仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【2017.7.27_18追記】研究者の研究資金の使い方に対する「締め付け」:前編~ガクシンの特別研究員(DC・PD)の場合とその制度について~

<研究資金のお話:前編>

1.はじめに~最近の出来事と研究者の予算使用の「締め付け」~

 1ー1.最近の出来事

会社訪問や面談を始めながら、なかなか、ゴーサインが出ず、見て頂いている先生の添削が長引く学術論文のせいで、ストレスと緊張状態が続いております。気がつくと、涙がボロボロ出ていて、すすり泣いてしまいそうな衝動にかられます。無意識のうちにかかってしまう緊張状態は、自然と解除されるまで、自分の有意識下では解けません。

 

長時間の散歩や声を上げる大泣き、ツイキャスによるおしゃべりによって、心のストレスを身体的な疲労に変換してやることで、7時間くらいは眠れるようになってきました(キャス主の皆様、こらぼに乱入してしまい、連日、大変失礼しております)。

胃腸の調子もマシにはなっているので、過食気味なほど、食べるようになりました。

 

こうでもして、無理にでも身体を休めるようにし、学術論文のほうは長期戦になると「諦めて」挑まないと、心身が保てません。あと、メンタルの状態が悪い時は、気を鎮めるほうに大きなエネルギーを費やすことになってしまいます。精神的な戦いが発生しているので、ある意味、学術論文と生命を天秤にかけ、生命維持のため、自他の多方面にご迷惑や負担をおかけしております。申し訳ございません。

 

 1-2.研究者の予算使用の「締め付け」

さて、私と同じように学術論文の執筆に精神を削ることのある研究者、特に研究成果を上げることで生計を立てている職業研究者にとって、大きなストレスの原因が研究予算のことです。

 

ちょっと前に話題となった、科学研究費の申請書類の記入がしづらい「ネ申エクセル問題」をはじめ、ぶつかるのは研究予算の申請書類の作成です。過去の拙マンガ: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

の中の只田先生、それからY先輩が捕まえて来てやっと向き合うボス先生をはじめ、一部の研究者にとっては、申請書類を作成する段階から、「もう、嫌だ~」という逃避は始まります。

 

申請しないと、予算獲得の可能性自体がゼロですから、大学教員、それから日本学術特別振興会に認められた特別研究員のDC・PD(以下、ガクシン特別研究員)の人たちほか、科研費が欲しい人たちは頑張って申請が通るように書類を準備し、提出します。無事、申請が認めらえて、国から研究予算が支給されることになった、とします。実は、ここから先も苦難は続くのです。

 

研究予算を受け取って、研究に必要な器具や装置を買ったり、資料を購入したり、学会の全国大会やシンポジウムでかかった交通費や宿泊費を支払ったりします。科研費の場合、大学・大学院や研究所等を通じて申請する場合が多いそうですから、予算管理の事務的な預け先も、所属先の担当部署になるようです。大学教員やガクシン特別研究員の場合、所属学部事務室の会計課が一般的に研究予算の管理を担当します。先生や特別研究員が様々な用途に使いたい場合、予算使用に不正がないか、使途明細に関する書類、前払いのケースでは使用計画を提出て、承認を得たら所属先から研究者の銀行口座に振り込まれます。後払いのケースでは、先に自費で買った物品等の領収書やレシートをとっておき、部的証拠として提出して、かかった金額分を研究費用から後払いの形で受け取ります。

 

何も科研費に限った話ではなく、民間企業や財団の助成金が下りて、その研究資金で必要な支払いをする際も、同様に所属先の大学や研究所の会計課等に資金を移管して、管理をさせる中で、上記のような資金の前払い・後払いには、基本的に手続きが必要となります。明瞭な会計業務が事務と研究者側で行われるからこそ、次のような、

院生が獲得した助成金をめぐる問題~人力検索はてなの質問から~ - 仲見満月の研究室

院生の助成金申請書類の作成過程~院生獲得の助成金使用問題の補足~ - 仲見満月の研究室

の申請者以外の者による研究資金の不正使用の疑いがあれば、すぐに事実を確認することができるのです。

 

透明性を高める会計作業のやり取りは、適切な研究資金の使用のために必要なことではあります。しかし、時に透明性を高めようとして、研究資金の使い方を厳格化すると、出てくる問題があります。

 

今回は、ガクシンの特別研究員および、大学教員にスポットを当て、研究資金の使い方を厳格化によって起こった問題を取り上げ、科研費を含めた研究予算の管理の程度について、考えてみました。 

 

 

2.ガクシンの特別研究員(DC・PD)のパターン

まず、ガクシンの特別研究員って、何のことか分からない読者もいらっしゃると思いますので、説明します。ガクシン、つまり独立行政法人日本学術振興会という文部科学省の外郭団体がありまして、そこが日本の学術研究の発展の一つである特別研究員制度の審査に合格し、国から出される資金で研究を行う人たちのことです。

 

ガクシンの特別研究員は、2種類があって、

 ①DC:博士課程在学生向け、月々の生活費(「研究奨励金」)20万円×2~3年

    +研究費(科研費)年間100万円

 ②PD:博士号取得者向け、月々の生活費36万2000円×2~3年

    +研究費(科研費)年間100万円

と、ざっと上記のような資金を国から支給されて、研究業績を上げる責務が課されます。なお、申請する前には、申請者の受け入れを行う研究機関や施設、団体の責任者が必要となります。ややこしいことですが、特別研究員はたいてい、受け入れ先の責任者のいるところに詰めて普段は研究活動を行いますが、正式な所属は、ガクシンとなるそうで、生活費や研究費もガクシンを通じて国から出る形となります。

 

そういった詳細は、次の本に出ていました。以下、その本を参考にしつつ、説明してゆきます。

特別研究員になるのはDC・PDとも狭き門であり、スーパー博士院生だった私の先輩・Yさんも博士課程入学からD4くらいまで挑戦したようですが、落ち続けていました。Yさんは同時に応募した別の財団の助成金が下りて、そちらで結果的に博士論文の核となる研究をしていました。が、Yさんの周囲には「類は友を呼ぶ」ように、特別研究員の人たちがDCも、PDもゴロゴロおりまして、うちの研究室に来たときは、特別研究員なりの苦労を愚痴っておられました。

 

その中の一人で、私と研究フィールドと年齢の近かったDCの志田さん(仮名)のことを、お話いたしましょう。

 

志田さんは、日本統治期(以下、日治期と略称)、台湾に日本人によって建造された近代建築とそれを使う現地の人々の生活文化をテーマに、特別研究員のDC枠で合格していました。2010年代半ばの春、日治期の台北の写真、現存する建物ごとの使われ方等の文書を調査しにに行く「在外研究」に行くことになりました。その年度の5月から2か月ほど台北に滞在し、滞在先の大学の研究員の伝手で、その大学の図書館の短期滞在者用の利用カードや、短期の語学留学生向けの宿舎を手配してもらい、意気揚々とスーツケースに荷物を詰め始めたそうです。

 

特別研究員の研究費100万円から、台北滞在中の資料調査にかかる交通費等を出そうと、受け入れ責任者のいる大学の会計課に相談しに行きました。研究費から台北滞在中の諸経費を使うには、どうすべきか?と。会計課の方がガクシン特別研究員の「厳しくなった」後の規則に従って、一回目の相談で次のやり取りがあったそうです。

  • 台北滞在中の毎日の予定を計画表として作成し、証明書として提出すること
  • 滞在先の図書館を使った日は、そのことを示す証明書を出してもらうことや

  …その大学図書館は、短期利用者用カードでフリーパスであり、

   いちいち、図書館側で入館した日時を締める証明書を出せないし、

   何も志田さん側に記録証明は残らない

   →会計課の人は

   「宿舎から図書館までの地下鉄やバスの切符を保存し、証明書にして下さい」

 

計画表はともかく、地下鉄やバスの切符の件は日本のチャージ式の交通系プリペイドカードのSUICAのような、”悠遊卡”なるものがあります*1。その使い方は、

市内に張り巡らされた地下鉄に似た電車のMRTでの移動に、このカードが使われます(”悠遊卡”も、コンビニ等の買い物で使えます)

交通系ICカードの話~大学の先生や院生の使い方とその多様性~ - 仲見満月の研究室

というもので、実際に調査旅行で台北に行ったことのある私は、その利便性に快適さを見出しました。

 

志田さんは当初、MRTで宿舎から大学図書館のあるキャンパスまで移動する予定でした。しかし、MRTを使うなら切符を買わないといけず、その切符はコイン型のトークンと言われるものであり、降車駅の改札を抜けると、たしか回収されてしまったような…。バスにしても、”悠遊卡”ほか、電子化されたキャッシュシステムが進んでおり、切符を買う機会が少ないらしく、逆に切符を買おうとすると不便…。

 

困った志田さんは、その大学の知人の方にお願いし、志田さん専用の図書館入館簿なるものを作って頂こうとしたそうです。どうなったか、お聞きしようとしたら、そのまま会えずに台北に出発されてしまい、会う機会がないまま現在に至っております。

 

また、別のDCの方は、志田さんのお話を聞いて、

  • 特別研究員が出張する場合、「用務を終えましたよ」という証拠を全日程分、出さなければならないという点が面倒臭い
  • 学会やシンポジウムみたいな開催のプログラム等がない場合は、志田さんが大学図書館に行ったというように、用務地に赴いたことが示せる切符でもOK、と規定にあるけれど、それも面倒な点だと思う
  • 外国での資料収集などで、図書館が臨時休館になった日とか、どういう扱いになるのか、事務室を通じてガクシンに聞かないといけないかもしれない

などなど、近年の研究費執行の厳しさや、制度の融通の利かなさに、ブツブツと何かを言い続けておられました。

 

また、特別研究員PDで、近代フランスの区画整理事業を研究されている粂田さん(仮名)のお話では、「基本的に、滞在費等はフランス到着後に後払いだから、行く前に貯金をしておかないといけない」と言っておられました。

 

 

3.その他のガクシンの特別研究員の制度について

ついでに、特別研究員の不便さとメリットについて、書いておきます。

 

 3-1.不便さ(2017.7.27_1845追記)

大学院の広報課を兼務されている先生が、粂田さんに高校生向けの単発の出前授業を頼み、無事、任務遂行後の報酬の渡し方で困ったことがあったそうです。粂田さんによると、特別研究員は日本国内の大学等の研究教育機関の非常勤講師を除き、特別研究員として以外の報酬の受け取りについて、基本的に禁止されているんです、と仰ってました(現在は、異なるらしい?)。割と粂田さんは几帳面、かつ真面目な方だったらしく、出前授業に行ったけれども、報酬はPDの就業既定を理由に、金銭では受け取りを拒否されたとのことでした。

 

で、その先生は、どうされたのか。粂田さんがPD期間を満了し、別の大学の助教に就職した後、再会した学会の懇親会代金をこっそり、その先生が渡せなかった報酬の代わりとして支払われたそうです。

 

もうひとつ、特別研究員が不便なのは、他のところと雇用関係を結べないことだそうです。ガクシンの特別研究員には、福利厚生面で年金に当たる制度はなく、支払えるのは国民年金くらいだそうです。

 

 3-2. メリット

ガクシンの特別研究員のメリットとしては、大学にもよりますが、授業料の免除、授業料相当の奨学金がもらえる、といった特典が存在するようです。このあたりの詳細情報は、先述の『学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書)』の125ページ前後をお読みください。

 

加えて、優秀な研究業績を上げると、Twitterに流れてきた情報では、表彰されたり、返済型奨学金の返済額が大幅に減額されたり、 金銭的な面で助かる制度もあるようです。

 

あと、ガクシンの特別研究員の制度はDC・PD等、申請できる年齢や資格等の制限も厳しくなってきていると聞いております。以下のページでご確認されることをおすすめ致します:特別研究員|日本学術振興会

 

 

4.最後に

以上のように、研究者の研究資金の使い方に対する「締め付け」として、ガクシンの特別研究員の研究費年間100万円を使う場合は、昨今、在外研究として外国に行く場合は、用務の物的証拠を提出することが求められることがあります。几帳面で真面目な粂田さんでさえ、「この証拠を出せ、という厳格化は、証拠を準備するために、滞在先のフランスの研究機関の人たちにも説明しないといけなくて、グッタリしてしまったよ」と仰っておられました。

 

今回はガクシンの特別研究員の例を紹介しました。後編では、大学教員のケースを見ていく予定です:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 

 

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