仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

院試の合格・不合格とハラスメントを防ぐこと~ひとつのターニングポイントとして~

<今回の内容>

1.はじめに

今年の大学入試は、補欠や追加の合格者が国公立大学で出されているようです。文科省があまりに合格者を取りすぎると補助金を出さないよ、といった「お達し」があったようで、その影響か、定員調整の結果、このような状態になったと、あちこちで言われています。

 

受験生と保護者も振り回されますが、大学の教職員も入試業務が長引くせいで、休日返上しないといけないところもありそうで、お話を聞く限り、苦しいです。

 

 

2.院試準備と指導教員およびその研究室の選び方の重要性

さて、入学試験の合格は大学院にもあります。私が知るところでは、日本だと、多い大学院では夏季と冬季の年2回、少ないところでは冬季のみの年1回、大学院の入試=院試が行われています。院受験生は学部入試と違って、日本では入学した時点で、学位論文を書く上で指導教員を届け出ることが一般的なようです。そういうわけで、なるべく受験前、入学後に自分を担当する教員にアポイントメントを取って訪問し、面談で許可を得た後、院試を受験したほうがよいようです。

 

このあたり、院試準備のアポ後の面談をしたり、実際にその先生が受け持っている院生たちと仲良くなったりして、

 

  1. 入学後の指導教員の専門と自分の研究希望の分野が合うか
  2. 指導教員と自分の性格や特性といったものの相性がよくてやっていけそうか
  3. 自分が求める修士や博士の学位について教え子を指導し、取得させる力があるか
  4. 気がついたら研究室の雑用・事務要員にされないか

 

といったあたりを早い段階で情報を集め、判断したほうがよいと思われます。詳しいことについては、主に、「大学院に行きたいと思ったら見極めるべきこと~指導教員の選び方について:主に文系向け~ 」の全体を使ってまとめています。加えて、具体的なアポイントの取り方は、「専門卒社会人の著者による大学院修士課程の受験体験記~森井ユカ『突撃!オトナの大学院』~」で書いていますので、気になる方はご覧ください。

 

なぜ、私がここまで口を酸っぱくして、指導教員(とその研究室)の選択にうるさいかといういと、いざ入学してしまえば、日本の大学院では管見の限り、院生側から指導教員の交代をさせたり、所属研究室を変えたりすることは大変難しいからです。先生と教え子の間でトラブルが起き、人間関係が悪化したり、それがハラスメントに発展したりしても、よほど院生側が証拠を集め、弁護士に相談したり、ハラスメント相談室や学外機関に申し立てをする等して動かなければ問題の指導教員と研究室からは離れられません。また、トラブルや人間関係、ハラスメントで心身を病んで、ドクターストップがかかり、療養で休学や退学に関する書類を準備しても、指導教員に印鑑をもらえなければ、休学や退学は書類上、できません

 

執筆管理人の身近であった話として、広い意味で「指導放棄」された人がいました。その人は、休学の書類に判子をもらえず、最悪「飼い殺し」され、健康状態が悪化し、院生が亡くなっていた可能性を否定できませんでした。幸い、新任の先生がこの院生の指導教員を前の先生を「説得して」引き継ぎ、この人は休学して療養がかないました。

 

そこで、もし読者の方に院受験生がいたら、または学生を指導する立場の教員の方がおられたら、今回、お伝えしたいことがございます。それは、お互いに「合わないかもしれない、不安だな…」と強く感じることがあったら、合格しても入学手続きをせずに辞退する、受験生を不合格にすることで受け入れない、という選択もあるのではいか、というお話です。

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3.院試の合格・不合格とハラスメントの防止

 3-1.教員の方へ~不合格後に研究生や研修生等をすすめる等~

まず、教育・指導をする立場の方にお話を致します。修士課程への入学を希望し、事前に面談で話をして、「この学生なら、自分の研究室でもやっていけそう」と受け入れを許可した院受験生がいたとします。勉強熱心な学生で、あなたの授業にも学部3年次から受けに聴講で来ていたとしましょう。授業後、質問にやってくる学生の話し方や観点、態度や仕草を見ていて、「心に引っかかる点」が出てきました。その学生は、あなたの受け持つゼミにも参加することがありますが、どうも院生やゼミ生たちの反応が芳しくない様子です。どうも、自分とその研究室の人たちと研究に関するスタンスは合致するかもしれないが、どうも考えや性格の相性が悪そうです。

 

このような「違和感」を院受験生に感じた場合、たとえ学力が合格基準に達していたとしても、入学後にお互い、トラブルを抱えないためにも、一度、不合格にする選択の余地があります。先に述べたように、日本の大学院では入学後、指導教員や研究室をかえることは困難です。

 

そこで不合格になった院受験生を見極める時間が欲しい場合、表立っては学力不足を理由に、「見習い院生」のような制度の利用をその受験生にすすめてはいかがでしょうか。

「見習い院生」は、研究生や研修生とも呼ばれ、院浪することになった人が受け入れ教員の許可をもらって申請し、所定の額を大学院に払い、聴講したり、図書館をりようしたりして、再び院試に備えることができる制度です。私の先輩に利用者がいらっしゃり、希望のゼミにも出て、教員や学生たちとの議論や休み時間の会話、ゼミ後に食事に出かけて、学力をアップさせつつ、メンバーを知ろうとなさったとのこと。見習い院生の後、大学院に合格し、在学中は教員やメンバーと良好な関係を維持して、修士論文を書かれ、社会に出て行かれました。

 

見習い院生の時期を経て、不安がある場合は、不合格…という選択肢があります。それから、修士課程の2年間の指導後、博士課程への進学をする修士院生についても、不安がある場合は、合格にしない選択を取られることも…。

 

身近な同期の話です。その院生は、同じ指導教員の持ち上がりを希望し、修士課程→博士課程への進学を希望していました。内部進学の試験を兼ねた修士論文公聴会後、結果は不合格でした。修士時代の様子では、どうも指導教員の先生とうまくいってなかったように周囲は見ていたようです。修士論文による成績もあったのでしょうが、人間関係上、先生も不安なことがあったのかもしれません。憶測ですが、その院生は相性のこともあって、先生が不合格にされたのでは?と私は勝手に考えています。

 

実際、合格になっても、見ていて周りにいた私が苦しくなった実例がりました。どうも、先生側が早い段階で院受験生をよく思っていなかったらしく、入学後にその人は先生にきつく当たられていました。最終的に、その人は「指導放棄」されたような状態になっていました

 

 3-2.院受験生の方へ

院受験生の場合、希望の先生の授業に出たり、ゼミに参加したりして、色々と考慮し、不安があれば、他の大学院も検討しましょう。経済的、時間的なものが許せば、複数回、別の院を受験しましょう*1。不安がなくても、なるべく、複数の院を受験はしたほうがよいです。私の知ってる人には、合格後に手続きしようとしていたら、希望の先生が交通事故で亡くなった連絡を受験大学院からもらい、別に合格した院のほうに入学した、という人がいました。

 

もし、院試に対する不安があれば、準備期間が欲しく、しっかり勉強したいことを規希望の先生に伝えて、研究生や研修生として過ごす方法もあります。この院浪人の間、研究室のメンバーと親しくなって、自分と合うかどうか、見極めましょう。

 

受験後、不合格になってしまった場合は、先述したように、学力以外の相性という面で、先生に受け入れをしたくない、と判断された可能性があります。そういった場合、

「ひょっとしたら、入学してから巻き込まれていたかもしれないトラブルに遭わなかっくて、よかった」と気持ちを切り替えましょう。そして、他の志望大学院の受験に備える、または受験を検討する、といった方向に進みましょう。時に、諦めも肝心です。

 

合格した場合でも、相性上の不安があれば、合格を辞退することも一つの選択肢です。実際、入学後に先生の当たりが強くなった院生の方について、周りの方から話を聞いたところ、入学辞退をしていたほうがよかったかも、と感じたことがありました

 

 

4.最後に

お伝えしたかったことは、以上です。

 

無理な受け持ちや入学は、その後にトラブルが起きたり、人間関係の悪化があったりして、本人たちに自覚がなくても、ハラスメントへ進展してしまうことがあるでしょう。そういった「不幸」を避けるという意味でも、院試の合格。不合格は、ターニングポイントになります。

 

「見習い院生」の制度を含めて、大学院の教員側、受験生側ともに、人間関係を築くという意味でのご判断に就いて、ご一考頂ければと思います。

 

おしまい。

 

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*1:一言、添えますと、院試前、それぞれの大学院関係者には、他の大学院を受験することは質問されない限り、言わないほうがよいかもしれません。学内外での学閥や仕事の関係により、教職員の人間関係は微妙なパワーバランスによって成り立っていることがあります。他の大学院を受験することは、場合によって、希望している先生が知ると、不機嫌になったり、プライドを傷つけられて態度が硬化したり、いろいろとややこしくなることがあります。質問されても、答えは慎重に言葉を選んでください

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