仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【メモ】TAの労働時間超過と賃金の問題~「労働時間が長いので過少申告して...」18時間を無にする虚偽報告を強いられた学生...」(Togetterまとめ)~

研究室における、院生やポスドクの雑務や労働に関する諸問題は、これまで、私自身の体験談も交えつつ、弊ブログで何度か取り上げてきました。今週に入って、そんな労働に関するものでも、ティーチング・アシスタント(略してTA)の問題が注目を集めていたようです。今回、取り上げるのは下の話題です↓

togetter.com

(「「労働時間が長いので過少申告してください」18時間を無にする虚偽報告を強いられた学生の暴露が闇深い」、Togetterまとめ、2018.12.4)

 

「TAって、誰が何の仕事をするのか?」を端的にまとめると、なり手は院生が多く、彼らが自分の所属研究室、指導教員の授業を補助したり、その周辺で発生する雑務をこなしたりする仕事です。より具体的には、

例えば、美術史や建築学などの大講義では、先生が集めたビジュアル資料のデータを受け取り、スライドをパワーポイントで作成。本番の授業では、先生の指示に合わせてPC操作を行って受講生に見せるということをします。指導教員が大講義を持つ場合、弟子の院生はプロジェクタやレジュメなど必要なものを教室まで運び、設置や配布するところから始めます。

 

基本的な業務は、そのほか、授業の始めや終わりに出席カ-ドや質問票を配って書かせて集め、先生に渡してチェックを頼む。文系の学部では、外国語の論文、漢文や古文書の講読といった授業で提出された日本語訳、書き下し、現代日本語のレポートを添削して返却する。一口にアシスタントと言っても、けっこう仕事の幅は広いのです。

ティーチング・アシスタント戦記~授業の裏方を務める人々~ - 仲見満月の研究室

 

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【メモ】TAの労働時間超過と賃金の問題~「労働時間が長いので過少申告して...」18時間を無にする虚偽報告を強いられた学生...」(Togetterまとめ)~

 

先のTogetterまとめに出てくるのは、茨城大学工学部において、実験の実習にTAとして付いた院生さんのケースのようです。TAとして働く院生は、働いた時間を所定の活動報告書に記入し、毎月の期限日までに労働を課した大学教員の印鑑をもらって、事務室に提出します。さて、今回の問題は、大学のほうで予めTAに払われる賃金は「一定の時間内でしか払えない枠」というものがあって、院生さんがその一定時間より多く働いてしまい、それがきちんと報告されようとして、おそらく事務方が対応に困ってしまったこと。事務の方は、「労働時間が長すぎるから、過少報告してください...」と求めたようですが、これは院生さんが指摘するように、虚偽報告になってしまいます。

 

そもそもの問題は、「大学のほうで予めTAに払われる賃金は「一定の時間内でしか払えない枠」というもの」があるということ。どういうことかというと、賃金≒給与とすると、主に日本の国公立大学・大学院では、TAに出せる給与の額は、年間で「いくらいくらだけ」と予算が決まっているんです。そういうわけで、一人当たりのTAが働ける一定期間の最大労働時間や、払える賃金・給与の額には、限界があるのです。今回のケースでは、一定期間内にTAが働いて賃金をもらえるのは、最大12時間だったようで、だけど、TAの仕事は12時間を超えてしまった、と。

 

何故、TAの給与の額が予算で決まってしまうのかは、大学・大学院の年間予算がどれだけ取れるか、取れないかによるから、です。このあたりの話は、複雑な事情があると思うので、気になる方は、各自でお調べ下さい。

 

そういうわけで、

私のいた部局は、基本的に修士生がTAを務めます。給与は、部局の予算が取れる年によりますが、支給はM1のみ。それ以降は、タダ働き、あるいは先生の研究費やポケットマネーからの支払いになることもありました。部局の事務室にかけあっても、予算がないから給与が支給されない、というのはザラでした。

 (ティーチング・アシスタント戦記~授業の裏方を務める人々~ - 仲見満月の研究室

ということがありました。

 

そして、こうした問題があるのは、今回の院生さんのいる大学・大学院、私のいたところだけでなく、はてなブックマークを読むと、ほかのところもあるっぽい様子...。TAの実働時間をどうカウントするか、というところも問題になりそう。私の経験を例に出すと、「本番の授業では、先生の指示に合わせてPC操作を行って受講生に見せる」前の段階で、「レジュメのコピーやスライド作り」の準備時間は実働時間に入れるのか?はてなブックマークでは、「準備時間が無給(の扱い)になるのは、納得できていなかった」というコメントを見ました。

 

今回のTogetterまとめを読むと、問題にぶち当たった当事者である院生さんは、「労基へCO」という見出しから、労働基準監督署に資料を作ってうったえに行ったようです。最終的に、院生さんは超過分の賃金を受け取れるのか?は、まだ、経過途中なのか、不明です。

 

本記事の執筆者は多忙なため、今回はこのあたりで締めさせて頂きます。一言、まとめを言えば、こうやって、TAの労働時間の超過や賃金の問題に対して、ネット上であれ、提起がされて行動したり、話題にしたりすることが出てきたりしたことは、まっとうだと私は感じています。私が院生の時、違和感を感じつつ、どこに行って訴えればよいのか、分かりませんでした。だから、この院生さんの行動を見て、 「これって、やっぱり、おかしいことなんだ!私の違和感は、おかしくなかったんだ」と、安心したのが正直なところです。

 

今回の件も含めて、院生やポスドクの労働には、まだまだ、沢山の問題があります。少しでも、多くの方に注目していただけたらと思い、本記事を書きました。どうか、同じようなことに疑問を感じておられる方に、届きますように。

 

おしまい。

 

 

<関係のある図書>

就労時、どういう労働契約になっているのか、どういった文書をチェックすべきか、わかる本です。TAの方にもおすすめです↓

 

内容は少し、以下の拙記事で紹介しています: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 

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