」を付けるセクハラ抗議運動を背景に、自ら「#WoYeShi」に中国語訳したタグで”微博”でセクハラを告発する決意とそれまでの経緯をお伝えしました。

 

これから、「#WoYeShi」運動はどうなるか、未知数なところが大きく、私にはどの程度の社会的なうねりになるかは、まったく読めません。それでも、告発者の女性が始めた動きが少しずつでも広がっていけば、と思っています。

 

おしまい。

 

 

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