仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

歴史とモダンな都会~『上海は月の影 皆既日食の上海と蘇州』map05~

<本記事の内容>

1.はじめに

皆様、年度末、いかがお過ごしでしょうか。私は自分のサークルが参加する関西コミティアの新刊準備をしながら、その次の7月のテキレボに委託するバックナンバーや夏の新刊の準備をするという、同時進行をやっております。

さっそく、テキレボ第7回のWEBカタログでサークルページ、既刊のアイテムページを公開しました。ご覧ください: 

仲見研@第7回 Text-Revolutions - Plag!

plag.me

 

その傍ら、読みたかった同人誌に目を遠し、心のバランスを取っています。同人誌の作業を、別サークルの同人誌で癒す日々になっております。先日、公開した「3泊4日ソウルの旅と仲見の思い出~はしゃ『かんこくではしゃぐ。』~ 」しかりで、2~3年に1回は行っていた韓国の旅行記を読み、懐かしんでいました。

 

さて、今回は韓国とは違った意味で、懐かしい上海をめぐる旅行記の漫画です:

 

丸紅アパートメンツプレス『上海は月の影 皆既日食の上海と蘇州』map05

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(表紙)

 

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(裏表紙)

 

装丁のイラストからして、赤系統の色でまとめられ、古い街並みの遠くには、現代都市を象徴する東方明珠の上部が見え、いかにも上海という雰囲気が漂っています。内容は、著者の丸紅茜さん(裏表紙の三目がついた猫よのうな動物)が訪れた体験をベースに、学生の主人公(表紙中央の人物)が、皆既日食を見ようとやって来た上海、立ち寄った蘇州で過ごすフィクション漫画のようでした。

 

本記事では、私の上海体験をまじえながら、本誌の内容を紹介していきたいと思います。

  

 

2.歴史と現代の交錯する上海、そして蘇州を行く

 2-1.歴史とモダンな都会の上海を歩き回る

物語は、2009年7月22日の「今世紀最大」とされる皆既日食の話題で、始まります。冒頭で高校生だったらしき、セーラー服姿の主人公は、クラスメイトたちと共に、皆既日食に高揚感を覚えていました。しかし、肝心の7月22日が近づくにつれて、周囲の学生たちは予定が入っているということ、また、皆既日食の見られる悪石島のツアーは高騰していたことから、真っ白のスケジュール帳を眺め、大学生になっていたと思わしき主人公は、皆既日食の見られるらしいインドや上海の情報を見かけます。折しも、1万円台の上海への旅行パックを発見し、何となく皆既日食を見に行く為、彼女は旅立ちました。

 

「好奇心」を象徴するタコのような動物、三目猫の著者と共に、主人公は夏の上海に降り立って、すぐ豫園に行きます。事前に『地球の歩き方』でチェックしたり、付け焼刃の中国語に不安だったりしたものの、身振り手振りで市内観光を始めました。この豫園は、「明の時代に建てられた庭園 役人が親に贈った庭なんですって」と、著者が解説。実は、就活で上海に行った時、私は豫園に行きたかったものの、帰国前日、外灘を歩き回ったところでタイムオーバーになり、見ることができませんでした。ただ、その周囲をうろついていたので、「みどころは 庭本体より 豫園商城とよばれる 中国建築と 露店のにぎわい」あたりには、ぶつかっていたような気がします。 

 

言葉が通じないし、ぼられないかと最初は心配しまくっていた主人公は、皆既日食までの数日、上海市内を歩き回るうち、気ままに観光してボディランゲージで物を買い、時に疲れれば休むことを覚え、旅を楽しみます。上海万博の前年だったことから、まちのあちこちに工事現場が点在し、万博のキャラクターを面白がるシーンがありました。訪れる場所は、中国の歴史的な通りの遠くに、東方明珠タワーの先っぽが見えたり、また、皆既日食の前日に訪れた超高層ビルの”金茂大厦”の88層観光庁の内部は、主人公が言うように「何てSF的なセンスなんだ」という風景が広がっていたり。上海は、このように過去と未来が同居している都市といえます。なんせ、蘇州に主人公が行く時、利用した交通機関リニアモーターカーがあったんです!世界で唯一、商業的に走っているのは中国ぐらいだそうで、ワクワクしてしまいました。

実際、私が就活に行った2016年5月は、東方明珠の周辺を歩けば、日本の東京並の高層ビルの傍ら、豫園商城などの前近代の建築、外灘の租界時代の欧州近代建築と、長い歴史が層のように重なっているが、不思議と共存しているのが上海でした。

 

何じゃかんじゃと訪れた日本人にとって、作中の言葉どおり「非日常のスケールがでかい」建築物は上海に多く、主人公が呟いた「えげつない金持ちの道楽的な感じ」というのは、言い得て妙なイメージです。確かに私が中国建築の学術書で読み、知った蘇州の庭園なんかも、そういう感じです。

 

 2-2.蘇州を行く

上海めぐりの間に、主人公が訪れた蘇州は、私が知るところでは明代後期、江南地方の文化発信の中心地でした。『三国志演義』や『水滸伝』といった四大奇書で、今日に伝わる版本には、もとが明代後期の蘇州で出されたというものが少なくないようです。そんな蘇州の駅、2009年の当時は質素で日本の空港並みの大きさでした。トイレに関しては、すべての個室の便器の中が繋がり、上流のほうから水などが流れてくる方式…。このあたりの衛生まわりの話は、2000年代後半、フィールドワークで訪れた広東省の自給自足の村を思い出しました。こういったところのある蘇州駅ですが、2017年の建て替えで、なくなってしまったようです。

 

さて、「四角く濠で囲まれた蘇州」は「世界遺産だらけの街」。たくさん庭園がありますが、それらの成立した時代の中国に詳しくても、たぶん、よほどの建築学者で無い限り、見分けがつかなさそうでした。主人公たちは船に乗り、水路をめぐります。「唐代に 白居易が建設した 運河沿いの街並みが 残って」いるためか、蘇州とその周辺には、やたら「東洋のヴェネツィア」があるとのこと。ちなみに、白居易は官僚の仕事として運河建設に携わったと思われ、「官僚かつ詩人」であり、著者の「長恨歌とかエモい」等の解説を聞き、主人公は感嘆しています。水辺は雰囲気があって、心休まる描写で癒されます。

 

 2-3.「上海は月の影」

いよいよ、目的の皆既日食の当日、予報で分かっていたものの、天気は曇り空と雨でした。上海を晴れさせるため、中国政府がミサイルを打ち上げるという話に、リアリティを感じながら読み進めると、主人公たちは外灘を歩き始めます。長江の支流・黄埔江にかかる橋の上で、一行は雨の中、始まった皆既日食を眺めました。

 

「雲の中で 太陽の光が ゆっくりと彩度を 落としてゆく」ところ、連日35度を超えていた気温は急激に下がり、大粒の雨が落ちてきます。傘をさした橋の上は人で埋め尽くされ、午前9時は夕暮れのように暗くなり、「皆既に入った時間はよくわかった」とのことでした。

夜が訪れたのだ

雨に烟って まるで 光るガラス壜が 海の底に沈むように

 (本誌p.42)

そんな詩的な言葉の背景に、かすれ、東方明珠を戴く幻想的な上海が浮かぶように描かれています。

 

皆既日食が終わると、上海は普段の温度を取り戻しました。帰国前、上海浦東国際空港のロビーで、主人公は「日食な、日本国内は全滅だったそうだ」という情報を得ます。中国では、上海の西南に当たる杭州、更に更に西の武漢は晴れたようです。惜しかったとタコのような姿の「好奇心」、そして帰国後の受講生仲間に声をかけられたものの、主人公は終始、満足そうな様子でおりました。

 

 

3.最後に

著者の丸紅茜さんは、今回のmap05を含めて、「丸紅アパートメンツプレス」のシリーズで、ご自身の経験をもとに、フィクション風の漫画を執筆されています。最新作は、ミャンマーの女ふたり旅がテーマだそうです:

alice-books.com

 

また、著者のサイトによると、WEB上で漫画連載を始められたとのこと:

comic-polaris.jp

 

気になる方は、ぜひ、上記のページをのぞいてみて下さい。リアルだけど、ちょっと不思議な丸紅ワールドが広がっています。

 

おしまい。

 

 

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