仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

文系大学院の博士課程に進もうと思うなら読むべき本~岡崎匡史『文系大学院生サバイバル』:その2~

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インパクト、大きいです。本書の紙書籍版の帯です。下の記事「その1」のアイキャッチ画像が白く、地味に感じたので、その2は帯の方にしてみました。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

そういうわけで、今回は上のリンク記事に引き続き、岡崎匡史氏の『文系大学院生サバイバル』レビューのその2をお送り致します。

 

3.本書の内容紹介:その2

 3-1.アメリカの留学先での学習法と研究技術の磨き方(第7章)

「その1」の準備編を乗り越えて、留学先のアメリカの大学院へやって来たら、ここがまた新たなスタート地点。この7章で書かれていることは、第8・9章の論文執筆のベースにもなる、すべて大切なアドバイスになっています。なので、箇条書きで今回も列挙していきます。

  「百科事典の効用」:

 アメリカの大学院の授業で書くペーパーのトピック探し。それから、英語の学術的な書式を学ぶうえでも、現地で英語の百科事典を引いて、課題に取り組むことは重要。おすすめは、『ブリタニカ百科事典』とのこと。

  「プレゼンテーション」:

 ペーパーを書けるようになったら、今度はプレゼンテーション対策。英語にハンデのある留学生は、事前に発表原稿を作っておいて、さらに質問にも答えられるように事前準備を練っておくこと。とにかく、正確で整った英文法に従うこと。

  「書評を読む」:

大量の課題を出されるアメリカの大学院で、大量の本を読まなければならない。学術の動向を知るため、そこで書評を読んでその概要を把握しておくこと。たいていの学術雑誌には、新刊書の書評が載っているので、それに目を通しておくことが、授業でも鍵になるそうです。ちなみに、これは日本の文系ジャーナルにおいても、新刊の書評が出ているので、定期的にチェックしておき、自分の肥やしにしましょう。

  「教科書の買い方」:

「狙いは優秀な中古品」ということで、線が引いてあったり、メモがしてあったり、そういった学術書を狙って、勉強がスムーズにいくようにしよいうというもの。ちなみにこの学習は、私も院生時代にやっていました。

  「速読術」、「速読分類法」:

速読してもよい本、してはいけない本、読書会を仲間内で開いて丁寧に読んでいく専門的で古典的な名著。このように分類したうえで、情報を脳内に蓄積し、より速読できるように力を蓄えることが重要だということです。

  「統計学 アメリカ人にも頭痛の種」、「行動科学革命と社会科学」、「科学とキリスト教

とにかく、今のアメリカにおいて、統計学は諸々の学問において、重要性を増しているので、アメリカに留学する人は統計学を学べ!ということを説き、統計学を基本から学べるサイトを紹介。そして、

という意味でも、少し読んでいて勉強になりました。

 

 3-2.日本での博士論文と論文投稿の心得(第8~9章)

博士課程に入学する人たちの最大の目的である博士号を取得し、その後、研究者として身を立ていくためのベース・論文を生産していく方法と思考技術を示したのが、第8~9章です。第8章が先になっているのは、おそらく、筋の通った博士論文の構想を先に立てるため、ベースとなる技術を説いているからだと考えられます。それでは、各章の内容説明に行きましょう。

  3-2-1.第8章:博士論文作成術  

まず、「第8章 博士論文作成術」です。最初の「博士論文のための心構え」からして、要約してしまうと、一年間365日、一日一行も書けなくても机に座り続けることが重要であり、精神的な余裕を持って、周囲の人たちには合コンやゲーム等の「誘惑」を避けてもらい、村上春樹のような作家のように書き続けること。博論の締め切りまで1ヶ月半を切ったら、本書に引用されている以下の115~118ページを広げて読んでもらい、博論執筆の重要性を改めて説くとよさそうです。

 

「文献の探し方」から「新聞の探し方」までの文献探索術については、オンラインのサイト、それから見逃しがちな千代田区立図書館の新聞のオンライン検索まで、ちょっと知っているだけで役立つワザが紹介されています。以前、本ブログの記事で紹介した次の新書よりも、使える文献検索データベースが新しくなっているようです。

「万難を排して論文執筆環境を整える」については、本章冒頭と言っていることと近いので、本記事の紹介では割愛させて頂きます。

 

  3-2-2.第9章:論文投稿術 

はい、 博士論文のもとになる投稿論文について、どうやったら、レフェリーの合格をもらい、査読審査に通しやすくできるのか?というお話です。「論文を投稿しよう!」の

節では、博士号を授与する審査委員の方々を納得させるために論文の査読をできるだけ通す重要性を示しています。

「論文投稿は挫折の連続」では、私も実際に受け取ったことのある査読レフェリーからのコメントが2種類ほど挙がっており、それぞれのコメントの意味すること、再投稿の際の修正方法、あるいは投稿先の変更の判断の仕方が解説されています。「Reject, Revise and Submit, Accept」の節は、投稿論文のプロセスから書き方の本、そして掲載不可や修正の判定を受けた後、再投稿してから査読に通って、実際の論文掲載までかかる時間を、大まかに書いておられます。紹介されていた本は、次のとおり。  

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