仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

レビュー

大航海時代と搾取される南イタリアと~池上俊一『パスタでたどるイタリア史』~

季節に関係なく、なぜか私は週一回以上、麺類を食べたくなります。ラーメン類とパスタ類は特に群を抜き、一週間のうち、両方を一回以上食べたこともあったと思います。そんな食べ物について、今回はパスタを通じて見たとある国の歴史をまとめた本を1つ、紹介…

「その、すこやかならざるときも」~『あの街で二人は ‐seven love stories‐ 』~

夏休みに突入して、約1週間。花火大会に行ったり、旅行に出かけたり、帰省したり…。今回は、ちょうど2年ほど前の7月、夏休みに行ってみたいと私が読んでいて、考えた本をレビュー致します。 あの街で二人は: ‐seven love stories‐ (新潮文庫) posted with …

「世間」の眼差しと子ども~石川結貴『ルポ子どもの無縁社会』~

本格的な夏休みに突入して、数日。ポケモンGoを(いろいろ試行錯誤して)始めた私の横で、幼稚園生くらいの姉妹らしき女子が2人、それぞれが丈の長い虫取り網とプラスチックの虫かごを持って、同じ虫取り道具を持った父親と共に、セミを捕まえようとしてい…

Japones, Japonesas y futbol~川内イオ『サッカー馬鹿 海を渡る』~

最初は後輩が部室に置いていて、そっから借りた後、とうとう、自分で買ってしまったサッカー仕事人たちのインタビュー&エッセイ集を紹介です。 サッカー馬鹿 海を渡るーリーガエスパニョーラで働く日本人 posted with ヨメレバ 川内 イオ 水曜社 2009-01-14…

コミュ障の地元女子大生の恋愛と成長~シギサワカヤ『溺れるようにできている。完全版』~('19.6.30、1時台の追記)

抜き差しならない、そして面倒な状態へと進んでゆく、男女の重い関係を描かせたら、おそらく右に出る者はいない(と私が勝手に思っている)、漫画家のシギサワカヤ氏。 シギサワカヤ『溺れるようにできている。完全版』白泉社、2015年 本作は、様々な出版社…

文系女子から見た理系男子の生態@京都~瀧羽麻子『左京区七夕通東入ル』~

Top画像を京都の祇園祭に変えたところで、思い出した小説がありました。その作品は、京大出身作家としては珍しい(特に2000年代以降の有名どころは男性ばかり)、女性の書き手による小説となっています。 研究に没頭し、大学院へと進学していく理系の男子学…

【2017.4.25_1915追記】やさしく紡ぐ時間と絆~「イブの時間 劇場版」~

春の学会申し込みが終わり、一息つこうとレンタルDVDを見ました。 「イヴの時間 劇場版」 [Blu-ray] posted with ヨメレバ 佐藤利奈 角川映画 2010-07-28 Amazonで購入 Kindleで購入 リンク先にもありますが、ストーリーは…近い未来、ロボットが実用化されて…

【2017.4.25_1855追記】近未来京都で青年の再生を描くSF映画~WIT STUDIO「HAL−ハルー」~

「進撃の巨人」の制作スタジオであるWIT STUDIOが制作している映画「HAL−ハルー」を見てきました。 たぶん、webアニメ・映画の「イブの時間」、高畠エナガ『Latin』など、アンドロイド(人型ロボット)と人間の織りなす作品が好きな人には楽しめるかと。本編は…

ジョブズだって「人」であるーヤマザキマリ『スティーブ・ジョブズ』ー

ヤマザキマリ『スティーブ・ジョブズ 1』( KCデラックス) 講談社、2013 奇人変人と言われたアップル創業者の伝記コミカライズ。実はジョブズって、高校時代に文学作品に興味を持ったり、少し経ってボブ・ディランを聞いたり…。読んだ印象ではクラスメイトた…

【レビュー】大橋崇行『ライトノベルから見た少女/少年小説史』

昨日、読了したばかり、ホヤホヤの本です。レビュー致します(常体で)↓ ライトノベルから見た少女/少年小説史: 現代日本の物語文化を見直すために posted with ヨメレバ 大橋 崇行 笠間書院 2014-10-15 Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 楽天k…

角川ソフィア文庫「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」

ついでに、もういっちょレビューします。(*2011年春ごろの日記です) 『大鏡』ほか『源氏物語』や『枕草子』など、日本の古典を読みやすい形で編集した角川ソフィア文庫のシリーズ。 作品の舞台となった当時の土地や地域の地図、登場人物の相関図、年表な…

中国の代表「奇書」の『三国志演義』・『西遊記』を解説

中国文学では、おなじみ井波律子氏による中国白話(口語)小説の案内書。 naka3-3dsuki.hatenablog.com ↑の記事の下巻では『水滸伝』・『金瓶梅』・『紅楼夢』を紹介。研究の関係上、先に下巻を読みました。 今回は、その上巻で世界的に中国を代表する「奇書…

スキャンダラスな平安朝歴史物語~『大鏡』~

大学院の授業で、百人一首の詠み人たちは、どんな人生を送っていたのか?興味が湧き、高校時代の古文ノートを捲っていたところ、「『大鏡』があるじゃん!平安時代を知るには、これが手っ取り早いぞ!」と購入(*2011年3月時点の話)。 武田友宏編『大鏡』…

文系大学院の情報取集(図書編)

アンケート結果を受けまして、大学院の進学希望者の方へ向けた記事を書きたいと思います。10年近く前の本ですが、まずは文系編としてこちらから↓ 大学院受験白書 文系編―24人の合格体験記 posted with ヨメレバ 東京図書編集部 東京図書 2007-01-01 Amazonで…

大学院生や研究生・研修生の出てくる漫画_理系編その2(海洋生物学)

実験室で菌の培養するような『もやしもん』とは、また違った理系もの。 磯谷友紀『海とドリトル 1』(KISS KC)講談社、2014 連休中、作業片手に読了。表紙から色づかいがパステルカラー、しかもピンクとブルーを基調としていて女性が手に取りやすいデザインで…

【2017.1.14更新】大学院生や研究生・研修生の出てくる漫画_芸術系編

大学が舞台の漫画は山ほどありますが、その中でも今回は大学院生や見習いの研究生・研修生の出てくる作品を紹介します。 漫画ということで、普段の大学生活が大幅に脚色されている作品もありますが、だいたいの雰囲気はつかめると思います。大学卒業後の進路…

大学院生や研究生・研修生の出てくる漫画_理系編その1(農学)

大学院といえば、理系!理系!ですが、私はその割に読んでいません。ごめんなさい、読んだことのある漫画は↓だけです。 ●農学 石川雅之『もやしもん』①~⑩(イブニングKC)講談社 菌の見える能力を持つ沢木直保は、某農大に進学。能力を聞き知った樹慶蔵教授…

「市井の女、後宮の女、花街の女」いろんな女たち~矢沢利彦『西洋人の見た十六~十八世紀の中国女性』~

矢沢利彦『西洋人の見た十六~十八世紀の中国女性』平凡社、1990 本書は、タイトルのまんま、16~18世紀、中国にやって来たヨーロッパ人宣教師たち(ほぼカトリック)が見た中国女性(主に漢民族)を解説し、考察した本。分かったことの中では、当時の中国では…

ヘンテコな「果物の王」ドリアンの取り扱い説明書~塚谷裕一『カラー版 ドリアン―果物の王』~

*2016年7月現在、Youtuberさんが食べるのにチャレンジしたり、身近に出張で東南アジアに行くという話が持ち上がったりして、ふとこのファンキーな王様を思い出しました。 読み始めたきっかけは、2010年代の初め、マレーシアに旅行中、何かにつけてドリアン…

プリズム挿画とM.I.B風のSF~星新一『地球から来た男』(平成23年の改版)~

星新一といえば、私が思い浮かべるのは新潮文庫版。たしか1998年に夏休みの読書感想文のため、手にとったのが『どんぐり民話館』。なので、角川文庫版で作品集が思った以上に刊行されていて、驚きました。 今回、手に取ったのは星新一『地球から来た男』(角…

「就活のリアル」とは?~『現代思想』2013年3月号~

大内裕和、竹信三恵子、 西村佳哲、児美川孝一郎、森岡孝二、佐々木賢、貴戸理恵『現代思想 2013年4月号』青土社、2013.3「特集=就活のリアル」 この時期、あれこれ忙しかったのですが、これだけは紹介したいと思って、記事にしました。目次を読むと、「「全…

ドロシー・コウ『纏足の靴―小さな足の文化史』

ドロシー・コウ著『纏足の靴―小さな足の文化史』平凡社、2005 「当時」の女性たちの纏足靴でする暮らしに寄り添う形で書かれた著作。読む前より、思った以上に中国(主に漢民族)の女性たちは、野良仕事や家事に応じて纏足靴を作り、時にはカスタマイズを行い…

中国の明清白話小説への誘い ~『水滸伝』『金瓶梅』『紅楼夢』~

白話小説版の『源氏物語』風俗小説!? 『金瓶梅』の記事で紹介した本書。 ぴったりした記事タイトルが見つからず、最後に「誘い(いざない)」と付けてみました。けれど、内容を振り返ってみて「誘いっていうレベルの話やないやん!」とツッコミを入れたくなり…

白話小説の『源氏物語』的な風俗小説 『金瓶梅』

金瓶梅 1 (岩波文庫 赤 14-1) posted with ヨメレバ 笑笑生 岩波書店 1973-06-18 Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 楽天koboで購入 『水滸伝』『三国志演義』『西遊記』とともに中国四大奇書と並び称される。『水滸伝』のスピンオフであること…

【目次】文学に見る在外チャイニーズと中国語圏の現代史

●シリーズ目次 ★「大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国」シリーズ ①文化大革命後の改革開放期 〈女性〉 naka3-3dsuki.hatenablog.com ユン・チアン(Jung Chang,張戒) ・大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国①-2(予定): ルル・ワン(Lulu Wang,王露露) …

1993、中国は華南を行く~星野博美『謝謝!チャイニーズ』~

「あなたたちの考えること、教えてくれませんか?」 私が「中国」に魅せられ、「中国」に関わってしまった理由は、この一言に尽きます。 同じように思い、「中国」を定期的に訪れるようになった写真家。 今回はそんな人のノンフィクション↓ 謝々(シエシエ)!…

大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国②-2~イーユン・リー~

「大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国②-1」のシャンサとほぼ同年代、同じ北京で天安門事件前後を過ごした作家。それが今回取り上げるイーユン・リーです。 ●イーユン・リー(Yiyun Li,李翊雲) 1971年生まれ。北京大学卒業後、渡米。アイオワ大学大学院で…

大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国②-1~山颯~

★「大陸出身の在外・移民作家に見る現代中国」シリーズ目次 今回は、シリーズを書くきっかけになり、記事に名前が何度か登場した在仏かつフランス語で作品を書くシャンサをピックアップ。 ●シャンサ(Shan Sa,山颯) 天安門事件を機に海外へ渡り、外国から「中…

返還前後の香港を見つめた日本人~星野博美『転がる香港に苔は生えない』~

転がる香港に苔は生えない (文春文庫) posted with ヨメレバ 星野 博美 文藝春秋 2006-10-01 Amazonで購入 Kindleで購入 単行本があったんですが、現在、絶版になっている模様。なので、文庫版だけリンク張ってあります。この本も、実は単行本のほうの装丁が…

流れて、学んで、フラれて進んだ日々~岩本悠『流学日記』~

旅行日記やレビューの下書きが溜まっていたので、今日は一気に更新します! (*4~5年前のレビューです。ほかの本の感想は、これからゆっくり更新予定) 流学日記 posted with ヨメレバ 岩本 悠 文芸社 2003-10 Amazonで購入 Kindleで購入 流学日記―20の国…

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