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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【2017.3.25追記】不正や捏造が起こる場所はアカハラの現場と似ている~「学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態」(ニューススイッチより)~

<今回の内容>

1.ニュース記事「学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態」について

14日未明に更新した【メモ】「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 Togetterまとめ:前編~ #若手問題2017 ~ - 仲見満月の研究室の「4.セクハラやアカハラの防止対策について」とも関連するニュースが、本日、Twitterで回ってきました。

 

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その問題が起こる現場は、多くが理系の実験系研究室、文系では言語学・心理学の実験のある研究室が考えられると思います↓

newswitch.jp

 

タイトルに入っている「ブラック研究室」とは、上記ニューススイッチの記事(以下、ニュース記事)によれば、「学生や研究員を追い詰めるような」研究室のこと。では、具体的にどのように学生や研究員を追い詰め、ブラックなのか。それについては、以前にも研究室で構成員を研究とは関係の薄い労働をさせ、それがブラック企業で働く人材を育てる危険性を以下の記事で指摘しましたので、ご参照ください。

ブラック研究室が準備する人材への指摘と私の体験~日野瑛太郎 「ブラック研究室という闇」(『脱社畜ブログ』より)~ - 仲見満月の研究室

 

ニュース記事に話を戻しますと、この記事のサブタイトルは「不正を暴いて波風を立てることにメリットがない…」です。ブラック研究室に配属された学部生や院生が、仮にその研究室で不正や捏造を見、「それはモラルや倫理的に、行ってはならないこと」と認識していても、見て見ぬふりをせざるを得ない。それは、任期付きのポスドク助教の職にある構成員も同じ。

  

特に、自活していくために職を得る必要のある学生の目標は、

研究室から円滑に卒業し、就職やステップアップなど次の活躍の場を得ることがゴールだ。そのためには不正を暴いて波風を立てることは合理的でない。

 (学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態より)

ということです。いくら、倫理教育を施し、モラルとして研究における不正があったとしても、不正を暴いた後、その学生の卒業・修了後の人生において雇用の保障をするといったメリットを用意しなければ、研究上の不正や捏造はなくならないということなのでしょう。

 

なお、ニュース記事の中のでは、とある国立大学の准教授が成功させた実験がうまくいかず、責められる学生が登場します。実験キットや、ノート管理によって、万全の準備を整え、教えられたとおりに学生は実験をするものの、うまくいかない。

この学生が先輩から教えられたのは、「根底がおかしくても自分の実験で言える新しい知見を探すこと」。上司の仮説を否定せず、別の発見によって論文を仕上げるというとても高度な仕事だ。同じ実験を繰り返すだけではたどり着かない。4カ月ほどたったころ准教授の仮説を肯定する結果が得られた。一度きりで再現はしない。

 (学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態より)

なかなか、学生に高度なことを求めるもんだなと、私は思いました。結局、この学生は「研究者の道は諦めた。生命科学は捨て金融機関で活躍している」ということです。

 

また、他の大学の就職志望の学生は、先の学生ほど追い詰められてはいないものの、卒論のデータをねつ造して、卒業していったそうです。研究の世界には進まないため、本人の人生にとっては「とりあえず」、問題はないそうです。

 

任期付きの教職員にとっても、私が先述したとおり、不正や捏造の見て見ぬふりをしなければ、次のアカデミック・ポストに就くまでの間の職を失う恐れがあります。加えて、業績を積むのに時間がかかってしまえば、研究者として次の職が得られず、ステップアップが望めず、食べることにも困ることになるでしょう。

 

最初は小さな不正でも、積み重なり続ければ絡め取られる。窮地に追い込まれるほど、モラルだけで不正への誘惑には抗えない。

(学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態より)

ニュース記事は、以上の文章で締めくくられていました。

 

なぜ、見てみぬふりをするかという点に関して、本ブログの今までの記事と合わせて、考えてみましょう。もし、不正や捏造を見つけて告発したとしても、現在の研究教育機関のシステムや構造的に、告発者は保護してもらえないからです。就職で内定をもらっている学生・任期付き教職員が、「風通しの悪い研究教育機関」にいれば、下手に告発すると上司に当たる教職員が解雇になることで告発者も研究室に居場所を失い卒論や修論、博論の研究を妨害される危険があります。

 

先に、上司の教職員に告発を察知されれば、学位論文の審査で不合格にされるだけでなく、退学・クビになる恐れがあり、狭い研究業界ですから、研究者としての就職は諦めなければならないこともあるでしょう。

(このあたりの面倒な事情は、次の助成金の不正使用問題の記事でも書きましたので、ご参照頂ければと思います:院生が獲得した助成金をめぐる問題~人力検索はてなの質問から~ - 仲見満月の研究室

院生の助成金申請書類の作成過程~院生獲得の助成金使用問題の補足~ - 仲見満月の研究室)。

 

 

2.不正や捏造が起こる場所はアカハラの現場と似ている

さて、ブラック研究室は雇用について「窮地に追い込まれた」学生や教職員の存在もあって、不正や捏造の温床となっている点がニュース記事で指摘されていました。このブラック研究室の環境は、アカデミック・ハラスメント、つまりアカハラの現場と似ているといませんでしょうか?ニュース記事の内容について、不正や捏造を暴こうとした人がいても、その暴いた告発者を保護する。もっと言えば、「告発後の人生における雇用や生活を保障するという意味の保護の段取りを付ける」ほどの仕組みが、現在、日本の研究教育機関のシステムにはありません。

 

それは、アカハラが起こった現場においても、同様です。指導教員による学生の放置および指導の放棄・拒否によるアカハラ - 仲見満月の研究室で取り上げた事例について、被害者と言えるMさんの受けていたアカハラには、若年世代の院生たちは、かなり気がついていました。また、アカハラをしていたMさんの指導教員・V先生の人間性については、周囲の先生方も気がついていたようです。しかし、V先生が分野の大家であり、当事者のMさん、そして周囲の院生たちも声を上げることができなかったのです。

 

アカハラのストレスだと思われる体調不良で、入院を医師に勧められたMさんは、休学届の書類を持ち、V先生に指導教員の許可印を押してもらうとしますが、拒否され続けました。そんな状況が続き、

V先生のいないところで泣きそうな顔で話すMさんに、「カウンセリングルームや部局内の人権問題の対策委員会とかに、相談してみましょう」と言う院生もいました。しかし、Mさんは相談した部署から、部局内で権力のあるV先生に相談内容が漏れ伝わることを恐れて、ひたすら、耐え忍びました。私や同期の若手院生が動こうとしたところ、「あなたたちも、博士号取得にリーチがかかっているんだから、下手なことはしなさんな!」とMさんに言われ、ひるんでしまい、何も私たちはできませんでした。

指導教員による学生の放置および指導の放棄・拒否によるアカハラ - 仲見満月の研究室より)

 

ということがありました。いくら、モラルや正義感を持っていたとしても、現在の日本の研究教育機関には、ハラスメントを訴える場所は一応あっても、訴えた人や被害者を守ってくれるところは事実上、ないと言えます。そして、ハラスメントの被害者の苦悩を知りつつも、被害者の力になれない周囲の学生は、研究へのモチベーションを失っていく人もいるでしょう。そして、彼らは研究業界を幻滅し、その外に就職口を得、去っていく。ニュース記事に出てきた、生命科学の研究者への道を諦め、金融機関に就職した学生も、ひょっとしたら、研究の業界に幻滅したのかもしれません。

 

つまり、研究の不正や捏造が起こる場所と、アカハラの起こる場所は、「モラルや倫理観、正義感を持った告発者がいたとしても、その告発者の告発後の雇用や生活を保障する保護機能を持ったシステム」が存在しないという点において、非常に似ていると言えます。加えて、自分の倫理観や正義感やと、己の保身との間で葛藤した上、職業研究者の道を諦め、外の世界に出ていく若手も生み出すことが考えられます。不正・捏造やハラスメントを放置するような環境は、そこで真摯に研究と向き合う人材を失っていく、マイナス効果があるのではないでしょうか。

 

 

3. 最後に

研究教育機関における不正・捏造、およびアカハラを含むハラスメントについて、私はこの記事の執筆を通じて、告発者を保護するシステムが必須であると、改めて主張致します。

 

告発者を保護するシステムとして、【2017.3.14更新:目次】アカデミック・ハラスメント(アカハラ)に関する記事まとめ(外部記事含む) - 仲見満月の研究室の「6.アカデミックハラスメント対策に向けて反アカハラ運動と国の動き」で紹介してきましたように、研究教育機関の外部の第三者機関、もしくは学外の機関の設置・活用の話が、反アカハラ運動、および文科省&河野衆議院議員の二者で挙がっていました。国のアカハラ対策続報「学外の機関の活用を義務付け検討」~衆議院議員 河野太郎「どれどれ研究者の皆様へ」公式サイトより~ - 仲見満月の研究室のところでお伝えしたように、そろそろ、二者の間で学外の機関を設置・活用するための交渉が具体化してもよいころだと思っております。

 

今回のニュース記事を受けて、私としては、ぜひ研究における不正や捏造についても、この学外機関で告発者の訴えを受け、調査・発表できる、場合によっては司法的な手段がとれる機能を持たせるべきと、考えてました。これからは、アカハラだけでなく、不正や捏造に関する報道についても、追いかけていく予定です。 

 

 <重要な関連記事>

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 

(2017.3.25追記)

私が本記事で指摘したことについて、的確な言葉で簡潔に書いて下さっている記事を見つけました。どうぞ、お読みください。

news.yahoo.co.jp

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