仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系のなかみ博士が研究業界の問題などを幅広く考えるブログ

東京への進学者制限~「19年度の23区内の大学定員抑制 文科省が省令施行」(教育新聞 電子版)ほか~

<本記事の内容>

1.はじめに

今年の2月は閏年ではないので、28日の次は3月に突入致します。最初にお知らせで恐縮ですが、2月25日に札幌のオールジャンル同人誌即売会

naka3-3dsuki.hatenablog.com

3月3~4日に台北のZINEイベントに出展して本を委託で売ります:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

近くにお住まいの方や、学会発表、出張や旅行等で行かれる方でご都合がよろしければ、お誘い合わせの上、お越し下さい。

 

 

さて、そろそろ、大学受験のほうは後期の時期にさしかかっている頃だと思いますが、来年の大学入試に関して、こんなニュースをキャッチしましたよ:

www.kyobun.co.jp

いわゆる東京23区内の大学が対象となっているようですが、ニュースのなかには、埼玉、神奈川、千葉の近隣県の大学に対しても言及されていました。昨年の9月には、東京23区の大学新増設を制限するような告示改正案のニュースも出ておりました:

univ-journal.jp

どうして、今回、定員をしぼるように文科省の省令が出るところまでいったのか、不思議でなりませんでした。受験シーズンということもあり、来年2019年の年明けに大学受験をする方や親御さん、更に大学の教職員の方々にとっても気になる話題だと思われました。そういうわけで、本記事で東京への大学進学者制限を文科省が行うことについて、今回、考えてみようと思います。

 


f:id:nakami_midsuki:20180224140206j:image

 

 

2.「19年度の23区内の大学定員抑制 文科省が省令施行」(教育新聞 電子版)を読む

まずは、2月23日に掲載された、教育新聞の電子版を読んでみましょう。短いので、全部、載せた後、コメント致します。

19年度の23区内の大学定員抑制 文科省が省令施行
2018年2月23日 

 文科省は2月23日、東京23区内にある大学の定員を抑制する、大学設置認可基準に関する省令の特例を公布し、同日施行した。一部の例外を除き、2019年度に23区内で、学科の新設や収容定員増の申請を認可しない。同特例案のパブリック・コメントには、多くの反対や懸念の声が寄せられた。

 

 学部・学科の設置や収容定員増の例外には、①校舎や設備の整備を伴い、昨年の9月30日までに認可申請する意思をパンフレットやインターネットなどで周知済み②夜間や通信教育の学部③東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県以外の道府県で、半数以上の授業科目を開設している学部が、サテライトキャンパスを開設する場合④定員増を伴わない学部・学科の再編⑤外国人留学生や社会人学生などの受け入れ――などがある。

 

 パブリック・コメントには49件の意見が寄せられた。「地方に仕事がなければ若者は結局地方に残ることができない。地方創生に必要なことは地方産業の振興であって、東京23区の大学定員を制限することには意味がない」「東京23区はわが国を代表する企業が集積しており、産学連携のために大学が立地するのは最適である。東京23区の定員の抑制は、大学とその人材育成機能を弱体化し、また大学の国際競争力を低下させることにつながるものであり、日本が国際社会で競争を勝ち抜いていく上で大きな損失となる」など、23区内の大学の定員抑制が地方創生につながるのかという疑問や、国際競争力の低下を懸念する声が大半を占めた。

(19年度の23区内の大学定員抑制 文科省が省令施行 | 教育新聞 電子版)

今月23日に文科省が公布・施行したのは、「東京23区内にある大学の定員を抑制する、大学設置認可基準に関する」省令とのこと。特例を除き、来年2019年の23区内にある大学の新設や定員アップを認めないということです。公開されている特例の一部は以下のとおり。全日制にキャンパスに通学して授業を受ける、本科や正規と呼ばれるような、学部生には適用外になっていることが分かります。

  • ①校舎や設備の整備を伴い、2017年の9月30日までに認可申請する意思をパンフレットやインターネットなどで周知済み
  • ②夜間や通信教育の学部
  • ③東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県以外の道府県で、半数以上の授業科目を開設している学部が、サテライトキャンパスを開設する場合
  • ④定員増を伴わない学部・学科の再編
  • ⑤外国人留学生や社会人学生などの受け入れ

①については、既に省令の施行は昨年の9月になされていました。②に関しては、「新たな夜間部」の試み:長時間労働を避けて働く大学生が安心して学ぶ制度~「「夜間大学」という可能性 昼間は大学の正職員として稼げるケースも 」 (AERA dot.)~ - 仲見満月の研究室で紹介した東洋大学の「新たな夜間部」は、新設や定員増加を認められると解釈できそうです。また、東京23区内にキャンパスを持つ大学には、③の1都3県にキャンパスを併設している大学が多く、慶應大等が該当しそうです。④は再編で職を失いそうな教職員の発生が心配で、⑤に関しては、現役の学生を減らした分、留学生や社会人学生の受け入れを促しているようで、どうもグローバル化や、(高齢者の)「学び直し」と重なる部分がありそうです。

 

パブリックコメントは様々ですが、地方創生をプッシュする国側の姿勢と、実情が合わない点を指摘した、 「地方に仕事がなければ若者は結局地方に残ることができない。地方創生に必要なことは地方産業の振興であって、東京23区の大学定員を制限することには意味がない」ことには、納得しました。23区の大学に制限をかけるのではなく、県内や隣県の博士人材にはたらきかけて、積極的に地元の中小企業とマッチングさせようとする浜松市のような、そういった形の自治体や企業をサポートする事業を、むしろ、おすべきではないでしょうか*1

 

「国際競争力の低下を懸念する声」に関しては、東京に様々なものが一極集中することに批判的なご意見もあるでしょう。けれど、集中していることは、小回りが利き、気軽に訪問して、例えば産学連携で打合せができるよさがあります。そのフットワークの軽さがなくなってしまうと、大学や研究機関と民間企業等による連携がもたらす産業が活性化は鈍り、よくないことが起こって来るのではないでしょうか。

 

たまに見る、少子化にともなう大学全入時代→大学生の学力低下の見方に関しては、進路指導や職業教育といった、高校や高専高等専修学校くらいまでのカリキュラムや、中等教育後期までの学校教育の構造など、複数のことと絡んだ問題だと、私は考えております。機会があれば、また別の機会に取り上げられれば、幸いです。

 

 

3.省令のもとらしき、告示改正案に対する日本私立大学連名のパブリックコメント~大学ジャーナルオンラインより~

2018年2月23日に公布・施行されたこの省令は、昨年9月に告示改正案として、知らされていたようです。告知の直後くらいに、日本私立大学連名(以下、私大連盟)がパブリックコメントを出しており、どのようなことが施行にあたり、懸念されていたのか。次は、新設増や定員の制限を受ける私立大学側の見方について、確認してみていと思います。長いので、適宜、切ってコメントさせて頂きます。

大学新増設抑制の告示改正に私大連盟が反対意見 

2017年9月19日 大学ジャーナルオンライン編集部

 東京23区での大学新増設抑制を文部科学省が告示改正を根拠に対応しようとしている問題で、日本私立大学連盟は私立大学の自主性を損ない、社会の発展を阻害する恐れがあるとして反対する意見を提出した。

 

 私大連盟によると、意見は文科省が募集していたパブリックコメントとして提出したもので、改正を目指す告示案と2020年度以降の大学行政に私大連盟の意見を寄せた。

(大学新増設抑制の告示改正に私大連盟が反対意見 | 大学ジャーナルオンライン

私大連盟によるパブリックコメントが出されたのは、大学ジャーナルオンラインによると、2017年9月の半ば以降、19日くらいまでとみられます。先の教育新聞のオンライン記事では、「学部・学科の設置や収容定員増の例外には、①校舎や設備の整備を伴い、昨年の9月30日までに認可申請する意思」を表明することが書かれていました。私大連盟がパブリックコメントを提出していたのは、昨年9月より前だと思われます。それに対して、①に出ていた意思表明の期限と比べると、けっこう、ギリギリのパブリックコメントの発表のように感じられます。

 

さて、私大連盟は「私立大学の自主性を損ない、社会の発展を阻害する恐れがあるとして反対する意見」を出しました。その考えを詳しく見ていってみましょう。 

 告示案に対しては、学部設置や収容定員に関する国の規制が厳しくなっていることが私立大学の自主性を失わせかねないと主張している。

 

 急速に変化する現代社会でこれに対応する人材を育てるためには、新学部や学科の新設が不可避とし、定員規制が産業の発展やイノベーションの創出を阻害することになる可能性があると批判した。適用除外の対象が「機関決定」と「対外的公表」に限定されている点も、厳しすぎるとして改善を求めている。

 

 2020年度以降の大学行政については、抑制策をあくまで一時的な措置とし、地方の学生が東京で学ぶ機会を奪わないようにするべきだと訴えた。告示改正による規制が続けば、東京へ行ける学生と行けない学生の格差が拡大しかねないとの問題提起もしている。

わが国の国際競争力強化のためには、学部や学科新設の必要性を第三者機関で判断し、例外として認めるべきだと主張した。

 (大学新増設抑制の告示改正に私大連盟が反対意見 | 大学ジャーナルオンライン)

ここまでは、教育新聞の後半で紹介されていたパブリックコメントの2つ目と大筋で重なります。新たに出てきた情報は、私大連盟側の「適用除外の対象が「機関決定」と「対外的公表」に限定されている点も、厳しすぎるとして改善を求めている」こと。「機関決定」と「対外的公表」とは、大学全体で決めなければならず、決めたら①のように公に新学部増設や定員を増やすことを、パンフレットやインターネットのサイト等で告知しなければならない、ということを指すのでしょうか?もし、大学の学部新設や定員増について、大学の後期が始まるか、始まらないかの9月30日までに決めて学外に知らせなければならなかった。そうだとすれば、そりゃ、大学側にとっては厳しいものでしたでしょう。

 

私大連盟は2019年のみの一時的措置にとどめ、2020年以降は「地方の学生が東京で学ぶ機会を奪わないようにするべきだと訴え」ています。一部の大学では、2018年度の入学者を制限したため、今年は浪人生が出ることが予想されている、と何かのニュースで聞きました。間接的に2018年度の入学者制限に省令が影響しているなら、既に今回の省令が一部の大学を「委縮させている」と言えないでしょうか?そのような意味では、省令について「私立大学の自主性を失わせかねない」と私大連盟が懸念していることに、頷けます。

 

ところで、今回の省令のもとになったと私が考えた告示改正案は、もともと、どのような案だったのか、大学ジャーナルオンラインの最後に、簡潔にまとめてありました。

 文科省の告示改正案は東京23区の大学に対し、東京一極集中是正のため、2018年度以降の定員増を認めないとする内容。2020年度以降は新たな立法措置で対応する予定で、告示改正はそれまでの暫定措置だが、東京都や首都圏の私立大学などから強い反発が出ている。

 (大学新増設抑制の告示改正に私大連盟が反対意見 | 大学ジャーナルオンライン

2018年2月23日に施行したのは省令の段階ですが、2020年度以降は法律制定で対応していくことが伝えられています。もし、このまま、文科省による大学進学者の東京一極集中是正の動きが進むと、研究のエネルギーが活性化していた場所を無くすことになるかもしれません。これからどうなるのか、非常に心配です。

 

 

4.むすび

2018年2月23日の文部省の省令にしても、そのもととなったと思われる昨年9月の告示改正案にしても、文科省が地方からやって来る大学進学者を間接的に「選別」しているように感じます。私個人の妄想で終わればよいのですが、果たして、どうなっていくのでしょうか。

 

私自身は、西日本の地方から西日本の大都市へ引っ越し、大学から院まで10年くらい、過ごしていました。親戚が首都圏に住んでいて、幼少期から東京に行く機会があり、学生時代には学会や研究会で発表するのに、東京の大学に行ったことも少なくありません。幼い時、山手線の人混みでノックアウトされたため、東京が苦手になってしまいました。そんな人間が言うのも何ですが、東京は首都だけあって、様々なところから、いろんな人やものが集まっていて、私が学生時代に住んでいた大都市とまた違った、面白さがありました。また、研究者(特に人文・社会学系)にとって東京に住む大きいのは、在野研究者の荒木優太さんがご著書でおっしゃったように(以下の本参照)、国立国会図書館へのアクセスがしやすいことです:

 

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

 

ところで東京都の大学といえば、東京農工大学*2大学生協に勤務し、もとは要望や意見をお店に伝える手段のひとことカードで、ユニークな返しをする、白石さんのことを思い出します:

 

生協の白石さん (MouRa)[Kindle版]

 posted with ヨメレバ

理系学部の大学ならではの実験用の方眼紙入りノートに関する細かな要望、女子が少ないサークルならではの悩み相談、栄養補給のためか特定の食品追加の仕入れの依頼など、パラパラめくるたびに、今でも私に腹筋崩壊を起こす一冊です。現在、ひとことカードで有名になった白石昌則さん*3は、東洋大学の白山店にお勤めのようです。東京都府中市から、転勤を経て、文京区のキャンパス店舗に着任されました。

 

個人的には、白石さんに会いたい受験生のためにも、東京23区の定員抑制はどうなるのか、これからも文科省の動きを追いたいと考えております。

 

おしまい。

 

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*1:それ以前に、地方出身の方が東京に出てきて、働く背景に賃金格差があることを考えて頂きたいです。例えば仙台出身で東京で働く人の場合、「一番の理由は給料。家賃は2/3かもしれないけど、給料は1/2なので生活が厳しくなる。給料が東京と同じ水準なら仙台で働きます。」というコメントヒアリングで得た、とツイッターで目にしました。

*2:ミュージシャンの川谷絵音さんは、ここの工学部を卒業後、大学院修士課程の途中まで、在籍していたとい噂があります。

*3:関東の大学生協を中心に、販売された「単位パン」の仕事にも携わっておられました

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