仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

やはり就職は厳しい文系大学院生~修士の院卒者の場合~

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昨日、Twitterを徘徊していたら、下の記事を発見し、取り上げることに致しました。

ちなみに、この記事を執筆しているのは翌日の午前中です。家族の出勤を見送ったあと、洗濯機を回して洗った衣類を干しましょう!次に、就職活動でサイトで採用選考にエントリーしようと思い、ブラウザ立ちあげたらが再度、目に入ってきたのです。

  

www.j-cast.com

 

このサイト記事の執筆者は、「学生の就活ジャーナリストの第一人者」と私が勝手に呼んでいる、石渡嶺司氏。修士課程で就活しいた私がうすうす、感じていたことをズバリ、指摘していらっしゃる。以下が、その第一ポイントです。

 

情報誌にも特集記事がない 

   例によって、就活の歴史の基本文献、「就職ジャーナル」誌をひっくり返してみましたが、なんと文系大学院生対象の特集は皆無。それくらい、マイナーな扱いでしかありませんでした。

  

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ええ、私も探していましたが、ありませんでしたよ。さらに、上の文章の次にあるように、「学部卒で就職するよりも、院卒のほうが就職に有利になるのでは?」(もちろん修士での院卒)と考える学生に対し、石渡氏は企業側の厳しい言葉を紹介。

 

「昔は『院生イコールレベルが高い』というイメージがありましたが、今はとりあえず院に進む学生が増えている気がします。ほかの学生よりも2年多く親のスネをかじって勉強しているわけですから、むしろ要求するレベルは高くなりますね」(メーカー)

「『大学院卒業』という1行の経歴はまったく重視していません」(広告)

「就職のためだけに進学しようとしているなら、考え直したほうがいいと思いますよ」(金融)

 

そういうわけで、学部生よりも2年間長く勉強したぶん、企業側からすれば高いレベルの力を要求されるようになります。つまり、学部卒の就活より、採用基準のハードルが上がる ということですね。

 

ちなみに、地方公務員の採用試験も同じような傾向があり、京都府など「地方上級」(大卒程度)の上に「院卒程度」の採用枠を設けている自治体もあるので、民間と公務員で就活している修士生の皆さま、お気をつけて!

 

サイト記事では、続けて「学部卒より勝っているか」という項において、2010年刊行のやや古い『大学院生、ポストドクターのための就職活動マニュアル』(アカリク著、亜紀書房)という文系院生向けのマニュアル本を参照しつつ、

 ・ 世間の一部の人は、大学院生に対しえマイナスイメージ

  (『頭はいいけれど腰が重くて行動力がない』、『研究以外には興味がない』、

   『やりたいことしかしない、マイペース』、等)

 ・大学院生・ポストドクターの就活のハードル

  (時間・院卒就活の情報・試行錯誤するチャンスの3つがない)

 ・文系修士卒は、就活において次の4点で学部卒より勝っている必要があること

「入社後の成長が見込まれる」
「学部生にはできないことができる予感がする」
「学部卒の社員より教育の手間がかからない予感がする」
「今いる社員に負けないモチベーションや行動力を持っている」 

 を指摘しています。

 

 

学部時代に文学部の東洋学分野で卒論を書いた私からすると、関わっていた先輩の文系院生は研究室・図書館・自宅をトライアングルみたいに行き来して研究を進め、ときどき、学会大会やシンポジウムで研究報告を行うために発表準備をしている感じでした。

 

正直なところ、そういう毎日を過ごしていたら、上の「学部卒より勝っている必要がある」4つのポイントを自分が身につけられるかと言えば、個人レベルでは非常に困難だったかと思います。(もちろん、精力的に国際学会に出て行って発表し、人脈を築いて高いレベルの修士論文を書かれ、就職なさった方もおられます。あくまで、自分に置き換えての話です)

 

加えて石渡氏は、『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く: <研究と就職>をつなぐ実践』(佐藤裕・三浦美樹・青木深・一橋大学学生支援センター編著、大月書店、2014年)を挙げ、大学院生の就活事情として「人文・社会科学系の修士課程修了者の就職状況は、理学・工学の修士課程修了者、人文・社会科学の学部卒業者と比べて厳しいといえます」と分析されていることを指摘しています。

 

一橋大学の事例についての詳細な分析は、書誌情報へのリンクを貼ったので読者諸氏に本を読んで確認していただくとして、石渡氏が整理した情報では属性以外の問題で、

 

大学院の環境(研究と就活の同時並行、大学教員志望者などが多く情報への疎さからの出遅れ)、専攻・研究テーマと就職の関連(研究テーマが批判的か無関係だった場合に不利と思い込む、自身の専門性を活かそうとする、企業活動に問題意識がある場合に企業を選びにくい)、それから採用側の評価(学部生とは異なる基準で評価)

 

こういった点があるそう。そういうわけで、人文・社会学系の修士修了者(修士卒の人)が就職活動で理学・工学の修士課程修了者や人文・社会学系の学部卒者に比べて、厳しくなるとのことでした。

 

その上で、石渡氏は上記『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く』をもとに、文系大学院の修士ためのエントリーシートの書き方などのポイントとして、「『自分の専門分野についてまったく知らない人の興味をそそるにはどのように伝えたらよいか』を重視して」書くことが挙げられていると紹介。

これは、学部から大学院への進学過程で、人文科学系から文理総合系へと研究分野を変えた私のような人にとっては、特に重要なポイントです(このブログ管理者の経歴については、こちら参照)。

 

最後、企業の採用担当者に文系院卒者について石渡氏は聞いて回り、以下のような見解を引用しています。

 「大学院生だから落とす、というわけではありません。ただ、2歳上でも学部卒と給料は同じです。その扱いで不満を持たないかどうか。それと、大学院に2年行ったことが、単なる逃げなのか、それとも得たものがあるのか、そこはきちんと聞きたいですね」

 

締めとして、石渡氏は「文系大学院生でも、わざわざ自分から不利と思い込まなくてもいいような気が、私はします。」と書いて筆を置いていました。

 

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今回、石渡氏のニュース記事を全体的に紹介する形で、文系大学院の修士修了者の民間での就職活動の実情について書きました。いかがだったでしょうか?

 

ブログで今回の記事を書き、考えていたのは「文系大学院の修士修了者でも、活動できる分野は他にもあるんだけどなぁ」ということでした。

すぐ挙げられる分野では、例えば中等教育分野だと中高の教員、海外の農業技術普及事業で活動する職員(詳しくはこの本)、社会問題を取り上げる文筆家(例えば古市憲寿氏や北条かや氏等)、それを支える編集者等です。そして2000年代後半から活動する在野の近代日本文学者としては、荒木優太氏。

 

なにぶん、私一人で情報収集と執筆をしているので、文章の形にするには時間がかかりますが、少しずつ、上のような文系院卒者の活動を記事にしていきたいと思います。

  

 

長文、ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございました。

 

当ブログでは、読者の皆様より各記事へのコメント、管理人のTwitter@naka3_3dsuki)、ブログTop記事のメールフォーム(記事の一番下)で、ご意見・ご感想や情報、お待ちしております。

 

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