仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

大学教員への問い合わせに関する私の院生時代の思い出~Eメールや郵便物での質問や、取材・講師等依頼で発生する労働の話~

<研究者にもマネジメント事務所が必要かもしれない…>

1.はじめに

今週、もうひとつ、私の周りで気になっていた話題があったので、簡単にまとめておきたいと思います。

 

話題とは、

  • 話し手の研究者の方が質問をするため、面識がなく、連絡をとったことのない年配の研究者へ問い合わせのEメールを送ること
  • テレビ局や番組制作会社、新聞といったメディアから大学教員への取材や研究のアドバイザー的な依頼 

の主に2つでした。ここでは、職業研究者である大学教員への問い合わせについて、その下で院生をしていた私の思い出を中心に話をしていきます。

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2.研究者同士のEメールや郵便物での質問に関する思い出

私が見かけた前者のケースでは、話し手の方によると、日本の年配研究者がメール作成の苦手な方で、手書きの手紙で問い合わせをしてほしいというお願いがあったそう。話し手の方が、今度は海外の研究者の方に質問をEメールで問い合わせたところ、相手の方はご高齢だったにも拘わらず、さくっと返信を送ってくださったんだとか。質問メールを送信してからスピーディーな返信だったようで、フットワークの軽さがうかがえるようです。

 

どうも、英国やアメリカでは海外の研究者からメールを受け取ると、気軽に返信をする研究者の方が私の体感的に、少なくないようなのです。自分の知る範囲の話ですが。

 

実際は、どうなのか?メディアから見た「ガールヒーロー」のイメージを分析した須川亜紀子さんのご研究の本:

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

 

のあとがき部分で、そのあたりの事情が察せられる話があったので、紹介します。

 

かつて、須川さんには、日本の魔法少女ジャンルのアニメ作品を事例に、ガールズヒーローの描かれ方について博士課程で研究をしようと考え、受け入れ先大学院の研究室を探していた時がありました。近いテーマで研究をされている研究者を探し、英国のウォーリック大学の研究者に英語でEメールを送ったところ、「うちでなら、研究の指導ができるかもしれない」というか内容の返信があったそうです。須川さんは、その研究者の研究室に入り、そこで本著のベースになる博士論文を書いたんだとか。

 

さて、私が院生の時、周りにいた退職が近かった60代(当時)の大学教員の2人の方の思い出話をしましょう。 だいたい、今から5~6年ほど前のことです。

 

その先生は、学内メールに自分へ問い合わせが来たり、外部からログイン状況の監視・管理をされるのが嫌だった人でした。その先生が学内メールにログインせず、放置していたところ、学内の様々な部署から来たEメールがメールボックスをパンクさせてしまいました。放置期間はサーバーに負担がかかるほどなので、おそらく数年の間だったと思われます。後日、その先生の部下に当たる助教先生は「メールボックスの放置に関して、大学院の事務室を通じて苦情が来ました。何とかしてください」と、苦言を呈されました。ちょうど、近所の研究室でその先生がゼミ休憩をしていたところ、私のいた教室の後ろの扉が開き、助教先生が入って来られて、上記のようなことを言っておられたと思います。

 

別の60代の大学教員の方には、分野内や大学・大学院の講座内の狭い組織で連絡を取るため、それ用にフリーメールのアカウントを取得。メールが来たら、部下の先生方や弟子の院生に知らせてもらい、彼らにログインしてもらって、モニタを一緒に見ながら自分で送信主に返信を書いていたそうです。この先生のメールアドレスは、半分、この研究室への問い合わせ用としても機能していたんだと、聞きました。

 

日本の研究者で、私の周りのご年配の方には、メール連絡を面倒くさがられる先生も割といらっしゃいました。こういった方々を相手にしていた私は、対面で捕まえて、口頭で連絡できる手段を取ったほうが手っ取り早いこともあって、学部生の時には、大学間連携の授業、いわゆるコンソーシアムの科目を取って、突撃したこともありました。

 

こんな感じで面倒くさがりな大学教員の方々に対し、Eメールではなく、手書きのハガキや封書の手紙で問い合わせるのはどうなのか?というと、私の個人的な経験から、まず、ハガキはやめたほうがいいと思います。往復ハガキにしても、1枚の郵便はがきにいしても、薄い!薄いと、大学・大学院の郵便受けの中で他の郵便物に混ざってしまいがちで、気づかれないことがあります。封書の手紙はケースバイケースで、分厚めのものだったら、受け取り手が気づきやすいかもしれません。郵便物で問い合わせる場合は、なるべく、物理的に分厚くて大きいもので、人目につくブツを送れる連絡手段であれば、周りにも目立ちます。誰かに気づいてもらいやすいでしょう。

(少なくとも、私は大学の事務室に置かれた研究室宛ての郵便受けを定期的にチェックしていた身として、インパクトが大きな郵便物は気づきやすかったので)

 

続いて、電話連絡について。研究室全体の(固定電話の)番号であれば、秘書スタッフや院生が通話に出て、大学教員に繋ぐことがあります。実際、繋いだことのある私は、電話による音声連絡が特性上、不得手でした。それに加えて、修士論文の提出直前に仮眠を取っていたところに事務室から電話で起こされたこともあって、あまり良い思い出はありません…。

 

先生個人の携帯電話やスマートホンの番号絡みの話では、正直、ズッコケたくなることがありました。ウッカリした先生だと、教えて頂いた電話番号にかけたら、スマホに出られたのがご家族だったことがあります。その時、直近で講演会の依頼か何かがあったようで、私の先輩が連絡したところ、ご家族が電話に出られたんだとか。先輩が状況を確認すると、そのご家族は、洗濯機前の汚れ物用バスケットのズボンから着信音が聞こえて、取り出したら、ウッカリ先生のスマホが鳴っていたということです。どこからの電話かと確認したら、ご家族の方が見知った院生さんの番号だったので、安心して出られたんだとか。(ちなみに、ご本人は授業で大学のほうに出勤されていたようです)

 

こういった大学の先生方の傍らにいた私としては、クセのある大学教員への連絡は、本人を捕まえた上で、口頭で要件を伝えるのが確実だと思います。とはいえ、こうした先生方の中には、

  • 勘が鋭くて訪問者を上手にかわして逃げたり(研究室のスタッフが伝言することが続けば、正直に言うと、大変な厄介事になる可能性大)
  • 自分の予定を無視して突撃してきた人物がいれば以降は(当たり前ですが)断固として連絡を絶ったり

される人がいるのは、事前に覚悟されてたほうがよろしいかと。特に、2つ目のケースは、次の第3項にも関連してきます。

 

 

3.メディア取材や講師等の依頼連絡の思い出~受けた人たちは報われているのか?~

第2の話題は、テレビ局や番組制作会社、新聞といったメディアから大学教員への取材や研究のアドバイザー的な依頼に関するご連絡です。「起きた事件や外交問題の話題を取り上げるから、専門家として少し話をして欲しい」とか、「●●の件について、詳しく調べるには、どこへ行ったらよいか」とか、連絡は様々。このほかにも、学会大会や研究会での発表・出演依頼に、市民講座での講師依頼が来ることもあります。

 

取材連絡、 発表・出演依頼、講師依頼と、来た連絡に対応していると、けっこう、時間が取られます。まず、取材を受けるかどうかにはスケジュールの確認をしないといけません。取材を受けるなら、コメントを事前にまとめておく手間も要ることがある。発表・出演依頼を受けるなら、スライドやハンドアウトの資料を作成したり、宿泊場所や交通手段の手配もしないといけません。講師をするなら、受講生向けに講座で取り上げる内容や喋ることを調べて、資料をまとめる必要が生じます。こうした問い合わせや依頼が来たら、以上のようなことを研究者は一人でこなす、あるいは研究室のメンバーに手伝ってもらいながら、急に発生することもある雑務を捌くんです。事前に調べたり、資料を作ったり、そうした作業時間の賃金は謝金に換算されていないこともあるようで…。

 

実際、指導教員のもとに来た依頼について、私は先輩方と一緒に先生の発表や講座で使うスライドやハンドアウトの写真を見て選んだり、道中から会場までのカバン持ちをしたりしていました。依頼への謝金があったとしても、依頼先の大学教員に対してだけ支払われることが大方で、準備を手伝っていた研究室のスタッフには支払いがゼロ円という案件が多かったように記憶しています。振り返ってみると、自分自身の抱えている研究ではないのに作業時間を多く取られ、それなりのクオリティを求められていることに神経を使い、手伝っているのに謝金がないという案件は、多大なストレスになっていたと思いました。

(何も、先生へ来た依頼の手伝いに限った話ではなく、おそらく、今の大学院生も抱えているであろう TAの労働時間超過 と賃金の問題についても、 根っこには同じ原因があると指摘できますが…)

 

大学教員が一人で全部、捌いているケースであっても、問い合わせや依頼をした側が思っている以上に、返信だけで膨大な時間と労力が使われていることだって、少なくないでしょう。その時間と労力に対して、連絡が来た研究者は報われていると感じる人は、どのくらい、いるのでしょうか?

 

そういったことを改めて考えると、芸能人やYouTuber、漫画家や小説家といったクリエイターのように、問い合わせや依頼をしてくる側との間に立って、適切にマネジメントしてくれる存在が、大学教員をはじめとする研究者にも、今は必要な時代なのかもしれません。 今の日本の研究業界を考えると、研究室の院生やポスドクといったメンバーは自分自身の研究のことで手一杯であり、無給で手伝いをしている時間は少ないでしょうし、手伝いをしても精神的に病んでいく人も少なくないと考えられます(実際、私は病みかけました…)。振り返ると、私は学内の予算縛りで秘書スタッフを雇えない先生方については、所属できるならご自身でマネジメントをしてくれる事務所や会社を探してほしかったな、とは感じました。

 

 

4.さいごに

書いているうちに、院生時代の思い出からスライドして、大学教員とその研究室の抱える問い合わせや依頼から発生する労働問題への愚痴になってしまいました。2019年度に入ってから、学術業界の問題をテーマにした記事は書くのを控えていたものの、やはり、私はどこかで今回のような話にわだかまりを抱えているようです。ただ、わだかまりを抱えていても仕方ないため、せめて、代替案のようなものを示したいと考えました。研究者もマネジメントしてくれる存在が必要だと言ったのは、代替案のようなものです。

 

ちなみに、大学院を出てから今回のような思い出話をすると、ほかの研究機関にいらした方々に「大変な経験をされてきたんですね~」 と言われることがありました。実際、心労が大きかったことは否定できません。私もですが、クセのある先生方による、先輩方や助教先生たちの振り回されっぷりも、外から見たら凄まじかったのかも…。

 

本記事で日本の研究者の方に問い合わせをすることに対し、躊躇された方に、一言。本記事のようなクセのある大学教員は、私の周りにいた一部(だと思いたい)の研究者だけですので、その点ご注意ください。ただ、昨今の日本の大学教員は膨大な雑務をこなしながら、研究時間を捻出し、業績をあげておられる方が少なくありません。

 

できれば、時間を可能な限り、相手に取らせないようにするとか、問い合わせ内容をA4一枚程度の簡潔な文書にしてスピーディーに把握できるように工夫するとか、して頂けると、元院生で大学教員の手伝いをしていた身としては、有り難いです。あとは、連絡を取る段階で、返信の速さやフットワークの軽さから、一緒に仕事ができるか等、相性のよさそうな方か、判断材料にしてみて下さい。

 

おしまい。

 

 

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